【業界を徹底解剖】メーカー業界の魅力・求められる資質とは?
業界・職種・企業研究公開日:2024.05.22
メーカー(製造業)は国内総生産において2割程度を占めており、日本の経済を大きく支える業界といっても過言ではありません。社名や商品名はテレビCMや店頭などで目に触れる機会も多く、就活生になじみ深く人気のある業界のひとつです。
本記事では、メーカー業界の基本的な業務内容や業界動向、働く魅力、求められる人材像についてわかりやすく解説しますので、ぜひご覧ください!
そもそもメーカーとは?メーカーの仕組みを解説
■メーカーとは?
メーカーとは、原材料を仕入れ、それを加工して新たな製品を生み出し、市場に供給する企業のことです。プロセスは、研究開発から設計、製造、品質管理、そして販売に至るまで多岐にわたります。特に日本は「ものづくり」の国として世界的に知られ、国内メーカーは精密機器、自動車、電子機器など多様な製品を生み出しており、日本経済の重要な柱となっています。
■扱う製品によるメーカーの4分類
メーカーは扱う製品の種類によって、「素材メーカー」「部品メーカー」「加工・組立メーカー」「自社生産・加工メーカー」の4つのカテゴリーに分類されます。
①「素材メーカー」
化学素材、樹脂、鉄鋼、非鉄金属、紙、ゴム、ガラスなど、製品製造の基盤となる基本素材を提供する企業を指します。
(例:化学メーカー、鉄鋼メーカーなど)
②「部品メーカー」
部品メーカーとは、自動車や家電製品、電子機器などの完成品を組み立てる際に必要な各種部品を製造・供給する企業のことを指します。これにはエンジン部品、電子基板、各種センサーなどが含まれ、製品の性能や品質を左右する重要な役割を担っています。
(例:自動車部品メーカー、電子部品メーカーなど)
③「加工・組立メーカー」
部品メーカーが提供する部品を基に、製品の加工や組み立てを行う企業のことを指します。
(例:自動車メーカー、食品メーカーなど)
④「自社生産・加工メーカー」
素材の研究・開発から生産、最終製品の加工までを全て自社で行う企業のことを指します。原料の調達から製品化に至るまでのプロセスが企業内部で完結し、最終的な製品を直接消費者へ提供します。
(例:化粧品メーカー、医薬品メーカーなど)
■販売先による2つのタイプ
またメーカーは、製品の販売先によっても、以下の2つのタイプに分類できます。
①BtoB(Business to Business)
企業向けの製品を作っている企業
例:原料や副原料を加工して企業に販売する鉄鋼メーカーや化学メーカーなどの素材メーカー、生産設備をつくって企業に販売する機械メーカーなど
②BtoC(Business to Customer)
一般消費者向けの製品を作っている企業
例:店頭で消費者が購入できる製品をつくっている食品メーカーや化粧品メーカー、自動車メーカーなど
私たちが日常生活の中で消費するモノを生産・開発する「BtoC」のメーカーは、消費者との直接的な関わりを持ち、なじみがあるため就活生にとっても人気の高い企業が多くみられます。
一方で、「BtoB」のメーカーは、日々の生活で直接的な接点は多くはありませんが企業独自の技術や特許、国際市場での競争力など業界内で大きな価値を持ち、世界的に注目されている企業も数多く存在します。
大手メーカーと業界の動向
ここでは、大手のメーカーや業界全体の動向について見ていきましょう。日本には世界でも名が知られている有名企業がたくさんありますが、ここでは代表的な企業を紹介します。
■代表的な大手メーカー企業
それぞれ異なる分野で世界をリードする日本の大手メーカー3社を紹介します。
【トヨタ自動車】
世界最大の自動車メーカーの一つで、多岐にわたる車種を製造販売しています。主力商品には、燃費効率が高いハイブリッド車「プリウス」や、燃料電池自動車「MIRAI」があります。また、高級車ブランド「レクサス」も展開。トヨタは、持続可能なモビリティ社会を目指し、自動運転技術やコネクテッドカーサービスの開発に注力しています。グローバル市場での広範な生産・販売ネットワークも特徴です。
【ソニー】
エレクトロニクス、ゲーム、エンターテインメント分野で広く知られる日本の大手企業です。主要製品には高品質なオーディオ機器、デジタルカメラ、テレビ、そしてゲーム機の「プレイステーション」シリーズがあります。また、ソニー・ミュージックエンタテインメントやソニー・ピクチャーズエンタテインメントを通じて、音楽や映画の制作・配信も行っています。さらに、人工知能やロボティクス分野でも活動を展開しています。グローバルな事業展開と幅広い製品ラインナップがソニーの大きな特徴です。
【パナソニック】
創業者の松下幸之助氏の経営哲学を継承し、革新的な製品開発で世界各国に事業を展開しています。家庭用電化製品、産業機器、AV機器など多岐にわたる製品を提供しています。特に環境配慮型の製品に力を入れており、太陽光発電システムや家庭用蓄電システムを通じて再生可能エネルギーの普及に貢献しています。
■メーカー業界の動向
かつて「ものづくり大国」と呼ばれた日本ですが、近年の状況は大きく様変わりしています。続いて、メーカー業界の動向を見ていきましょう。
・国際競争力の低下
日本の製造業の国際競争力は低下傾向にあり、2023年公表のIMD(国際経営開発研究所)の「世界競争力年鑑」で日本の競争力総合順位は、過去最低の35位となりました。
バブル期の終焉を迎えた1992年まで1位を維持しており、1996年までは5位以内の高い順位でしたが、1997年の金融不安以降は下降が続き、2019年には30位以下に転落しています。
引用元:IMD「世界競争力年鑑」各年版より三菱総合研究所作成
・世界情勢の変化
