「外資系企業」とは?外資系企業で働く実態と就職するための心得

業界・職種・企業研究

公開日:2023.05.30

こんにちは。キャリアコンサルタント/公認心理師の濱野裕貴子です。本記事は外資系企業への就職を考えている方に向けて、日系企業との違い、外資系企業で働くメリット・デメリット、外資系企業の選考スケジュールの違いなどを紹介しています。ぜひ参考にしてください。

そもそも、「外資系企業」って何ですか?

読者の皆さんの中には、大学卒業後の進路を考えるうえで「外資系企業」で働くことに興味を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。「グローバルに活躍できそうだ」「英語を活かして仕事ができそうだ」などといったイメージがあるかもしれません。

では、皆さんに質問です。「外資系企業」とは具体的にはどんな条件を満たす企業のことを指すのか、わかりますか? 

経済産業省「第54回外資系企業動向調査(2020年度調査)」等によると、「出資比率10%以上の外国人株主がおり、株式全体の3分の1を外国人投資家・外国法人が所有する企業」のことを「外資系企業」といいます。簡単に言えば、資本の3分の1を外国人か外国の法人が所有している企業、ということになりますね。

「外資系企業」は大きく以下の3タイプに分けられます。

1つ目は、外国企業が日本に現地法人として100%子会社を設立している「日本法人タイプ」。日本マイクロソフト、日本IBM、アクセンチュアなどがこのタイプにあたります。

2つ目は、外国企業が同業界、同業種の日本企業と合弁会社を設立している「合弁タイプ」。日本マクドナルドや、ルノーと資本提携をしている日産自動車などがこのタイプにあたります。

3つ目は、「外国企業そのものタイプ」。日本にある事業所は、その外国企業の「日本支社・支店」という位置づけです。外資系コンサルティングファームや外資系金融機関などは、このタイプがほとんどです。

あなたが今興味を持っている企業は、上記3タイプのどれにあたるでしょうか。企業研究の第一歩として、ぜひ調べてみてください。

就職するにあたってのスケジュールは?日系企業とはどう違う?

「外資系企業」を就活の選択肢に入れている方は、日系企業とは採用選考のスケジュール感や方法が少々異なるということを、まず念頭に置きましょう。

日系企業では、学部3年生・院1年生の夏にインターンシップ等の機会があり、その後秋~冬にかけてさらにインターンシップ等が行われることが多いですね。秋冬は同時期に、業界・職種・企業研究セミナー等の機会も数多く設けられます。その後春休みから新年度にかけて、本格的な説明会、エントリーシート等の提出、適性試験、面接といったステップで採用選考が進んでいきます。

それと比較すると、外資系企業の動きは多様で、かつ早めであるという傾向が見られます。ポイントは、何といっても学部3年生・院1年生の夏に参加する「インターンシップ」等。外資系企業を志望する学生にとっては参加必須と言ってよいでしょう。

その理由は2つあります。
1つ目は、早期の段階で外資系企業の仕事や職場をリアルに経験することができるということです。志望する企業と自分自身に対する理解を深めるために、大変重要な機会です。

外資系企業のインターンシップ等は一般に数週間~数カ月と長く、社員と一緒に本格的なビジネスを体験するプログラムが多い傾向があります。それに伴い、業務上で何らかの成果を上げることが求められたり、成果発表の機会が設けられたりすることもあります。内容はハードですが、期間中のさまざまな体験を通して入社後にやってみたい仕事のイメージを明確にすることはもちろん、自分の強みを活かしてどのような貢献ができそうなのか、足りない知識やスキルはどんなものか、働き方や風土は自分に合っているか、などをしっかりと考えることができます。

2つ目は、夏のインターンシップ等への参加によって、その後の選考プロセスが優遇される場合があることです。

前述のように、外資系企業のインターンシップ等ではある程度の期間、社員と学生が一緒に業務にあたります。ということは、企業はインターンシップ等の期間中ずっと、参加学生の仕事ぶりやその成果、普段の言動などを観察し、評価をすることができるということです。企業にとってインターンシップ等は、数回の面接では見極めにくい学生一人ひとりの真の姿を確認できるという意味で大きな役割を果たすのです。

さらに言えば、企業が採りたい学生を夏の段階でピックアップできる、ということにもなりますね。実態としては、インターンシップ等で高評価だった学生にはそのまま内々定を出す、という企業もあるほどです。

以上の理由から、外資系企業を志すのであればぜひ夏のインターンシップ等に挑戦していただきたいと思います。

なお、外資系企業の夏のインターンシップ等は日系企業のそれよりも前倒しで募集が始まり、申し込み締め切りも早いことが多いので注意してください。また、本番さながらの選考(書類、面接、筆記等)が課されることも多いので、その対策もしなければなりませんね。3年生の4月以降、早期に情報を収集して行動し、波に乗り遅れないようにしましょう。

それから、夏のインターンシップ等に続くスケジュールも日系企業よりも前倒しで進むことが多いので注意してください。選考のフローとしては書類選考や面接の他、オンラインでのグループディスカッションを行う企業も見受けられます。

外資系企業の就活に関する情報源としては、各企業のホームページ(採用情報)や大学のキャリアセンターのほか、株式会社キャリタスのバイリンガルのための就職サイト「CareerForum.Net 」をチェックするのも良いでしょう。

外資系企業で働く、その実態は?

