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プロの視点

伊藤 元重東京大学名誉教授/学習院大学 国際社会科学部 教授

“ウォーキング・エコノミスト”が語る、
世界経済・日本経済のこれから

<第11回>2017.3.8
情報化によってエンパワーされる個人

バンガロールで見た光景

IoTやAIの分野の調査のためにインドに行ってきた。世界的な情報関連企業が多く集中するバンガロールでは、シスコという米系企業のバンガロールキャンパスに行った。情報系の企業はオフィスや工場をキャンパスと呼ぶことがある。オフィスや工場と言っても、どちらかといえば大学のキャンパスのようで、シスコのバンガロールキャンパスも緑豊かな大きな庭の中に10棟以上の建物が並び、中では多くの若者が大学生のように自由な格好で仕事に取り組んでいた。

シスコは通信のルーターから始まった巨大なIT企業である。世界中に拠点を持っているが、バンガロールにあるキャンパスは特に大きく、1万人前後の従業員を抱える。その多くは若いエンジニアで、IoTやAIの分野で研究を続けている。研究と言っても、一人で黙々と資料を作成するというようなタイプのものではなく、数人のチームで自由に話し合ったり、試作品を制作したりする大学の工学部の研究室のようでもある。だからキャンパスと呼ぶのだろう。

担当者のプレゼンテーションを聞いていたら、「技術革新の民主化」という表現を何度も使っていたことが印象的であった。イノベーションの活動に多くの人が個人として参加できる。能力とやる気さえあれば「誰でも参加し、活躍できる」というような意味のようだ。

バンガロールキャンパスの中では、大学や専門学校を出たばかりのような若者が真剣にパソコンなどを使って実験や試作を繰り返している。巨大な装置が必要な訳ではなく、パソコンなどのわずかな機器だけで、すぐに研究に参加できるのだ。

大衆が参加できるITでのイノベーション

何も持っていない個人でも、若干の知識とやる気さえあれば、イノベーションの活動に参加できる。これはITの重要な特徴なのかもしれない。旧来、多くの研究活動では巨大な組織や設備が想定されてきた。巨大なエネルギー産業、化学工業、自動車や航空機などの機械分野では、巨大な設備と資金が潤沢にある組織が前提となってきた。しかし、様々なITサービスが利用可能になる中で、個人ができる仕事の範囲が広がっている。ロースペックな機器でもクラウドにつなげれば複雑な分析が可能となる。

一研究者として、私自身の活動を振り返ってもそれはよく分かる。少し前までは、重要な情報は政府や大企業に独占されていた。そうした組織にアプローチして、積極的にプロジェクトに参加しない限り、重要なデータや情報を確保することが難しかった。大学という組織も巨大な王国のようであった。大学に所属することで、膨大な図書や資料にアクセスでき、貴重な資料やデータを利用できた。

しかし、今や大学の組織の中にいなくても、オンラインでセミナーの情報を確保し、ネットワーク上で最新の研究を読むことができる。大学のアカウントを確保しないとコンピュータが活用できない訳ではなく、クラウドとパソコンを利用すれば個人でも大きな規模の計算や分析が可能になった。

これは研究活動だけではなく、全ての企業活動で同じことが言える。小さなパソコンとネットワークへの繋がりがあれば、少人数でもかなりのことができる産業が増えている。そこで重要となるのは、大きな組織の連携行動というよりも、一人ひとりの工夫とやる気なのである。少人数でIoTやAIの先端技術に挑戦しているインドの若者を見ていると、技術革新の民主化という表現がぴったりと当てはまるような気がする。

大きな組織に頼るな

こうした変化は、若者の仕事の形を大きく変えていくように思える。大きな企業に入って組織の歯車として仕事を行うことは、ますます魅力がなくなってくる。魅力がないどころか、そうした旧来型の仕事を続けている企業は、競争によって淘汰されていくかもしれない。

大企業であっても、一人ひとりが工夫をしていくようなビジネススタイルが必要となる。先進的な企業はそういった新たなやり方を積極的に取り入れようとしている。

「技術革新の民主化」は仕事の姿を大きく変えようとしている。これから社会で活躍する日本の若者にも、ぜひこのイノベーションの民主化の動きを感じ取ってもらい、それに積極的に参加してほしい。何をしたらよいのか。それは一人ひとりが考えていくしかない。ただ、一つだけ言えることがある。テクノロジーに関心を持ってほしい。決して裕福ではないインドの若者でも、やる気さえ持てば無限の可能性を持っていることを実感している。日本の多くの若者にも、情報技術の動きに関心を持ってもらいたいものだ。

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Profile

伊藤 元重
Itoh Motoshige

1974年東京大学経済学部卒業。1979年米ロチェスター大学大学院経済博士号取得。専門は国際経済学。東京大学大学院教授を経て2016年4月より学習院大学国際社会科学部教授。6月より東京大学名誉教授。税制調査会委員、復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員、社会保障制度改革推進会議委員、公正取引委員会独占禁止懇話会会長などの要職を務める。ビジネスの現場で、生きた経済を理論的観点を踏まえて鋭く解き明かす「ウォーキング・エコノミスト」として知られ、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などメディアでも活躍中。「入門経済学」「ゼミナール国際経済入門」「ビジネス・エコノミクス」「ゼミナール現代経済入門」など著書多数。