コンサルって何?種類や仕事内容は?「コンサルティング業界」をキチンと知ろう!

業界・職種・企業研究

公開日:2024.07.24

こんにちは。キャリアコンサルタントの加藤田です。「コンサル」という言葉、就活準備を進める過程で、よく目にしたり耳にしたりするのではないでしょうか。コンサル、コンサル営業、コンサルタント、コンサル業界、といったように、「コンサル」がつく名称って多いですよね。幅広く使い勝手の良い言葉であると同時に、「そもそもコンサルって何?どのような仕事なの?」と理解しきれていない方もいるかもしれません。

そこで今回は、業界研究として「コンサルティング業界」に焦点を当てます。コンサルタントの仕事内容、専門分野、業界内のプレーヤーなど、主だった内容を解説していきます。また、コンサルタントに求められる資質にも触れていきます。

そもそもコンサルタントとは?基本的な定義と役割

コンサルタントとは、『コンサルティングサービスを生業にしている人』を指します。コンサルタントと似たような言葉に、「コンサル営業」という言葉がありますが、この2つは目的という点で違います。
コンサルティング営業は営業の一種であるため、目的は「顧客の課題を優先的に考え、最適な商品・サービス(自社あるいは自社以外)を提案、購入してもらうことで解決に貢献」します。ただ、業態や会社によっては、自社商品や自社サービス導入提案の色合いが濃くなるケースも多いです。

一方、コンサルタントは、コンサルティングサービスそのものが“商品”です。そして、コンサルティングサービスの目的は、『顧客組織の経営管理上の何らかの問題の解決に向けて、独立した立場で、専門的な助言・助力の提供を行う』ことです。

コンサルティングファーム=コンサルティングサービスを事業内容とする会社のこと。
コンサルティング業界=コンサルティングファーム各社が属する産業領域のこと。

コンサルタントの役割は、一言でまとめるならば、「クライアントの企業価値向上を支援するプロフェッショナル」です。

具体的には、以下のような役割が期待されています。

■意思決定の最大効率化を実現する、外部プロフェッショナルとしての機能

VUCA(※)の時代は、意思決定のスピードがより求められます。クライアントが、問題分析や発見、課題解決に向けた事業戦略策定までを自社で行うには、社内に専門部署があることは少なく、時間も労力も非効率です。そこで、戦略策定や業務変革の外部プロフェッショナルとして関わることで、迅速かつ質の高い意思決定を導くことができます。

※VUCA:「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(あいまい性)」という4つの単語の頭文字をとった言葉。急速に変化する市場や技術、多様な要因が絡み合い予測困難なビジネス、経済を表現した概念。

■独立した立場で、客観的な視点での提言ができる

自社内で改革や変革を進めようとした時、会社に長くいると企業風土や物事の進め方に慣れてしまい、新しい視点や一から考えることが難しくなることがあります。また、社内のしがらみや人間関係といった利害関係から、無くす・切り離す・削る、といった大胆な動きが取りにくくなることもあります。コンサルタントは独立した立場によって、客観的視点で経営課題や組織変革といった分析・発見・提言ができます。

■プロジェクトマネジメントとしての機能

プロジェクトの管理・進行をする役割です。目標、プロジェクトのスコープ(作業の範囲)、リソース(※)の調整や管理など、成果物や目標達成に向けた実装をサポートします。

※リソース:人員、予算、時間、作業場所の確保などの資源を指す。

■外部のノウハウ蓄積による効果の最大化を受けることができる

コンサルティングファームはグローバルに活動しており、自社内には業界知見や過去の事例などノウハウが膨大に蓄積されています。コンサルタントはそれらをベースにして顧客にベストプラクティス(最適解)を提供するため、企業はその効果を最大限に受け取れます。

このように、コンサルタントは専門的な知識と経験を活かし、クライアントのビジネスの成功や成長に貢献する重要な存在です。

コンサルティング業界にはどのような分野があるの?

