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真壁 昭夫信州大学経済学部教授

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今後の金融業界展望

<第16回>2016.12.21
わが国の金融政策

金融政策は、一般的に、金利水準や市中で流通するお金の量を調節することです。物価の安定や金融システムの安定を目的に進められる経済政策の1つであり、わが国の金融政策は、中央銀行である日本銀行によって決定されています。

1990年初頭にわが国の資産バブルが崩壊して以降、日銀はほぼ一貫して金融緩和策を取ってきました。最近の金融政策を振り返っても、安倍政権の政策運営の中でも金融政策の重要性が顕著に高まっています。具体的にはマイナス金利の実施や株式の買い入れなど、かなり思い切った金融緩和策が実施されています。

しかし、そうした積極的な金融緩和策にもかかわらず、わが国経済はデフレから脱却することができていません。経済専門家の間では、金融政策を中心とするアベノミクスは限界との考えも増えてきています。今回は、金融政策を決定する仕組みや近年の金融政策の歴史を振り返り、その上で、今後、金融政策がどう進むかを考えてみたいと思います。

金融政策が決定される仕組み

わが国の金融政策は日本銀行(日銀)の政策委員会によって決定されます。政策委員会は、日銀の最高意思決定機関であり、総裁、副総裁2名、審議委員6名の計9名で構成されています。意思決定は合議制に基づき、委員長は総裁が務めます。9名の委員は衆参両院の同意を経て内閣によって任命され、任期は5年です。

政策委員会の中で、金融政策を決定する会合を「金融政策決定会合」と言います。その日程は日銀のホームページにアクセスすることで誰でも確認することできます。この会合では政策金利の水準、国債を買い入れるオペレーションの執行方法などの金融政策手段、経済や金融の情勢に関する基本的な見解などが決定され、終了後には、日銀のホームページ上に会合の結果が公表されます。これを参照することで、どのような金融政策が決定され、どの委員が政策の内容に賛成、あるいは反対したかが分かります。

この発表に加え、日銀の経済や物価に対する見方をまとめた「経済・物価情勢の展望(基本的見解)」も公表されます。これには、物価目標の達成時期などがまとめられ、日銀の物価に対する考えが分かるものです。もし、物価の下方圧力が高まるとの見解が示されるなら、先々の金融緩和期待は高まるでしょう。

日銀のホームページでは、直近の会合だけでなく、以下で記す過去の金融政策に関する情報も公表されています。こうした情報は市場参加者が今後の政策を考える上で欠かせない材料です。

バブル崩壊後の金融政策の歴史

1990年代の資産バブル(株式と不動産のバブル)崩壊以降、わが国の経済は低迷しました。1990年代後半以降、物価が持続的に下落する「デフレ(デフレーション)」が進みました。この状況を克服するため、日銀は政策金利(無担保コールオーバーナイト:O/N物金利)の引き下げや量的緩和策を進めました。

1999年には政策金利が実質的にゼロ(0.15%)の水準まで引き下げられ、「ゼロ金利政策」が導入されました。これは2000年に一時解除されたものの、ITバブルの崩壊を受けた景気減速により、2001年3月には「量的緩和策」が導入されました。これは政策金利ではなく、金融機関が日銀にお金を預ける際に使う当座預金の量を政策目標にする政策です。

その後、わが国では不良債権処理が徐々に進み、米国では住宅市場への資金流入から「住宅バブル」が膨らみました。世界的にも不動産バブルが発生する中、わが国の景気も徐々に上向きました。その結果、2006年3月、日銀は「消費者物価指数の前年比は、先行きプラス基調が定着していく」として量的緩和を解除、7月にはゼロ金利政策が解除されました。

その後、2008年9月にはリーマンショックが発生し、世界経済は大きく低迷しました。同年12月に日銀は政策金利を0.1%に設定しました。2010年10月には「包括的な金融緩和政策」が導入され、物価の安定が展望できるまで実質ゼロ金利政策を続けること、国債や社債などの資産買い入れなどの基金の創設が決まりました。

