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真壁 昭夫信州大学経済学部教授

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今後の金融業界展望

<第14回>2016.11.24
フラジャイル・ファイブ

フラジャイル・ファイブとは、ファンダメンタルズ(※1)が脆弱なブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカの5つの新興国を指す呼称です(フラジャイル・ファイブ=脆弱な5カ国の通貨とのとらえ方もあるようです)。

2013年5月、米国での量的緩和策が早く終わるとの見方が強まった結果、多くの新興国から投資資金が流出するとの思惑が高まりました。そのため、この5カ国の通貨を中心に、新興国の金融市場は大きく下落しました。これを受けて2013年夏場ころからフラジャイル・ファイブという呼称が使われ始めました。

まず、新興国とは何かを確認しておきましょう。新興国に関する特定の定義はないといわれています。一般的に、経済や政治の分野で急速な発展、変化を遂げている国が新興国と考えられます。その典型例が「ブリックス(BRICS)」です。これはブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字をとった造語です。新興国と先進国の顕著な違いは経済成長率の水準でしょう。人口の増加ペースや所得の伸び率が高いため、新興国の潜在経済成長率は先進国よりも高いと考えられます。そのため、多くの企業が新興国事業を強化してきました。世界の投資家も高い収益を求めて新興国の通貨や株式への投資を増やしてきました。

一方、先進国に比べて新興国のリスクは高いと考えられます。特に、新興国の多くは経常赤字を抱えています。これは、新興国経済が海外からの資金流入に依存していることを意味します。このため、新興国、特にフラジャイル・ファイブの場合、資金が国外に流出すると急速に景況感が悪化する傾向にあります。徐々に世界経済の先行き不透明感が高まりつつあるだけに、新興国の金融、経済の動向には注意が必要です。

フラジャイル・ファイブ登場までの経緯

まず、ブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカの経済基盤、通貨の脆弱性を指すフラジャイル・ファイブという呼称が登場した経緯をまとめます。

リーマンショック後、世界の主要な中央銀行は利下げや量的緩和を進め、多くのお金を市場に供給しました。新興国でも利下げなどが進むと同時に、財政出動が進められました。2009年には中国政府が4兆元(当時の邦貨換算額で60兆円程度)の景気刺激策を打ち出し、インフラ開発などへの期待が高まりました。これが、新興国が世界経済を支えるとの見方につながったのです。




確かに、中国の景気刺激策は急速に需要を高め、一時的に世界の景況感は上向きました。しかし、必要以上の供給能力が生み出された結果、徐々に需要の低迷が明らかになりました。2011年半ば以降、中国経済が減速し始めると、そのほかの新興国の成長率にも徐々に陰りが見え始めました。

2013年5月、それまで落ち着きを保っていた新興国に衝撃が走りました。当時の米連邦準備理事会(FRB)議長であったベン・バーナンキ氏が、早期の量的緩和の縮小を示唆したのです。これを「バーナンキショック」と言います。


バーナンキショックは、米金利の上昇、ドル高観測を急速に強めました。この結果、世界的な低金利や過剰な流動性に支えられてきた新興国経済から、急速に資金が流出しました。多くの投資家が新興国の通貨などを売り、ドルを購入するオペレーションを進めました。このとき、新興国の中でも経常赤字が大きかった5カ国の通貨が大きく下落し、フラジャイル・ファイブの景気動向に懸念が集まりました。

リスク高まる新興国経済

バーナンキショック後、多くの新興国からの資金流出が続きました。新興国の景気は低迷し、ブラジルでは政府への批判が高まり、首相が職務停止に追い込まれました。経済成長率の低下を受けて新興国の財政に対する懸念も高まっています。リーマンショック後のような積極的な景気刺激策は発動しづらいと考えられます。

不確実性高まる環境の中、多くの投資家は中国の経済、金融市場の動向に注意しています。中国の経済がどう推移し、フラジャイル・ファイブなど、そのほかの新興国にどういった影響が及ぶかに注目が集まっています。

2016年6月23日、英国の国民投票で予想外にEU離脱が決定されて以降、世界の金融市場はより不安定になっています。特に、人民元の売り圧力は高まっています。当局が人民元の下落を容認したとの報道もあるため、人民元の下落がほかの新興国の通貨にどう影響するか、市場での警戒感は強まっています。

その中で、多くの新興国がドル売り・自国通貨買いの為替介入を実施しています。中国は言うに及ばず、インドネシア、ブラジル、韓国などが為替介入を行い、自国通貨の過度な下落を防いできました。また、米国経済が緩やかな景気回復を維持していることが世界経済の危機的な状況を防いでいるとも言えるでしょう。

しかし、徐々に世界経済の先行きは不透明になると考えられます。英国の国民投票以降、中国の最大の輸出先である欧州経済の成長見通しは悪化しています。中国経済がさらに減速すれば、そのほかの新興国の景況感悪化も避けられないでしょう。その場合、通貨の下落リスクも高まると考えられます。もし、新興国各国が為替介入を進め外貨準備が急速に減少するのであれば、新興国経済の脆弱性に対する懸念は高まるでしょう。

以上より、今後の新興国経済を考える際、通貨の動向には注意が必要です。すでに、中国経済は世界第2位の規模を誇るまでに成長しました。そして、先進国企業の多くが新興国での売上を増やしてきました。世界各国の経済的なつながりが強まっているだけに、中国をはじめとする新興国経済の混乱はわが国をはじめとする世界経済の減速懸念を高める恐れがあります。そのため、先進国だけでなく、中国などの新興国経済の動向は注意深く見ていくべきです。

※ファンダメンタルズ:「経済の基礎的条件」と訳され、国や企業などの経済状態などを表す指標のこと。国や地域の場合、経済成長率、物価上昇率、財政収支などがこれにあたり、企業の場合は、売上高や利益といった業績や資産、負債などの財務状況が挙げられる。

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Profile

真壁 昭夫
Akio Makabe

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)に入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社へ出向。みずほ総研主席研究員などを経て、1999年より国内有名大学の講師・教授を歴任し、現職は信州大学経済学部教授。テレビ朝日「報道ステーション」、日経CNBC「NEWS ZONE」レギュラーコメンテーターなど多数のTV番組に出演する一方、ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」でのコラム連載、「下流にならない生き方」、「はじめての金融工学」など、著書も多数。