コンサルティング業界は様々な分野やテーマがあります。以下、主な分野と特徴、代表的なファームについてご紹介します。

1.戦略系:
大企業や外資系企業を顧客として、経営戦略領域のコンサルティングを手掛けています。

経営トップに対し、主に経営方針の策定、事業戦略立案、M&A戦略などを提言し、実行への道筋をつくります。企業経営の根幹に関わるため、少数精鋭で能力の非常に高いコンサルタントが所属しています。

この数年は、戦略領域だけでなく実行支援領域への進出や、IT・デジタル領域のテーマ支援も手掛けており、支援領域は広がっています。総合系ファームの戦略領域進出に対抗する必要性が高まっているためと考えられます。

代表的なファーム:マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ、ベイン・アンド・カンパニー、A.T.カーニー、アクセンチュア(戦略)など

2.総合系:

言葉通り、総合的なコンサルティングサービスを手掛けています。支援領域は、事業戦略・IT戦略といった上流フェーズから、人事、業務オペレーション、システム構想・導入など、非常に幅広いため、企業規模も非常に大きいです。
総合系には、事業再生・M&A、戦略、人事、業務(ビジネス)を主にカバーする『BIG4』と呼ばれるファームと、戦略、人事、業務(ビジネス・IT)を主にカバーするファームがあります。

総合系ファームの主戦場は、業務/IT領域ともいえます。クライアント企業の各部門長クラスに対し、業務変革企画やシステム企画の提言を行い、案件受注後は要件定義からプロジェクト運営、システム導入といった実行支援まであらゆるサポートを行います。

この数年は、総合系ファームの戦略領域への進出が進んでいます。企業の全社的なDX推進を確実に受注するためには、経営トップへのアプローチおよび関係構築が重要です。それが可能となる戦略領域の強化のためと考えられます。

代表的なファーム:BIG4、アクセンチュア、アビームコンサルティング、ベイカレント・コンサルティング、IBM(業務・IT)など

3.財務・M&A:

主にM&Aや財務に関連した課題解決に特化したコンサルティングを手掛けています。経営戦略にも深く関わるため、大手ではM&Aを切り口とした戦略提言や、M&A後の統合プロセス支援にも領域を広げています。

特に強いプレーヤーは、上記で説明したBIG4と呼ばれる世界4大会計事務所が擁するアドバイザリー部門です。それぞれが日本の大手監査法人のグループ会社でもあります。もともとは、会計事務所としての誕生から、財務・税務に関する知見を強みに、企業の経営方針や課題解決のためのアドバイスといったコンサルティングを展開してきました。(ちなみに、アクセンチュアも、元々は会計事務所アーサー・アンダーセンコンサルティングが前身です。)
またM&A専門の独立系ファームもあります。

代表的なファーム:PwCアドバイザリー、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー、KPMG FAS、EYTAS、など
独立系M&Aファーム:日本M&AセンターHD、M&Aキャピタルパートナーズ、など

4.組織・人事系:
「ヒト」や「組織」の領域を専門に手掛けています。人事戦略や制度設計、人材開発や育成、組織戦略などがあります。最近では、人的資本経営や健康経営への支援需要が高まっており、総合系ファームはこの分野を拡大しています。

代表的なファーム:マーサージャパン、コーン・フェリー・ジャパン、タワーズワトソン、など

5.シンクタンク系:
大手証券やメガバンクなどの金融機関や大手事業会社を母体とします。主な業務は、経済調査、官公庁向けリサーチ、ITコンサルティング、マネジメントコンサルティングです。ITコンサルティング領域ではアクセンチュアなど総合系やSIベンダーと競合関係、マネジメントコンサルティング領域では外資系戦略系ファームや人事系ファームと競合関係にあります。

代表的なファーム:野村総合研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、みずほリサーチ&テクノロジーズ、日本総合研究所、NTTデータ経営研究所、富士通総研、など

6.中堅・中小企業向け:
中堅・中小企業を対象にコンサルティングを手掛けます。特徴はカバーする領域が幅広い点です。経営戦略のみならず、M&A支援から事業承継、会計・財務、IT導入支援など、幅広いサービスを提供します。

代表的な企業:船井総合研究所、タナベコンサルティンググループ、など

上記以外にも、医療・ヘルスケア系、事業再生系などの分野があります。また、最近では、SDGsやESGなど「環境・サステナビリティ」のテーマの支援強化が目立ってきており、外資系ファームを中心に専門部隊が相次いで立ち上がっています。

全体では、支援領域を自社の得意分野以外に広げるファームが増えており、支援領域の総合化が進んでいます。戦略系によるIT・業務・デジタル領域進出、あるいはIT・業務を中心とした総合系による上流フェーズ戦略領域の進出など、以前は分野ごとにすみ分けされていた業界構造が変わり始めています。

コンサル業界は外資系が多いってホント?

