裁量労働のみなし制(裁量労働制)のメリットと注意点とは?【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2023.10.24
前回に引き続き、今回も「労働時間」について、お話したいと思います。
前回、「ワーク・ライフ・バランス」や「多様で柔軟な働き方」の実現に向けた取組みとして、フレックスタイム制と変形労働時間制について見てきましたが、今回は裁量労働制について確認してみましょう。
裁量労働制とは?
労働時間の算定は、実際に労働した時間(実労働時間)によるのが原則です。前回のテーマであったフレックスタイム制・変形労働時間制も実労働時間が基準となっています。
他方、労働基準法は実労働時間にかかわらず、「一定時間労働したものとみなす」という例外的な制度について定めています。
1つは、「事業場外労働のみなし制」というものです。例えば、外回りの営業担当者、新聞・雑誌の記者など、基本的に会社の外で仕事をしている人達の労働時間について、会社が管理・算定することが難しい場合があります。そこでこのような場合、実際の労働時間に関係なく、一定時間労働したものとみなすという制度です。
2つ目は、今回のテーマである「裁量労働のみなし制(裁量労働制)」というものです。
例えば、「研究者、プログラマー、新聞・雑誌の記者・編集者、デザイナー、テレビ番組・映画のプロデューサー・ディレクター」等の仕事を思い浮かべてみてください。このような人達の場合、労働時間が長ければ長いほど評価されるというわけではありません。このような職種は、労働時間(労働量)よりもむしろ労働の成果・質が評価の対象となります。また実際の仕事の進め方についても、労働者自身に大きな裁量が認められています。
そこで、このような労働者については、会社が通常の労働時間の管理・算定方法を当てはめることは適当でないことから、実際の労働時間に関係なく一定時間労働したものとみなすことができるようになっています。これを裁量労働制といいます。
例えば、会社の所定労働時間が8時間の場合、裁量労働制の下では、実際に7時間しか仕事をしていなくても、また反対に9時間仕事をしたとしても、いずれも「8時間仕事をしたとみなされる(みなし労働時間)」ことになります。
そして、裁量労働制には、①先程お話した研究者、プログラマー等、一定の専門業務に従事する労働者を対象とする専門業務型裁量労働制というものと、②「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に従事する労働者を対象とする企画業務型裁量労働制というものがあります。
裁量労働制のメリットや注意点
労働者から見た裁量労働制のメリットとしては、仕事をするにあたり会社が定めた出退勤時間や勤務時間に縛られることなく、労働者自身の裁量で仕事を進めることができるため、自由な働き方が可能になります。また、仕事を効率的に進めることができれば、実際の労働時間を短縮することも可能になります。
他方、注意しなければならないのは、時間の管理を上手にできないと長時間労働となってしまう可能性があることです。これは裁量労働制を採用する会社側のメリットとして、残業代の発生を抑えられるということと表裏の関係にあります。先程の例で言うと、みなし労働時間8時間を超えて、実際は9時間仕事をしたとしても、裁量労働制の下では、実際に超過して仕事をした1時間分の残業代は発生しないことになります。
もっとも、このようなお話をすると、「裁量労働制の下では、残業代は一切出ないのか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そうではありません。
裁量労働制といっても、あくまで労働基準法の枠内で認められている制度です。そのため、みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間まで、1週40時間まで)を超えている場合には、法定労働時間を超えた部分について残業代が発生します。また、法定休日の労働や深夜労働(午後10時から午前5時までの間の労働)に対しても、通常どおり割増賃金が発生することになります。
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PROFILE
英明法律事務所
福島 一代弁護士
パワハラ・セクハラ、労働条件、給料・残業代請求、不当解雇、労災認定など、労働者が抱える様々な法的問題を解決しています。人事労務分野の活動も幅広く行っています。