気をつけないと怖い固定残業代制【弁護士が答えます】

就活ノウハウ

公開日:2023.08.29

今回は「固定残業代制」についてご紹介します。この記事を読む皆さんは、「そもそも固定残業代制って何?」という疑問をお持ちだと思いますので、まず簡単にご説明します。

固定残業代制とは何?

固定残業代制をひとことで言えば、「労働者が実際に何時間残業をしたかにかかわらず、月々固定の残業代を支払う」という制度です。例えば、月20時間分の固定残業代制が定められている場合、労働者が実際には10時間しか残業をしていなくても、20時間分の残業代を払ってもらえるということです。なお、仮に労働者が25時間の残業をした場合、会社は、固定分を超える5時間分の残業代を払わなければなりません。

ここまで読むと、「残業をしなくても残業代がもらえるなんて、固定残業代制はすごく得じゃないか」と思われることでしょう。しかし、気をつけないと、固定残業代制によって不利益を被ることもあるのです。

固定残業代制の怖さ・その1

固定残業代制は、求人広告の見栄えをよくするために利用されることがあります。ひとつ簡単な例を考えてみましょう。

皆さんだったら、次の①・②の求人のうち、どちらに魅力を感じますか?

①基本給25万円・残業代は別途支給
②基本給30万円(固定残業代30時間を含む)

「基本給が高い②の方が魅力的」と思う方は多いのではないでしょうか?ところが、きちんと計算をしてみると、②の方が魅力的だとは言い切れないのです。

①・②ともに1か月の所定労働時間が同じ(一般的な数値として、173時間と仮定しましょう)だとした場合、1時間あたりの賃金単価は次にようになります。

①の場合:1時間あたりの賃金単価は1,445円
②の場合:1時間あたりの賃金単価は1,424円

実は、一見給料が低く見える①の方が賃金単価は高いのです。①の場合で月30時間の残業をした場合、もらえる給与は約30万4,000円です。

このように、固定残業代制は、見かけ上の給与を高くするために利用されることがあります。もし②の例で、「固定残業代40時間を含む」などとされた場合、①との実質的な賃金格差はもっと大きくなります。

固定残業代制の怖さ・その2

もうひとつ、固定残業代制には怖さがあります。

それは、固定残業分として定められた残業時間を超えて働いても、会社から「うちは固定残業代制だから」などと言われ、超過分の残業代を払ってもらえない例があることです。

もちろん、このような会社の対応は労働基準法違反です。本来払うべき給与を払わないわけですから、当然違法です。

皆さんは「まさか、そのように平然と違法行為をする会社があるはずはない」と思われるかもしれませんが、現実には、このような違法行為をする会社は山のように存在します。

理屈でいえば、「残業代を払ってもらうことは当然の権利なのだから、会社の違法行為はきちんと指摘すればよい」という話なのですが、実際にそのような会社で働くと、勇気をもって指摘することは難しいという方も多いかと思います。

固定残業代制のメリット

ここまで、固定残業代制の怖さばかりを説明してしまいました。しかし、固定残業代制そのものは決して悪いものではありません。制度を悪用しようとしなければ、固定残業代制は会社・労働者双方にとってメリットがあるものです。

会社にとっては、固定残業代制を導入することによって、労働者の月々の残業代を逐一計算する手間から開放されます。また、労働者にとっては、固定分の残業時間に満たなくても決まった残業代が払われるというメリットがあります。

就活の段階で、対象となる会社が固定残業代制を適切に運用しているか否かを見抜くことは難しいのですが、固定残業代制を悪用された場合の怖さは、皆さんの頭にとどめておいていただきたいと思います。キャリタス就活では固定残業代制と記載のある企業に対しては「時間、金額、超過の場合支給の旨」を明記しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

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PROFILE

定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転(転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。

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