コンサルティング業界には数多くの外資系ファームがメインプレーヤーとして存在しています。もともとは19世紀にアメリカで誕生した職業であり、欧米を中心に外資系コンサルティングファームが主体となってグローバルに広まったためです。その後、外資系ファームから分離独立する形で様々な国内系ファームが設立したり、日系企業を母体とするファームも誕生しています。

たとえば、戦略系のドリームインキュベータは、創業者がボストン・コンサルティング・グループ出身です。また、シンクタンク系ファームは、大手金融機関や大手事業会社を母体としています。さらに、中堅・中小企業向けの船井総研HDや独立系M&Aファームの日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズなど、多くの日系ファームが活躍しています。

なお、BIG4の内、3社は外資ですが、デロイトは監査法人Deloitteをバックボーンにもつ日系ファームです。

コンサルタントってどのような人が向いているの?どういったスキルが求められるの?

コンサルタントに求められる資質やスキルには、どのようなものがあるのでしょうか?新卒採用はポテンシャル採用です。これはどの業界でもあてはまることです。

求められる資質としては、以下のようなタイプが向いている傾向があります。

■高い知的好奇心や学習意欲がある
■高い上昇意欲がある
■他者貢献への意欲がある
■前向きでポジティブな考え方ができる

期待される能力としては、以下のようなものが挙げられます。

■高い論理的思考力
論理的思考はコンサルタントが仕事を進める上での基本的なスキルです。ロジカルシンキング・ゼロベース思考・仮説思考、といった思考力をはかるために、選考ではWEBテストや筆記試験、グループディスカッションが実施されます。

■高い対人関係構築力(コミュニケーション力)
コンサルタントは常に人と関わる職業です。チームメンバーやクライアントなど、年齢や立場をはじめ、様々な人と一緒にプロジェクトを進めます。周囲の人とどれだけ良好な関係を築けるか、がプロジェクトの成功に大きな影響を及ぼします。従って、周囲の人と適切に意思疎通をはかることで信頼関係を構築し、価値観や立場が異なる人とも協力しながら、結果や成果に繋げられる力は、仕事への適性として重要です。

コンサルタントの仕事は、顧客の課題解決に対して貢献できた時の充実感・達成感は大きいですが、同時に、限られた時間の中で、顧客の期待に応え、困難も乗り越え必ず結果を出すことが求められる、プレッシャーの大きい仕事でもあります。

そのためには、担当業界やビジネス理解、専門知識やスキルを学ぶ学習意欲、論理的思考力や対人関係スキルに加え、困難を乗り越える精神的なタフさなどが求められることはお分かりいただけると思います。

■業界・職種研究におすすめのイベント「スポットライト」の紹介

スポットライトとは業界、職種、地域等のカテゴリにスポットをあてたオンラインイベントです。関心のあるカテゴリで絞り込むことができるため、業界や職種について効率的に情報収集することが可能です。詳しい情報やスケジュールは下記ページを確認ください!

まとめ

ここまで、コンサルティング業界について解説してきました。いかがでしたか?業界のイメージが少しは掴めたならうれしいです。

コンサルティング業界にはそれぞれ専門分野があり、コンサルタントは深い業界知見と高い専門スキルにもとづいて、顧客組織の企業価値向上を支援するプロフェッショナルです。興味を持たれた方は、まずは、各ファームのホームページや就職情報サイトの企業情報を見てみたり、いろいろと情報収集をしてみることをおすすめします。またインターンシップ・キャリアに参加することで実際の職業より深く理解することができます。ぜひこの機会に参加してみましょう。

コンサル系のインターンシップ・キャリアはこちら

PROFILE

加藤田綾子(2級キャリアコンサルティング技能士・キャリアコンサルタント)
新卒で野村證券株式会社に入社、国内リテール部門で営業に従事する。その後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社(旧:東京三菱証券)に入社。投資銀行部門で、主にカバレッジバンカーとして上場企業の資金調達やアドバイザリーなど資本政策案件に携わる。現在は独立し、企業研修、大学での就職支援講座や非常勤講師として授業も行う。カウンセリング実績は9,000人以上。米Gallup社認定ストレングスコーチ、一社)アンコンシャス・バイアス研究所認定トレーナー、日本コミュニケーション能力認定協会本部トレーナー。

この記事のタグ

関連記事

最新記事

編集部のおすすめ記事

公式アカウントで最新情報を配信中!