商社業界を徹底解剖!業界の魅力や求められる資質とは?
業界・職種・企業研究公開日:2024.04.17
「商社」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?世界を舞台にしたビジネス、高収入の可能性など、華やかで魅力的な業界に感じられる方も多いことでしょう。本記事では商社業界の基礎知識や業務内容、業界動向、働く魅力、求められる人材像までわかりやすく解説します。「憧れ」だけではなく「商社」のリアルを知って業界理解を深めましょう!
商社業界の仕組み、仕事内容について
■商社業界とは?
商社とは、主に国内外の需要に対し、製品やサービスなどさまざまなものを供給する仲介業を生業にしている企業で、経済・産業において重要な役割を果たしています。
また商社は、大きく2つに分けられます。
「総合商社」:
総合商社は、原材料から製品までさまざまな商品を世界中で売買し、投資や開発にも携わる多角的なビジネスを展開しています。具体的には、資源開発、エネルギー、食料品、機械など幅広い分野で事業を行い、国際貿易の架け橋として機能します。これにより、世界各国の市場に必要な商品を供給し、経済の発展に貢献するとともに、新たな事業機会の創出の役割も担っています。
「専門商社」:
専門商社は、特定の業界や商品カテゴリーに特化し、深い専門知識と豊富なネットワークを活用して事業を展開します。これには、電子部品、化学製品、医療機器、食品など、特定分野での商品の輸入・輸出、卸売りが含まれます。専門商社は、製品の質や技術の進歩に精通しており、市場のニーズに応える新しい商品の開発や、技術的なサポートも提供し、業界内で重要な役割を果たしています。
■商社業界の仕事内容
商社の仕事内容を大きく分けると、以下の3つになります。
①トレーディング:
世界各地から商品や資源を調達し、国内外の市場に供給します。国際貿易の専門知識を駆使して、需要と供給のギャップを埋める役割を担います。
②事業投資:
新規事業の機会を見いだし、投資を行います。これには、資源開発プロジェクトや新たなビジネスモデルの創出が含まれ、長期的な収益の確保と事業の拡大を目指します。投資先企業の経営支援や企業買収も含まれます。
③事業企画・開発
市場のニーズを分析し、新商品やサービスの企画・開発を行います。顧客との密接な関係を構築し、さまざまなソリューションを提案・提供することで、事業の成長を促進します。
■意外と知らない「商社」と「メーカー」との違い
「商品の販売」という共通点から「メーカー」と混同されがちですが、違いをご存じでしょうか?大まかな違いは以下のようになります。
メーカー:「自社製品」を製造(商品企画、販売等)
商社:「他社製品」を流通(販路開拓、営業サポート等)
しかし、商社で「製造」を行う企業も存在するので、注意が必要です。業界や企業ごとの特色をしっかり調べて、違いを押さえましょう!
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商社業界の動向と「5大総合商社」を紹介
ここでは、今後の商社業界の動向や大手商社を紹介していきます。
■商社業界の動向をチェックしよう!
