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プロの視点

伊藤 元重東京大学名誉教授/学習院大学 国際社会科学部 教授

“ウォーキング・エコノミスト”が語る、
世界経済・日本経済のこれから

<第12回>2017.3.22
進化するAI翻訳と、これからの時代のコミュニケーション

AIによる自動翻訳の進化

AI(人工知能)は第3世代になったと言われる。コンピュータが眼を持って、それで機械学習が可能になったことが大きいようだ。専門家の中にはこの革命をカンブリア爆発に例える人もいる。カンブリア期に生物が眼を持つことで、餌を追いかけたり敵から隠れたりという行動が可能となり、生命の進化のスピードが速くなったことをカンブリア爆発と呼ぶ。それに匹敵したことがAIに起こりつつあるというのだ。

眼を持つというのは、コンピュータにカメラがついたということではない。それならずっと昔からある。眼を持つとは、人間で言えば脳の機能に対応することなのかもしれないが、カメラを通じて入ってきた様々な画像や映像からある種のパターンを読み取る能力を持つということだ。猫の様々な写真や絵を見せることで、猫の共通パターンを認識することなどを想定すればよい。

コンピュータがこの能力を持つことで、人間が詳しくプログラミングをしなくても、コンピュータが自ら能力を蓄積することができるようになった。世界の囲碁のチャンピオンに勝ったディープマインド社のアルファ碁は、機械同士でなんども囲碁の勝負をすることで、勝ちのパターンを学んでいったという。

さて、このAIの進化の中で注目すべきなのが、自動翻訳や自動通訳の仕組みである。もし完璧な自動通訳の仕組みができれば、国境を超えた様々なコミュニケーションの姿が変わり、社会を大きく変えることになることは、誰も否定しないだろう。

問題はどれだけ進化しているのかということだ。グーグルはAIを活用して自動翻訳の仕組みに取り組んできた。専門家の方から聞いた話だが、昨年の後半このプロジェクトで大きな進歩があったようだ。グーグルのAIを活用した翻訳のレベルは、人間のプロの翻訳のレベルに肉薄しているというのだ。機械学習を利用して大量の日本語と英語を読ませることで、AIの翻訳能力が進化している。もちろん、日本語と英語だけではない。あらゆる言語の間での翻訳が可能で、しかも言語の間の類似性や違いなどについての分析成果も出てくるそうだ。

まずは試してみよう

論より証拠なので、スマホのグーグル翻訳をダウンロードして試してみてほしい。グーグルの翻訳機能を利用して英文の記事やサイトを日本語に翻訳してみたことがある人は多いだろう。何となく意味が分かるが、日本語が随分おかしい。そう感じた人は多いかもしれない。もしそう感じたことがあるなら、今回再度翻訳を実行してみたら、そのレベルが格段に向上していることがわかるだろう。

それ以外にも面白い機能がある。スマホのカメラを利用して英語で書かれたインドのホテルの看板を撮ったら、画面にはカタカナ表記の文字が重なって出てきた。英文の文字をカメラで認識し、翻訳機能で日本語に翻訳、それを文字の形で映像として出したのだろう。

スマホの音声認識の機能も大幅に向上している。私が日本語でスマホに話した内容が、別のスマホで英語で話されるというサービスは、すでにドコモなどによって提供されているが、この通訳のレベルも格段に向上していくはずだ。10年後にはほぼ完璧な通訳や翻訳のシステムができるという一部の専門家の予言は、決して誇張ではない。もっと早い時期に実現するかもしれない。

これは酒の席で聞いた話なので本当かどうかわからないが、一部の翻訳書では、まずグーグルを使って下訳を行い、それから人間の翻訳者が手を入れるところも出てきているという。本当の話かどうかわからない。仮にまだそうしたところがなくても、1年後にはそうした翻訳をするところが出てくるはずだ。

語学学習はどうするのか

このような時代に一生懸命に語学学習をする必要があるのか。若者の中にはそう考える人もいるだろう。この点は、深く考える必要がある。今の段階で簡単に結論を出すのは難しい。

まず明らかなことは、AIを最大限に活用する語学習得を心がける必要がある。難しい文章を一生懸命に翻訳することに多くの時間を使わなくても、AIが訳してくれるのであれば、それを活用すればよい。実はAIは、単純な文章よりも複雑な長文の方が翻訳は得意という面もあるようだ。

日常会話でも、スマホなどが使えるのであれば、最大限に活用すればよい。まだAIは完璧ではないので、AIが翻訳しやすいような日本語を話す努力は必要かもしれない。

ただ、それでも語学学習が必要ないかというとそうでもなさそうだ。今20歳の人にとっては、これから10年ぐらいが、人生の中でもっとも語学力を使う時期かもしれない。それにAIが間に合わない可能性は大きい。また、機械が翻訳機能を持っていたとしても、相手の耳元でささやくようなコミュニケーションは人間にしかできない。そのようなコミュニケーションがますます重要になってくる。

もっと重要なことは、コミュニケーション能力というのは、翻訳や通訳の能力ではないということだ。海外の文化や社会の中できちっとプレゼンテーションし、メッセージを伝える能力である。英語の発音は悪いし、単純な言葉しか使えないのに、妙に説得的な発言をする人に時々遭遇することがある。この人たちは、翻訳能力は弱くても英語でのコミュニケーション能力は高いのだ。

AI万能時代のコミュニケーションについて、ぜひ一度真剣に考えてほしい。

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Profile

伊藤 元重
Itoh Motoshige

1974年東京大学経済学部卒業。1979年米ロチェスター大学大学院経済博士号取得。専門は国際経済学。東京大学大学院教授を経て2016年4月より学習院大学国際社会科学部教授。6月より東京大学名誉教授。税制調査会委員、復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員、社会保障制度改革推進会議委員、公正取引委員会独占禁止懇話会会長などの要職を務める。ビジネスの現場で、生きた経済を理論的観点を踏まえて鋭く解き明かす「ウォーキング・エコノミスト」として知られ、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などメディアでも活躍中。「入門経済学」「ゼミナール国際経済入門」「ビジネス・エコノミクス」「ゼミナール現代経済入門」など著書多数。