【薬学生】業界の最新動向を学ぼう|CRO・SMO

業界・職種・企業研究

公開日:2023.04.03

薬学系の学生が活躍できる業界は、製薬会社をはじめ多岐にわたります。医薬品の需要増加に伴い市場が拡大しているドラッグストアや調剤薬局、ここ10年ほどで急激に成長しているCRO・SMO業界など、幅広い選択肢があるといえます。各業界の動向や今後の動きについて研究し、まずは視野を広げていきましょう。

医薬品開発のスペシャリストが集まるCRO・SMO

新薬の開発はいくつもの段階に分かれて実施されており、基礎研究、非臨床試験を経て、人を対象にした臨床試験のステップへと進みます。そのなかで臨床試験、いわゆる治験は、製品化を目指す医薬品が人に対して安全かつ有効であるかの検証を行うための試験で、「GCP(Good Clinical Practice)」という国によって定められた厳しい基準に則り実施されます。

治験は製薬会社から医療機関に依頼されることによって行われますが、その開発業務を製薬会社に代わって行う企業があります。それがCROとSMOです。ともに治験に関わる企業で、CRO(Contract Research Organization:開発業務受託機関)は、製薬会社の医薬品開発にかかる治験業務(臨床開発)を受託・代行する企業、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)は医療機関が適正で円滑な治験が実施できるよう、治験業務の支援を行うことを役割とする企業です。両者とも、治験に関わる企業ですが、その大きな違いはCROでは製薬メーカーを、SMOでは治験実施施設すなわち、医療機関をサポートし、さまざまな業務を代行する点にあります。

製薬会社や医療機関から、CROやSMOへのアウトソーシング化は、1998年4月に新GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)が施行されたのをきっかけに急速に進みました。この新GCPにより、これまでに比べて治験実施のための基準が非常に厳しくなったためです。製薬会社では、膨大な労力と時間を要する臨床試験・製造販売後調査の業務を外注する動きを活発化させました。CROやSMOと手を組むことにより開発効率を高め、より早く新しい薬を世に送り出すというふうに新薬開発の流れがシフトしてきたのです。

SMO業界の2020年度における総売上高は、日本SMO協会によると312億4,507万円 (全21社)。一方、CRO業界の2021年度における総売上高は、日本CRO協会によると2.256億円(31社) 。市場拡大を続けています。

今後も積極的な従業員採用がみられ、業界の拡大が期待される

製薬企業では、数千億円以上の売上が見込まれる生活習慣病領域などの医薬品が出揃ったことで、新たな疾患領域における新薬開発を進める動きが出てきており、研究開発費の増加が見込まれます。それに伴い、医薬品開発のプロジェクト数が増加することで、効率的な新薬開発を行い、いち早く販売へ結びつけることを目的に、CRO、SMOへのアウトソーシングが加速すると推測されます。

日本CRO協会によると、2021年の時点で会員となっているCROの企業は45社と報告されており、シミック株式会社、イーピーエス株式会社、IQVIAサービシーズ ジャパン株式会社、パレクセル・インターナショナル株式会社、株式会社新日本科学PPDといった企業が、CRO業界の大手企業として業界をリードしています。

CROでは、顧客である製薬メーカーの要望に応え、競争に勝ち抜き成長力を上げるため、グループ力の強化や海外展開を進める動きがみられます。シミックホールディングス株式会社では新薬誕生までにかかる業務を総合的に強化。CRO事業のほか、SMO事業、医薬品マーケティング・営業を支援するCSO事業、医薬品製造を支援するCMO事業など、トータルで製薬企業を支援する動きを強めることを通し、売上高の伸長を目指しています。

SMOは現在約30社。業界最大手は2016年1月に、株式会社綜合臨床ホールディングスと経営統合したEPSホールディングス株式会社 の株式会社EP綜合。次いで、株式会社アイロムグループなどがSMO業界を牽引しています。

今後、ますます加速していくアウトソーシング化に備え、各社とも顧客満足度向上を目的に、サービスの質を高める、広げるといった戦略に打って出ることで売上を伸ばし、成長力を高めていくことが予想されます。

CRO、SMO業界で、医薬品開発に携わる

CRO業界では売上高の増加に伴い、従業員数も増加。日本CRO協会の調べによると、2021年度は、計19,295人(31社)がCRO協会会員企業で働いています。今後、製薬企業からのアウトソーシングが増し、売上高が伸びるにつれて、CRO業界のみならず、SMO業界でも新卒を含めた従業員の採用が活発化すると予想されます。

このように、今後従業員の採用の活発化が見込まれているCROやSMOには薬学部卒業の学生が活躍できる場が多くあります。

臨床開発モニターとも呼ばれるCRA(Clinical Research Associate)は、治験開始時には、該当施設の適格性評価や、治験責任医師の選択を実施。試験開始後は治験実施施設を訪問し、治験に関する契約、モニタリング業務、症例報告書の回収・確認、治験終了の手続きなどを行います。治験実施施設の担当医と上手につきあっていく必要があるため、コミュニケーション力が求められる職種です。

データマネジメント(DM)業務では、回収されたCRF(Case Report Form:症例報告書)の内容を入力して電子データ化したり、CRFへの記載事項をチェックして、誤りがある場合に治験依頼者(製薬メーカー)と社内モニターへの伝達を行い、統計解析できるデータをつくり上げていきます。CRFの確認作業の際には、検査値データ、使用禁忌薬などのチェックも含まれるため、薬学部で学んだ知識を生かせます。

統計解析業務(ST)では、生物統計を用いて治験データを解析し、新薬の効能、安全性などを統計学的に検証します。そのほか、統計解析計画の立案、解析計画書の作成、データ解析、解析報告書の作成も行います。

英語を生かしたい薬学生には、メディカルライターという仕事があります。メディカルライターは、医薬品、医療機器の開発計画から承認までに必要となる資料、申請書などの書類の作成や翻訳業務を行います。最新かつ専門的な知識が必要になる点が、仕事の難しい点ですが、それがやりがいにもつながります。

またそのほかにも、品質保証(QA)や品質管理(QC)などへのキャリアチェンジも可能です。

SMOに就職すると治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)として、また、治験に関わるチームの一員として医療機関で活躍することになります。CRCは、治験実施施設である医療機関で、治験責任医師や分担医師の指示のもと、医学的判断を必要としない業務や、治験に関わるさまざまな事務的な作業を行うなど、治験実施施設で治験に関わる人たちのサポートを行います。将来的には、CRCの領域でスペシャリストを目指したり、後輩CRCの育成、組織マネジメント、CRCの教育計画の策定などのキャリアパスがあります。

いずれの業務も薬学部で学んだ知識を存分に生かせるばかりではなく、新薬開発に関わることで、多くの患者さんを笑顔にすることができ、非常にやりがいのある職種だと言えます。

キーワード

GCP


Good Clinical Practiceの略で、国が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のこと。新薬の有効性と安全性を調べる治験を実施するにあたり順守すべき規準が示されている。

CRO


Contract Research Organizationの略で、開発業務受託機関のこと。 製薬会社の医薬品開発にかかる治験業務(臨床開発)を受託・代行することを業務とする企業である。

SMO


Site Management Organizationの略で、治験施設支援機関のこと。 医療機関が適正で円滑な治験が実施できるよう、治験業務の支援を行うことを役割とした企業である。

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