最近の積極的金融緩和策

2011年12月の総選挙で政権を奪取した安倍首相は、デフレ脱却を最重要視して強力な金融政策を求め始めました。一方、日銀は需要拡大のためには産業政策が必要であり、過度な金融緩和は市場の価格発見機能を低下させると考えていました。そのため、日銀は物価達成の目標は据えず、わが国の経済状況に適した物価の目途は1%程度との見解を維持しました。

しかし、安倍政権には日銀の姿勢は緩すぎると映ったようです。2013年1月、日銀は政府との連携を表明し、物価安定の目標が2%であると定めました。これは中央銀行の独立性の低下を示唆します。

同年3月に積極的な金融緩和論者で知られた黒田東彦現総裁が着任し、4月には2%の物価目標を2年程度で達成すると銘打った「量的・質的金融緩和(黒田バズーカ第一弾)」が導入されました。これは期間の長い国債の買い入れ、上場投信(ETF)や不動産投信(REIT)の買い入れにより、期間の長い金利に低下圧力をかけ、投資家のリスクテイクを促す取り組みです。

その後、2014年4月の消費増税が景気を減速させたことを受け、10月には「追加緩和(黒田バズーカ第二弾)」が進められました。それでも需要は十分に回復しませんでした。2015年半ば以降は、中国経済の減速などを受けて景況感が悪化しました。そこで日銀はさなる金融緩和を重視し、2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和(黒田バズーカ第三弾)」が導入されました。

以上を見ると、アベノミクスは金融政策を過度に重視し、円安を強めて企業業績のかさ上げ、株高、賃上げを目指したと言えます。「アベノミクスは金融政策一本足打法」と揶揄するエコノミストもいるほどです。

今後の日銀の金融政策予想

マイナス金利導入により国債利回りは急低下し、金融機関の収益力は低下しています。金融機関が売却できる国債の量にも限度があります。黒田総裁が「限界はない」と強弁する「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は長く続けられるものではないと言えます。

2016年6月には、英国のEU離脱が決定し、世界経済の先行き不透明感が高まりました。そこで市場参加者は「7月の決定会合で、国債買い入れ増額、マイナス金利拡大、ETFなどの買い入れ拡大があるだろう」と考えました。しかし、日銀は市場の見方を裏切りETFの買い入れ倍増を中心とする追加緩和を発表しました。

この背景には市場の混乱が落ち着く中での対応は回避し、追加緩和手段を温存したいとの考えがあったのかもしれません。一方、黒田総裁の強弁通りの緩和策がなかったことが市場に政策の限界、政策の修正を意識させたことも確かです。

この状況は、金融政策に関する不透明感が高まったことを意味します。金融政策の修正が進む可能性はあります。同時に、参議院選挙後、安倍政権が政策総動員を強調する中、さらなる金融緩和が進む可能性もあります。どちらも軽視できません。

本来なら、マイナス金利という非常事態の金融政策は修正され、正常化への出口も確保されるべきです。難しいのは、安倍政権下、日銀は頑なに「緩和に限度なし」との考えを貫き、市場に「出口は閉ざされた」との印象を与えてきたことです。そのため、修正があるにせよ、さらなる緩和が進むにせよ、金融市場がどう動くかは不透明と言えます。その意味では、日銀の政策余地は次第に狭められていると見られます。今後、日銀はいかに金融市場参加者の信頼を高め、政策効果を向上させるかが重要になると考えます。

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Profile

真壁 昭夫
Akio Makabe

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)に入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社へ出向。みずほ総研主席研究員などを経て、1999年より国内有名大学の講師・教授を歴任し、現職は信州大学経済学部教授。テレビ朝日「報道ステーション」、日経CNBC「NEWS ZONE」レギュラーコメンテーターなど多数のTV番組に出演する一方、ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」でのコラム連載、「下流にならない生き方」、「はじめての金融工学」など、著書も多数。