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伊藤 元重東京大学名誉教授/学習院大学 国際社会科学部 教授

“ウォーキング・エコノミスト”が語る、
世界経済・日本経済のこれから

<第1回>2016.07.20
英国のEU離脱について考える

国民投票によって英国がEUから離脱を決めたことが世界を揺さぶっている。遠い英国の話であるのに、国民投票の結果が判明した直後に市場が開いた日本では、日経平均株価が1,000円以上も下がり、円も99円台という近年にない円高となった。日本だけではない。次々に開くアジアの市場、欧州、そして米国と、世界中の国の株が暴落した。

世界経済はつながっているので、こうした市場連鎖が起きるのは珍しいことではない。ただ、その暴落の規模があまりに大きかった。主要先進国は市場安定化のために全力を尽くすという声明を出し、大量の資金を供給した。

これから社会人になろうという読者の皆さんにとっても、今回の出来事はグローバル経済の流れを理解する上でも格好の材料を提供しているのではないだろうか。今後も新聞やテレビなどでいろいろな形でこの問題が取り上げられると思うので、関心を持ってほしい。

今回の国民投票は、その市場への影響もさることながら、そもそもなぜこうした事態になったのかということを考える必要がある。英国の国民の半分がEUからの離脱に賛成票を投じたのは、グローバル化、所得格差拡大、移民問題など、現在の政治への不満を強く持っているからだ。そうした不満が爆発する結果を、国民投票が招いてしまった。

重要なことは、こうした流れが英国だけでなく、世界の多くの国で見られることだ。米国でトランプ候補を支持しているのはプア・ホワイトと呼ばれる貧しい白人層であると言われる。彼らは、ウォール街の金融業、職業政治家、イスラム教徒、移民などに漠然とした怒りを持っている。そうした怒りが集結した結果、トランプ候補に対する支持が広がっている。

英国が離脱を決めたEU内部の国でも、同じような動きが強く見られる。移民への排斥運動が多くの国で見られるし、EUからの離脱を求める勢力の政治的影響力は増している。既存の政治家に反感を持つ人も少なくない。

グローバル化が進むことで、人々の生活は大きな変化を余儀なくされている。すべての人がそれを好ましいものと考えているわけではない。貧困層、低所得労働者、年金生活の高齢者などは、グローバル化によって自分たちの生活が脅かされていると感じているようだ。今回の英国の国民投票でも、豊かな人が多いロンドン地域や、若者は残留賛成が多かった。離脱に賛成したのは貧しい地域の人、あるいは高齢者が多かったという。

グローバル化が進み、ヒト・モノ・カネの移動が激しくなれば、その分だけそれに反発する人も多くなる。しかし、グローバル化の流れを政治的に無理矢理止めようとしても、それは難しいことだ。グローバル化を止めようとしたら、その結果かえって経済や社会はおかしな状況に陥る可能性もある。

今回のイギリスの国民投票でも、その場の勢いで離脱賛成に投票した人が、離脱によって想定される経済的混乱の大きさに驚いて、自分の投票行動を悔いているという報道があった。今後の離脱のプロセスによっては、英国経済は大きなダメージを被り、その結果に多くの人が驚くことになるかもしれない。

イギリスの首相であったウィンストン・チャーチルが民主主義についてコメントしたこと(※)を、グローバル化に置き換えてみると面白い。「グローバル化はひどいものだ。移民問題、テロ、格差拡大など、あらゆる悪いことが起きる。しかし、グローバル化を止めることは、もっとひどい結果になる」というものだ。

グローバル化の悪い面ばかりが強調されるが、グローバル化のメリットも多くある。グローバル化に背を向けるということは、そのメリットを享受できないということでもある。今回の英国のEUからの離脱を「終わりの始まり」と表現する人がいる。これから、反グローバル化の動きが世界の多くの国に広がり、結果的に世界の分裂と停滞が起きるというのだ。そうならないことを願っているが、今後の動きは注意深く見ていかなくてはならないだろう。

英国では、若者にはEU残留を支持した人が多く、分離を支持した人には高齢者が多かったようだ。テレビの画面で、ある英国の若者が「これで自分たちの未来は傷つけられた」と発言していたのが印象に残る。この論考で取り上げた英国の国民投票結果の背後にある政治的な流れが将来の日本をどう変えようとしているのか、できるだけ多くの若者に関心を持ってほしいものだ。

※「民主主義は最悪の政治形態であると言える。ただし、これまでに試されてきたすべての政治制度を除けばの話だが」というコメントのこと。裏を返せば、民主主義がほかの政治制度より優れていることを表現している。

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Profile

伊藤 元重
Itoh Motoshige

1974年東京大学経済学部卒業。1979年米ロチェスター大学大学院経済博士号取得。専門は国際経済学。東京大学大学院教授を経て2016年4月より学習院大学国際社会科学部教授。6月より東京大学名誉教授。税制調査会委員、復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員、社会保障制度改革推進会議委員、公正取引委員会独占禁止懇話会会長などの要職を務める。ビジネスの現場で、生きた経済を理論的観点を踏まえて鋭く解き明かす「ウォーキング・エコノミスト」として知られ、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などメディアでも活躍中。「入門経済学」「ゼミナール国際経済入門」「ビジネス・エコノミクス」「ゼミナール現代経済入門」など著書多数。