では、外資系企業での労働環境などはどうなっているのでしょうか。

鈴木孝嗣さんの著書「外資系企業で働く-人事から見た日本企業との違いと生き抜く知恵-」(労働新聞社、2018年)によると、外資系企業と日本の伝統的大企業では次のような違いがあるとのことです。

この表からは、外資系企業の特徴として以下のようなことが読み取れますね。

  • ・実力とパフォーマンス(成果)次第では高収入が見込める。
  • ・給与水準が高いぶん、福利厚生はそこまで手厚くない。
  • ・人的流動性が激しい(自分がやりたい、あるいはより活躍できる仕事があれば転職をいとわない人が多い)。
  • ・逆に、事業計画上不要になったり個人のパフォーマンス(成果)が振るわなかったりすれば、人員調整(リストラ)の対象となってしまう。

私も3名の外資系企業勤務経験者に話を聞いてみました。3名の話に共通していたことを4つ紹介します。

1つ目は、「年功序列や男女の差はない。そこが魅力!」ということ。評価は基本的に現場の上司(会社によっては同僚や部下に評価されることも)が行い、若くても優秀で成果を上げる人材であれば、本人との話し合いの上でどんどん昇進させて、次代のリーダーとして育てます。異動希望やキャリアデザインに関しても、上司と個人が話し合いをして決めていきます。

2つ目は、有給休暇の取得や残業の状況について。これは「人それぞれ」で、業績を上げたいので残業や休日出勤をしてがんばるという人もいれば、プライベートを優先してやらない人もいます。それぞれに課せられた成果を出しさえすれば、労働時間の長短は問題ではないということなのでしょうね。

3つ目は、英語について。話を聞いた全員が「業務上必須なので、非常に重要!」と声を揃えました。ただ、外資系企業のタイプによって英語を話すシーンや求められる英語のレベルに違いがあるようです。

日本法人の場合は、実はオフィス内で英語を使う頻度はそれほど高くありません。しかしオンライン会議や海外出張で外国籍の社員と話す機会が頻繁にあるので、常にビジネス英語のスキルを上げる努力をする必要があります。TOEICのスコアならば800点は欲しいところです。

一方、外資系金融機関の日本支社では英語が社内公用語の場合もあり、外国籍の社員とはもちろんのこと、日本人同士ですら日常的に英語でディスカッションをするような環境になります。すなわち、非常に高い英語力を求められるのです。

4つ目は、「自分の意見を持ち、発信することの大切さ」。外資系企業ではどんな若手であろうが、上司に自分の意見をしっかりと伝えることが求められます。もし会議で発言をしなければ「仕事をしていない」「能力がない」認定をされてしまうのです。外資系企業で働く上で、主体性やコミュニケーション力がいかに大切であるかがわかりますね。

日系企業とも比較検討してみよう

こうしてみると、外資系企業は意欲が高く実力のある人にとってはチャレンジングでワクワクする環境ですね。しかし一方では、常に成果を上げ続けていかねば雇い続けてもらえない厳しさがある、ともいえそうです。

また、新卒で「外国企業そのもの」タイプの外資系企業に入社してしまうと、日本独自のビジネスのマナーや常識を吸収できないままになってしまう懸念もあります。

以上のことから、就職活動を進める際にはいきなり外資系企業一本に絞らずに、いくつかの日系企業も候補に含めてみることをお勧めします。秋冬に行われる日系企業のインターンシップ等に参加した上で、外資系企業との比較検討を行ってみるのもよいと思います(実は日系企業のメーカーや商社などにも、グローバルに活躍することができる環境がありますよ)。

また、日頃から留学生など身近な外国人の方と積極的に交流し、コミュニケーション力のアップや異文化理解の深化を目指していくこともおススメです。ここで磨いた力は、社会に出てから必ず役に立つことでしょう。

PROFILE

濱野 裕貴子
キャリアコンサルタント・公認心理師・ワークショップデザイナー
大学卒業後、教育系出版社に入社。通信教育の先生方のマネジメントを中心に、キャリアインタビューや機関誌の編集などに携わる。業務を通じて感じた「同じ仕事をしているにも関わらず働く理由や価値観の違いが出るのはなぜか」という問題意識から、「キャリア」に興味を持つように。14年間の勤務後独立し、以後、大学ではキャリアカウンセラーや非常勤講師、企業では研修講師として、学生や若手社会人のキャリア支援に当たってきた。演劇や落語、お笑いなどのパフォーミングアーツに触れることが大好きで、身体表現を使った自己理解のワークショップなども手掛けている。筑波大学人間総合科学研究科生涯発達専攻カウンセリングコース博士前期課程修了(カウンセリング修士)。

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