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榊原 英資青山学院大学特別招聘教授

就活生向け!
榊原英資の“グローバル視点”経済展望

<第5回>2016.08.10
マーケット感覚を磨く必要性

近代はネイション・ステート(国民国家)が次々と中世の帝国から独立をすることによってつくり出されてきた。16世紀のイタリア諸都市に始まり、フランス革命などを経て次第に国民国家がつくられ、ドイツ・オーストリアなども神聖ローマ帝国の崩壊後独立を果たしていったのだった。

しかし、国民国家の成立は国家間の戦争をもたらし、1870~71年にはフランスとプロイセン王国の間の普仏戦争が起こり、さらに第一次世界大戦(1914~18年)、そして第二次世界大戦(1939~45年)につながっていったのだった。フランスとドイツ(プロイセン)は実に七十数年にわたって戦い続けたのだった。

第二次世界大戦後、荒廃したヨーロッパ大陸ではさすがに平和を求める声が強力になり、1952年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が誕生し、欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)などがつくられていった。1993年にはマーストリヒト条約によってEUが誕生し当初フランス・ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグの6カ国が参加、次第に参加国も増加し、現在28カ国が加盟している。2013年7月には28番目のクロアチアが加盟したのだった。

1998年には欧州中央銀行(ECB)が設立され、1999年には共通通貨ユーロがつくられている。現在フランス・ドイツ・イタリアをはじめ19カ国がユーロを共通通貨として使用している。また、フランスと通貨同盟を結ぶアンドラとモナコ、イタリアと通貨同盟を結ぶサンマリノとバチカンもユーロを法定通貨としている。

ヨーロッパ大陸諸国はECBとユーロを通じ、金融と通貨については統合された状況になっているのだ。ただ、イギリスとデンマークはそれぞれポンド、クローネといった自国通貨を維持しているし、ブルガリア・クロアチア・ポーランド・ルーマニア・スウェーデン・チェコ・ハンガリーの7カ国も将来のユーロ導入を義務づけられているが、現在はそれぞれの自国通貨を維持している。


国民国家をベースしてつくられてきたヨーロッパも共通金融政策、共通通貨を持つようになり、次第にひとつのマーケットとして機能するようになってきているのだ。これで、財政が統合されればひとつの国になるのだが、これはなかなか難しい。現状では、ヨーロッパ諸国の中でドイツを中心とする北ヨーロッパの国々の力が強く、ギリシャやスペイン・ポルトガルなどの南ヨーロッパの諸国が弱体化している。2010年にはギリシャ危機が起こり、その後ギリシャのGDPは大きく減少している。

現状でヨーロッパ統合となればドイツの力が圧倒的に強く「ドイツ帝国」になりかねない。ドイツもギリシャなどの弱小国を抱えて帝国をつくるつもりもないし、ギリシャなどもドイツに飲み込まれるのを嫌っている。しばらくは金融と為替だけが統合されているという状況が続いていくことになる。

しかし、この状態ではドイツなどとギリシャなどの南欧との格差はますます拡大することになる。とすれば、ギリシャ危機などが再燃する可能性は低くないし、ヨーロッパの不安定性は続くことになる。イギリスのEU離脱もこうした状況の中で起こり、ヨーロッパの混乱を加速することになった。EUが直ちに解体することはないにしても、ヨーロッパの不安定化がさらに進むことは間違いないだろう。

イギリスのEU離脱を引き金にポンドとユーロは下落し、USドル・日本円が強くなっている。イギリス離脱直後には円ドルは1ドル100円を切ったが、8月8日現在では1ドル102円前後。恐らく、年末にかけて緩やかな円高が進行することになろう。

為替はその典型だが、多くの経済指標はマーケットによって大きく左右されるようになってきている。日本の場合、円高になると株安になる傾向が強い。また、国債の金利も2016年に入ってマイナスになってきている。8月に入って新発10年国債の金利はマイナス0.1%を切っているのだ。

いずれにせよ、世界経済がかなり不安定化し、マーケットが大きく動いてきている。マーケット感覚を磨き、為替や金利、あるいは株式がどう動いていくのかを予測できる能力を身につけることが、為替の専門家のみならず、多くのサラリーマンたちにも重要になってきているのだ。

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Profile

榊原 英資
Eisuke Sakakibara

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶應義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学特別招聘教授。近著に「資本主義の終焉、その先の世界」、「中流崩壊 日本のサラリーマンが下層化していく」、「仕事に活きる教養としての『日本論』」、「日本経済『成長』の正体」、「榊原英資の成熟戦略」など。