①市場規模の拡大
総合商社は、鉄鉱石や石炭等の資源高などを追い風に歴史的な利益水準となっています。資源価格上昇に加え、「非資源事業」の成長により好業績が続いています。
②「資源事業」から「非資源事業」へ
商社は、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みの強化や世界的な「脱炭素」への流れの中で、新たなビジネスモデルへの切り替えを迫られています。
資源事業:石油や金属などの天然資源の採掘・販売を主に行う事業。
非資源事業:食品、医薬品、デジタル技術など、資源以外の多岐にわたる分野での事業。
総合商社が非資源事業へ注力する理由は、資源価格の変動リスクを減らし、持続可能で安定した収益を確保するためです。また、非資源事業へのシフトは、社会や経済の多様なニーズに応える結果として広がってきた背景もあります。
③DX化(デジタルトランスフォーメーション)の促進
近年、さまざまな業界で「DX化」が注目されていますが、商社業界でも積極的に取り入れようとする動きがあります。
・ビッグデータの活用:
商社は取引の過程で膨大なデータを収集します。DX化により、このビッグデータをリアルタイムで分析し、市場の動向、顧客の需要など、さまざまなことをより正確に予測することが可能になります。
・AIによる意思決定支援:
人工知能(AI)技術を用いて、価格設定、在庫管理、リスク管理などの複雑な意思決定プロセスを自動化・最適化します。
・デジタルプラットフォームの活用:
商品やサービスを作って消費者に届けるまでの一連の流れを、関係者が情報を共有できるデジタルプラットフォームを作ることで、仕事がスムーズになり、コスト削減も実現できます。
④M&A(企業の合併・買収)の活発化
専門商社は専門知識に特化しており、その得意分野で高い専門性を保有する一方で、現在の日本の商社業界では一部の製品・サービスにおいて国内市場が飽和状態にあります。事業拡大や新規顧客の獲得、ブランド力強化、経営基盤の強化のために、M&Aが積極的に行われています。
■日本の5大総合商社
「ラーメンから航空機まで」の言葉で知られ、ありとあらゆる商材を手掛けるのが「総合商社」です。その総合商社の中でも、三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、丸紅、住友商事は「5大総合商社」と呼ばれています。(豊田通商、双日を含めて「7大総合商社」と呼ばれる場合もあります。)
【三菱商事】
1950年設立、国内に11カ所、海外に107カ所拠点を持つ総合商社。世界約1,700社のグループ会社と協働し、天然ガス、素材、化学、金属、インフラ、自動車、食品、消費財、電力、都市開発など幅広い事業を展開しています。単なる貿易会社ではなく、パートナーと協力し、世界中の現場で開発・生産・製造にも携わっています。
創業以来の社是である「三綱領」を拠り所に、公正で健全な事業活動を推進しています。
【伊藤忠商事】
1858年に初代伊藤忠兵衛が麻布(あさぬの)の行商で創業し、1949年に設立された総合商社。現在は世界61カ国に約90の拠点を持つ大手総合商社として、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において国内、輸出入および三国間取引を行うほか、国内外における事業投資など、幅広いビジネスを展開しています。
近江商人の経済哲学「三方よし」の精神を企業理念に掲げています。
【三井物産】
1876年に三井財閥の支援を受けて創業、1947年設立の歴史ある総合商社。世界62カ国に126拠点。金属資源、エネルギー、プロジェクト、モビリティ、化学品、鉄鋼製品、食料、流通事業、ウェルネス事業、ICT事業、コーポレートディベロップメントの各分野において、全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支えるロジスティクス、ファイナンス、さらには国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事業を多角的に展開。
「挑戦と創造」の理念を掲げています。
【丸紅】
1949年設立の世界131拠点を構える総合商社。丸紅および連結子会社は、国内外のネットワークを通じて、ライフスタイル、情報ソリューション、食料、アグリ事業、フォレストプロダクツ、化学品、金属、エネルギー、電力、インフラプロジェクト、航空・船舶、金融・リース・不動産、建機・産機・モビリティ、次世代事業開発、次世代コーポレートディベロップメント、その他多角的に展開しています。また、サステナビリティへの取り組みを強化しています。
社是「正・新・和」の精神に則り、公正明朗な企業活動を通じ、経済・社会の発展、地球環境の保全に貢献する、誇りある企業グループを目指しています。
【住友商事】
1919年設立、65カ国に128拠点を持つ総合商社。全世界に展開するグローバルネットワークとさまざまな産業分野における顧客・パートナーとの信頼関係をベースに、多様な商品・サービスの販売、輸出入および三国間取引、さらには国内外における事業投資など、総合力を生かした多角的な事業活動を展開しています。
「住友商事グループの経営理念・行動指針」の原点は、創業以来約400年にわたり脈々と受け継がれてきた「住友の事業精神」にあります。
※上記は2024年4月現在の情報です。
商社で働く魅力とは?
