【薬学生】業界の最新動向を学ぼう|ドラッグストア

業界・職種・企業研究

公開日:2023.04.03

薬学系の学生が活躍できる業界は、製薬会社をはじめ多岐にわたります。医薬品の需要増加に伴い市場が拡大しているドラッグストアや調剤薬局、ここ10年ほどで急激に成長しているCRO・SMO業界など、幅広い選択肢があるといえます。各業界の動向や今後の動きについて研究し、まずは視野を広げていきましょう。

業界規模7.3兆円を超えるドラッグストア業界

私たちの身近にあり、ヘルスケアサービスを提供してくれるドラッグストア。ドラッグストア業界は2000年以降、店舗数、売上ともに成長を続けています。経済産業省の調査によると、2021年におけるドラッグストアの店舗数は17,622店舗、売上高は7.3125兆円と報告されています。

顧客獲得をかけて独自の路線を確立する
大手ドラッグストアチェーンの取り組み

ドラッグストア業界は、消費者の多様なニーズに応える形で規模やサービスを拡大させています。

商品別販売額をみると、医薬品(調剤医薬品・OTC医薬品)は20.5%、食品が30.6%、日用品・トイレタリーが24.6%ととなり、医薬品よりも食品や日用品類の売り上げが高まっています。

このことから、ドラッグストアは、私たちの生活やニーズに合わせてさまざまなサービスや商品を提供できるよう変化し続けており、今や、消費者のヘルスケアをはじめとする生活を支える重要な拠点として、 欠かせない存在になりつつあることがわかります。

出典:経済産業省「2021年 商業動態統計年報」

消費者のニーズに寄り添い、売上・店舗数を伸ばし、成長基調にあるドラッグストア業界。グループ間の競争に加え、他業種の参入などによりほかの小売店との競争が激しさを増しており、大手企業では顧客を獲得し、競争力を高めるための独自の戦略が繰り広げられています。

株式会社マツモトキヨシホールディングス株式会社では、円安やビザの緩和などの影響により増加した訪日外国人によるインバウンド需要に応えるために、2014年10月以降、外国人観光客に対する免税商品の範囲を拡大。それに伴い、首都圏・関西圏のほか全国規模の店舗121店舗に免税カウンターを設置し、外国人観光客という新たな顧客の獲得に乗り出しました。今後も引き続きインバウンド需要をとらえ、きめ細かいマーケティング戦略で訪日外国人観光客のニーズに応えていくと考えられます。

また、他業種から参入した小売店との差別化対策に加え、国策による地域包括ケアシステムの推進を受けて、セルフメディケーションの機運が高まったことから、ドラッグストアならではの医療分野に関する専門性を高める作戦に出る企業もあります。

ウェルシアホールディングス株式会社では、「ウェルシアモデル」として「ドラッグ&調剤」「カウンセリング」「介護」を強化し、専門性を高めた調剤併設型ドラッグストアを展開。さらに24時間営業にも取り組み、利便性や安心感を高めることで「かかりつけ薬局」として顧客の信頼感を勝ち取っています。

これまでは、スギホールディングス株式会社が2007年に、埼玉県および群馬県を中心に97店舗のドラッグストアを抱える飯塚薬品を子会社化するといった同業種内における合併やグループ化を繰り広げていましたが、最近では、大手ドラッグストアチェーンが中小規模のドラッグストアを子会社化する動きだけではなく、調剤薬局、スーパー、コンビニエンスストアといった業界の垣根を越えた他業界との再編も行われています。

ココカラファインは、中京地域を中心に事業展開するユニーグループのサークルKサンクスと業務を提携。2009年の改正薬事法により、コンビニエンスストアなどでも一般医薬品の販売ができるようになったことを受け、他業種が市場に参入することによって激化する競争に対応。既存のドラッグストアをベースにし、ドラッグストアとコンビニの機能を備えた新業態店の開発を進めることで、競争力を強化させました。

今後、各社とも顧客を獲得し、成長を維持するために、M&Aによる規模の拡大、医療などの専門分野の強化、インバウンド需要への対応といった動きを活発化させていくことが推測されます。

セルフメディケーション推進が追い風に

2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」のなかで「国民の健康寿命の延伸」がテーマに盛り込まれました。その解決策の1つに「セルフメディケーションの推進」が挙げられ、健康増進、予防の支援を担う市場を育成する必要性が提起されました。

この役割を担う市場の一角を支えるのがドラッグストアです。

ドラッグストアに期待されることは、薬剤師をはじめ、登録販売者、管理栄養士などの医療従事者が常駐している強みを生かし、健康増進・予防のための運動や食事の指導を行う、簡易な検査を実施するといった専門知識を必要とするサービスを提供して、地域住民の健康に寄与し、セルフメディケーションの推進を牽引することです。

さらに、流通経済研究所が実施した調査によると、ドラッグストア利用者が利用の際に重視するポイントとして「自宅や勤務先から近いこと」「夜遅くまで営業していること」を挙げています。こうした利用者のなかには、利便性を理由にドラッグストアの調剤薬局を利用する患者さんもおり、調剤併設型のドラッグストアには、さまざまな医療機関からの処方せんが持ち込まれます。つまり、これからの調剤併設型のドラッグストアは、面型の薬局として、患者さんの服薬状況に関する情報を一元管理する、まさにかかりつけ薬局としての機能を果たすのに最適なポジションにあると言えます。

今後は、地域住民のニーズに対して地の利で応えつつ、ドラッグストアならではの「医療従事者の専門知識」を生かしてセルフメディケーション推進の牽引役になるとともに、「かかりつけ薬局」としての機能を発揮することで、地域で暮らす人たちの健康を支える健康ステーションとしてますます飛躍していくことが期待されます。

薬だけではなく、すべての顧客の健康を支えるために幅広い知識を

これからドラッグストアで働く薬剤師に求められることは、薬のことはもちろん、健康維持・予防・改善のために、食事療法や運動療法などの幅広い知識を蓄えることです。
また、高齢化が進めば、ニーズに応じて介護サービスや在宅医療に参入することもあるでしょう。
ドラッグストアは、病気の人だけではなく健康な人も足を運ぶ場所です。その店舗に訪れるすべての人の健康を守るために、薬学だけではない幅広い知識を貪欲に学んでいける人にとって、ドラッグストアはやりがいを感じられる場所となります。

キーワード

セルフメディケーション


WHOによると、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」こと。その基本は、日常的な健康管理のため規則正しい生活を心がけることだが、必要に応じて食事や運動などの生活習慣を見直し、改善することも大切である。

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