新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ紛争などさまざまな世界情勢の変化により、製造業を含む多くの産業のサプライチェーンのありかたについて変革を強いられました。その結果、輸出の減少や受注の落ち込み、国内生産・販売の低下をもたらしました。
・半導体などの素材不足
半導体不足は2020年秋以降、世界的な問題となり、特に日本の自動車業界に大きな影響を与えています。スマートフォンなどの高性能半導体の増加した需要を優先した結果、自動車用の半導体生産が後回しにされています。この影響は製造業全般に及び、素材不足は深刻な問題となっています。
高齢者は33万人増加しました。そのため産業用ロボットや生産管理システムの導入、テレワークの導入など、労働環境の改善や人材確保が急務といえるでしょう。
メーカーで働く魅力
強い逆風にさらされているメーカー業界ですがそれでも日本の主幹事業であるため、就活生における人気業界ランキングでは上位の業界です。その理由として比較的、安定した職場環境や手厚い福利厚生、また製品が市場に出る過程に関わることで、ひとつの製品が形になる喜びを実感できる点が魅力的です。そのほかには以下のような魅力が挙げられます。
・革新的な製品や技術に関わる機会:
最先端の研究開発に参加し、未来を形作る製品やサービスの創造に直接貢献することができます。
・グローバルに活躍するチャンス:
世界各国のチームやクライアントとの接点があり、多文化なコミュニケーションを通じて、国際的な視点とビジネススキルが身につきます。
・実践的な問題解決スキルの習得:
実際の製造現場での課題に取り組みながら、効果的な問題解決法を学び、専門技術を磨くことが可能です。
・製品が市場に出るまでのプロセス全体に携われる:
アイデアから市場導入まで、製品のライフサイクル全体を見ることで、メーカー業界の全体像を理解し、総合的な戦略立案など多角的な分析力が培われます。
メーカーに求められる資質
メーカーに求められる資質を、「文系職種」と「理系職種」に分けてご紹介します。
■文系職種に必要な資質(主に製品の企画から販売等の業務)
・市場分析やマーケティング戦略の策定:
製品の成功は市場のニーズと照らし合わせて計画される必要があるため、効果的なマーケティング戦略を立てることが重要です。競合他社との差別化を図るために、市場動向を正確に把握し戦略を練る能力が求められます。
・顧客ニーズを理解し、製品開発へ反映させる力:
顧客の要望や市場の要求を理解し、それを製品設計に反映させることで、より市場に受け入れられる製品をつくることができます。このプロセスは、製品が市場で成功するための鍵を握っています。
・コミュニケーションスキル:
ひとつの製品を作るためには企画から販売まで、多くの部門と連携する必要があります。効率的なコミュニケーションは、プロジェクトをスムーズに進行させるために不可欠です。
・柔軟な思考力:
市場の変動や予期せぬ問題に迅速に対応するためには、柔軟な思考が求められます。新しいアイデアを創出したり、課題に対し創造的なアプローチができる能力は、市場での競争優位を保つために重要です。
■理系職種に必要な資質(主に製品の設計、開発等の業務)
・専門的な技術知識とスキル:
製品の設計、開発、改善を行うには、関連する技術や科学について深い理解と学習意欲が必要です。
・問題解決能力:
製品開発過程で遭遇するさまざまな問題を克服するためには、論理的かつ柔軟な発想を持った問題解決スキルが不可欠です。これにより、プロジェクトの遅延を避け、コストを抑えることができます。
・革新的なアイデアの創出:
技術革新は製品の差別化と市場でのリードを確保するために重要です。新しい発想や改善案を生み出すことが、企業の成長を支える鍵となります。
・プロジェクト管理:
製造の現場では複数のプロジェクトを同時に管理し、進めていくことも珍しくありません。時間とリソースを最適に配置する能力が求められます。これにより、プロジェクトの進行効率が向上し、期限内に品質の高い成果を提供することが可能になります。
・データ分析と解釈:
製品に関するさまざまな検証データを解析し、有用な情報を抽出することで、製品の性能を向上させるための洞察を得ることができます。また、これにより製品の品質保証や改善点の特定が可能になります。
ただし、メーカー業界の中でも、企業ごとに仕事内容は異なるため注意が必要です。企業の公式サイトなどでしっかりと確認しましょう。
まとめ
メーカー業界は日本経済の重要な柱であり、それゆえ専門的な知識や技術の習得が必須です。この業界では「ものづくり」に必要な創造性や行動力だけでなく、製品を企画し、市場に投入するまでの各部門との調整力も求められます。
メーカー業界に就職したい方は、自分の興味がどの分野に向いているか、どういった役割でものづくりに携わりたいのか自己分析を徹底し、日々変化する市場動向や技術革新を多面的な研究を行いながら、メーカー業界のキャリアプランを描いていきましょう。
PROFILE
桜川りえ
国家資格キャリアコンサルタント
短大卒業後、10回転職を経験。ライフステージに合わせた“柔軟な働き方”をいち早く実践。コンプレックスだった転職回数の多さを「強み」に変えてキャリア支援の道へ。2019年より都内私立大学にてキャリアカウンセラーとして従事し、現在はオンラインによるキャリア相談を実施。学生・女性支援を専門領域として活動中。正規・非正規雇用、業務委託などあらゆる働き方を経て、2021年5月個人事業主となる。同年11月、「HSP×転職」をテーマにKindle書籍を出版し好評を得る。2023年3月オンラインコミュニティ「就活サードプレイス」開設。「就活×保護者」をテーマにセミナー開催。「就活」を切り口に親子関係の問題に取り組んでいる。現役就活生の母。オンラインコミュニティ「就活サードプレイス」運営