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プロの視点

岸 博幸慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授

国を動かし、世界を舞台に活躍する仕事
元経産官僚・岸博幸がその本質を語る

<第4回>2016.09.14
金融市場の競争環境が激化し、
変革の最中にあるメガバンク



銀行は「経済の血流」と称されますが、その名の通り社会や経済に銀行が大きな役割を果たすことはご存じの通りです。メガバンクに勤めれば、単に金融の知識だけでなく、担当企業の財務状況はもちろん、提供している商品やサービスなどの知識が身につきますし、多種多様な人々との人脈も構築できます。そうした魅力あるメガバンクも、取り巻く環境の変化とともに、業務内容や求められる仕事も変わってきています。

金融の自由化によって多様化するメガバンクの役割

企業や新規事業を立ち上げるときにも、事業を継続する際にも、お金(資金)が必要になります。その資金を提供(融資)できるのは金融でしかないわけです。特に日本の場合、企業全体の99%を中小企業が占める中、資本調達の面で銀行との関係は非常に大切ですし、銀行を介する「間接金融」を好む国柄からも、銀行が担う役割はとても大きな位置を占めています。

さらに、昨今の金融市場の環境変化に伴い、メガバンクでも投資業務を手がけるようになっていますし、窓口でさまざまな金融商品を販売している点にも着目しておきたいところです。これはつまり、「お金を貸して利子を得る」、あるいは、「手続きに付随した手数料を取る」といった「預金」「融資」「為替」に代表される銀行の三大業務のほかに付加価値を見出さなければ、今後生き残っていけないということをあんに示唆しています。当然、営業が担当企業をまわって、その企業の成長にともに取り組んでいく従来型の銀行業務も重要ですが、今後は資本市場を相手にした業務割合が格段に増えていくことは間違いありません。

グローバリゼーションにさらされるメガバンク

一方で、メガバンクと言えども国内市場だけでは限界がありますから、海外で収益を上げる動きも加速しています。ひと昔前のバブルの頃には、米国の銀行を買収する動きに出たものの、買収が失敗に終わった事例がクローズアップされもしましたが、その動きは21世紀に入ってより加速しています。

また、IT技術の黎明期には、「海外」といってもその範疇は「他国の日系企業」「他国の日本法人」に目が向けられがちでしたが、昨今では米国を筆頭とする先進国や、アジア新興国で展開する現地銀行の買収や提携に拍車がかかっています。こうした点から「金融だけでなく、グローバルな視点で仕事をしたい」と考えている学生さんにとって、メガバンクは最適の職場になることでしょう。

仕事のスケールが大きく、難解だからこそ面白い

日本の場合は、間接金融の機能を徹底的に活用して国民から資金を集め、それを産業界に送り込んだことで世界が驚く経済成長を遂げた歴史があり、並行して銀行の存在価値も押し上げられてきました。

しかし今後は、直接金融の割合が増えていくのではないかと私は考えています。その要因のひとつに、世界で革命が進んでいるスマートフォンやビッグデータなどの技術を使った金融サービス「FinTech(以下フィンテック)」が挙げられます。

これまでの日本では大企業の影響力が大きかったゆえ、米国と異なりベンチャー企業がメインプレイヤーになることが少ないとされてきました。しかし、金融市場での成長株であるフィンテック関連企業の台頭によって、メガバンクが新興企業(フィンテック関連のベンチャー企業)を取り込む形で、新しい業態やサービスをつくっていく動きが加速しています。加えて、金融サービスのチャネルの多様化もあいまって、メガバンクをはじめとする金融市場の競争環境は、今後ますます大きな変化を求められるはずです。

これらさまざまな背景もあり、メガバンク志望の学生さんは、金融に関する広範な経験はもちろん、グローバルな視点でダイナミックな仕事ができることは間違いないでしょう。もちろん「メガ」とつくくらいですから、配属希望がどこまで通用するか分かりかねますが、何より仕事のスケールが大きく、難解だからこそ面白いことは間違いないはずです。

さらに、前述通り、フィンテックをはじめとするさまざまな改革が起きている中、学生の皆さんがメガバンクを志望する、それはつまり『その変革期をド真ん中で体験できる』ということ。まさしくこうした点が、これからメガバンクで働くことの醍醐味と言ってよいでしょう。


Profile

岸 博幸
Kishi Hiroyuki

1962年9月1日生まれ。一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。産業政策局、通商産業研究所を経てコロンビア大学ビジネススクールに留学し、MBA取得。復職後、通商産業省資源エネルギー庁など経て、2001年、第一次小泉純一郎内閣の経済財政政策担当大臣だった竹中平蔵氏の大臣補佐官に就任。2006年に同省退官。現在は、日本テレビ「有吉反省会」、テレビ朝日「グッド!モーニング」などの多数のTV番組に出演する一方、ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」でのコラム連載、『アマゾン、アップルが日本を蝕む』(PHP出版)、『ネット帝国主義と日本の敗北』(幻冬舎)など、著書も多数。