例年「人気業界ランキング」上位の常連である商社業界。その魅力を3つご紹介します。
①新卒の給与が高い傾向にある
総合商社は、多岐にわたる業界で事業を展開し、グローバルなビジネスを行っています。新卒採用される人材には、高いコミュニケーション能力や国際的な感覚が求められるため、これを反映して給与水準も高く設定されます。また、総合商社は、取引規模が大きく、高い利益を上げることが可能です。その結果として利益の一部を、従業員に還元することで、モチベーションの維持と向上を図ります。これは、優秀な人材を確保し、長期にわたって会社に貢献してもらうための戦略としても機能しています。
②グローバルなビジネス経験
国内だけでなく、海外で働くチャンスが多いのが商社の特徴です。海外勤務の場合、現地の外国人だけでなく他の国から派遣されてきた競合他社のスタッフと顔を合わせることも珍しくありません。グローバルに人脈が広がる点は大きな魅力と言えるでしょう。
③多様なビジネススキルの習得
商社での仕事では、多くの取引先との関係構築や新たな事業への投資、原材料の仕入れ交渉など、幅広い経験が得られます。特に総合商社ではビジネスのスケールが大きく、他の業界では経験できない仕事に携わる機会もあります。第一線で働くことで、コミュニケーション能力や交渉力、リーダーシップなど多様なビジネススキルを磨くことができます。
商社で働く人材に求められる資質
ここからは、商社で働く人材に求められる資質について、3つご紹介します。どのような人材が向いているか理解しましょう。
■求められる資質「3選」
①コミュニケーション能力
取引金額が高額な商社の営業職において、取引先との関係構築が重要であり、相手のニーズを理解し、円滑なコミュニケーションを行う能力が求められます。定期的な連絡や会食などの活動も重要なポイントです。人と接することが得意であり、臆することなく異なる年代の人とコミュニケーションが取れる人が適しています。
②問題解決能力
困難なことや思い通りに進まないことがあっても、状況を判断しながら自ら率先して動き、結果が出るまで諦めずにやり遂げることができる人が求められる傾向にあります。
③柔軟性・ストレス耐性
常識に捉われず柔軟に物事を考えられる人も、商社には適しています。商社の仕事では、国内外を行き来したり、企業間の連携業務など多岐に渡る仕事が並行することから、部署や時期によっては激務になることもあるでしょう。また、責任の重い仕事にストレスやプレッシャーを感じる可能性もあるため、心身共に健康で、「タフさ」を持ち合わせている人が向いていると言えます。
■語学力は必要?
商社では、英語を使った会話やメール、文書のやり取りが頻繁に行われるため、一定の英語力が求められます。留学経験や高いTOEICスコアを持つ学生は、商社での就職に有利な要素になることも事実です。ただ、それ以上に、前に述べたような資質や、自ら他人を巻き込んで事業を進める推進力が必要とされますから、諦めずにこれまでの経験の棚卸しをしてみましょう。
\商社で働いている先輩のインタビューはこちら/
ずばり人事の本音を聞いてみた「エントリーシートは目立たなきゃダメですか?」
──第4回:伊藤忠商事株式会社
■業界・職種研究におすすめのイベント「スポットライト」の紹介
スポットライトとは業界、職種、地域等のカテゴリにスポットをあてたオンラインイベントです。関心のあるカテゴリで絞り込むことができるため、業界や職種について効率的に情報収集することが可能です。詳しい情報やスケジュールは下記ページを確認ください!
まとめ
今回は商社の仕組みや特徴についてご紹介しました。商社ならではの仕事も多く、魅力に感じますね。就職活動をする上で、業界研究をはじめ、多角的な情報収集は欠かせません。オンライン上で調べることも可能ですがインターンシップ等やOB・OG訪問を活用することで、自分の向いている業界や職種に一歩近づきます。ブレない「就活の軸」を定めるためにも、しっかりと業界研究の準備をしていきましょう。
PROFILE
桜川りえ
国家資格キャリアコンサルタント
短大卒業後、10回転職を経験。ライフステージに合わせた“柔軟な働き方”をいち早く実践。コンプレックスだった転職回数の多さを「強み」に変えてキャリア支援の道へ。2019年より都内私立大学にてキャリアカウンセラーとして従事し、現在はオンラインによるキャリア相談を実施。学生・女性支援を専門領域として活動中。正規・非正規雇用、業務委託などあらゆる働き方を経て、2021年5月個人事業主となる。同年11月、「HSP×転職」をテーマにKindle書籍を出版し好評を得る。2023年3月オンラインコミュニティ「就活サードプレイス」開設。「就活×保護者」をテーマにセミナー開催。「就活」を切り口に親子関係の問題に取り組んでいる。現役就活生の母。オンラインコミュニティ「就活サードプレイス」運営