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真壁 昭夫信州大学経済学部教授

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今後の金融業界展望

<第20回>2017.3.15
金融緩和からの出口戦略

出口戦略を一言で表現すると、中央銀行が緊急避難的な金融緩和策から脱し、通常の金融政策への正常化を行うプロセスと言えるでしょう。2008年9月15日に発生したリーマンショック後の世界経済は、日米欧を中心に、積極的な利下げ、量的緩和などの金融緩和策によって景気を支えてきました。

その中でいち早く出口戦略を進めたのが米国でした。2013年5月には、バーナンキFRB議長(当時)が金融緩和の縮小の可能性を示唆し、世界の金融市場が一時混乱しました。これは、慎重な出口戦略が不可欠であることをFRBに認識させることになりました。

その後、米国は、金融市場の動向や実体経済のリスク要因に配慮しつつ、十分な配慮をもって金融緩和からの出口戦略を進めました。2014年10月、米国の量的緩和第3弾(QE3)が完全終了し、米国の金融政策は徐々に正常化へのステップを歩みました。そして、2015年12月には、約9年半ぶりに利上げが行われました。

一方、米国以外のわが国や欧州など主要国では、さらなる金融緩和が進みつつあります。ただ金融緩和には限界もあります。時として、過剰な金融緩和は経済にマイナスの影響を与える恐れもあります。各国中央銀行が、今後、どのように経済を下支えしながら出口戦略を探っていくか注意深く見るべきです。

リーマンショック後の金融緩和

リーマンショック後の世界経済を俯瞰すると、一時は中国を中心とする新興国経済の回復が世界経済を支えるとの期待がありました。しかし、2011年頃から中国経済の減速が明らかになるにつれ、世界経済の全体の需要は低迷し、各国の輸出や設備投資も落ち込みました。この結果、先進国、新興国ともに、需要の高まりに支えられた物価の上昇は進みづらくなっています。

このように経済成長率が低迷する場合、経済政策の側面からは2つの取り組みが考えられます。まず、財政政策を用いて公共工事を進める、あるいは減税によって企業の収益や家計の可処分所得をサポートすることです。

しかし、先進国ではギリシャの財政破たんに見られるように財政の悪化が懸念され、欧州を中心に財政の緊縮、健全化が重視されてきました。新興国では中国が4兆元(当時の邦貨換算額で60兆円程度)もの景気対策を進めた結果、その後遺症としての過剰な生産能力や債務問題が顕在化しています。

こうして世界的に積極的な財政支出が難しくなる中、各国は金融緩和で景気を支えることを重視しました。いわば、金融緩和で目先の期待を演出し、需要を糊塗しようとしたのです。米国では3回にわたって量的緩和(QE)が実施されました。QE1は2008年11月~2010年6月、QE2は2010年11月~2011年6月、QE3は2012年9月~2013年12月まで実施されました。

2014年に入ると、FRBは緩やかな景気回復を理由に資産の買い入れ額を徐々に減らしました。これを「テーパリング(Tapering)」と言います。テーパリングとは、徐々に先細りすることを意味します。テーパリングが実施された理由は、すぐに買い入れをストップすると市場にショックを与え、金利の急上昇など混乱が生じる恐れがあったからです。

FRBの出口戦略

QE3の収束、その後の利上げ準備などに関する米金融政策の出口戦略は、世界経済を危機的な状況に陥れることなく、全体としてスムーズに進んだと言えるでしょう。出口戦略を進める上でのポイントは、市場を混乱させることなく資産買い入れなどを収束し、先行きの政策に関する予見性を高めて市場を安心させることであり、連邦準備理事会(FRB)が進めた一連の金融政策は、そのほかの国が金融政策の正常化を進める上でのモデルケースになると考えられています。

2014年に入るとFRBは連邦公開市場委員会(FOMC)の開催のつど、債券の買い入れ額を100億ドルずつ減額しました。この正常化へのプロセスは概ね市場参加者の考えに沿ったものと言え、減額が発表されても金利が急上昇するなど、市場が大きく混乱することはありませんでした。最終的にQE3は2014年10月末で完全に終了しました。

また、FRBが注力したのが「市場とのコミュニケーション」、つまり、中央銀行が先行きの金融政策の運営方針を市場に示すことでした。FRBは、量的緩和の終了が利上げに直結するのではなく(事前に決められた政策パスはないこと)、景気の回復を支えるためには低金利環境が必要だとの考えをFOMCの声明文や関係者の講演などの機会を使って公表しました。

テーパリングを進める中、FRBは資産買い入れ終了後も、相当の期間、低金利を維持すると表明しました。これは将来の金融政策の方針を事前に表明する「フォワードガイダンス」です。2014年12月からFRBは利上げに対して「辛抱強くなれる」とし、利上げはデータを見つつ慎重に進めるべきとの考えを表明しました。このようにしてFRBは利上げへの環境整備を入念に進めました。その結果、2015年12月、約9年半ぶりに米国の利上げが実現したのです。

米国以外での出口戦略の可能性

利上げ後もFRBは、経済指標を確認しつつ慎重に利上げを進める姿勢を示しました。世界経済全体が米国の景気回復に依存する中、国際金融情勢への影響を考えればFRBの慎重なスタンスは当然と言えます。

一方、2016年8月の時点で、FRB以外の中央銀行の金融政策は、さらなる金融緩和を志向しつつあるようです。短期間で景気が回復し金融緩和からの出口戦略が進むと想定するのは時期尚早かもしれません。

特に影響を与えたのが英国のEU離脱決定です。離脱決定によって実体経済にどのような影響が出るか、不確定な部分は多いと考えられます。それでもイングランド銀行(英国の中央銀行)は目先の市場安定を重視し、8月に予想を上回る金融緩和を決定しました。この影響によって欧州中央銀行(ECB)も追加の金融緩和を進める可能性があります。

同時に、金融政策だけで持続的な景気回復を実現できないことも確かでしょう。わが国では「アベノミクスは金融政策一本足打法」と揶揄されるほど、積極的かつ前例がないほどの金融緩和を進めてきました。しかし、実態としては景気の足取りは重く、マイナス金利政策は銀行の収益を圧迫しています。金融緩和が行き過ぎると経済を壊してしまう恐れもあるのです。銀行の収益悪化が一般企業の資金繰りを圧迫すれば、景気はさらに悪化しかねません。そうなると、さらに強力な景気刺激策が必要になるかもしれません。

どの中央銀行にとっても、買い入れられる国債には限界があります。その場合、追加緩和の余地が狭まり、金融政策の手詰まり感が意識されやすくなるでしょう。出口戦略以前に、今後の金融政策をどう運営すべきか、議論すべき点は多いと考えられます。また、積極的な金融緩和からの出口戦略が金利急上昇などの混乱をもたらす可能性があることにも気をつけるべきでしょう。

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Profile

真壁 昭夫
Akio Makabe

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)に入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社へ出向。みずほ総研主席研究員などを経て、1999年より国内有名大学の講師・教授を歴任し、現職は信州大学経済学部教授。テレビ朝日「報道ステーション」、日経CNBC「NEWS ZONE」レギュラーコメンテーターなど多数のTV番組に出演する一方、ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」でのコラム連載、「下流にならない生き方」、「はじめての金融工学」など、著書も多数。