【薬学生】業界の最新動向を学ぼう|製薬・メーカー
業界・職種・企業研究公開日:2023.04.03
薬学系の学生が活躍できる業界は、製薬会社をはじめ多岐にわたります。医薬品の需要増加に伴い市場が拡大しているドラッグストアや調剤薬局、ここ10年ほどで急激に成長しているCRO・SMO業界など、幅広い選択肢があるといえます。各業界の動向や今後の動きについて研究し、まずは視野を広げていきましょう。
世界における日本の医薬品市場規模は第4位
世界の医薬品市場 は約1兆4,235億ドル、日本円で約157兆円(2021年)。この世界医薬品市場における最大の市場は日米欧中を中心とした国ですが、近年は、急速な発展を遂げつつある新興国において医薬品のニーズが高まり、世界の医薬品市場の成長を牽引している傾向がみられます。
こうした事情を背景に成長を続けている世界の医薬品市場をリードする企業の上位には、J&J、ノバルティス、ロシュ、ファイザー、メルク、サノフィ、アッヴィなどが名を連ねています。
国内の医薬品市場に目を転じてみると、2021年における日本医療用医薬品市場(薬価ベース)は10兆5,990億3,100万円(前年比2.2%増)で、暦年で10兆円を上回ったのは7年連続です。国内の医療用医薬品では、武田薬品工業、第一三共、中外製薬などの企業が世界トップ企業と共に名を連ねています。( IQVIA調べ)
成長力を維持するために、新たな疾患領域の創薬や新興国事業に注力
製薬メーカーが膨大なコストと時間をかけて開発した新薬は、特許期間が切れると他メーカーでも同成分の薬の開発や販売が認められるようになります。そのため、先発の医薬品は、ジェネリック医薬品が登場すると売上が落ち込む傾向にあり、これが先発品の製薬メーカーの頭を悩ませる問題となっています。
そこで、製薬メーカーでは、継続した成長力を維持するため、常に企業の売上をリードする医薬品を生み出し続ける必要があります。ところが、新薬を開発するには、数百億円という資金と10年以上にわたる開発期間がかかるため、このコストを支えるだけの膨大な資金が必要となります。そのため、製薬メーカーではいかに資本力を得られるかが、医薬品市場で勝ち抜くための鍵になるのです。
急速な発展を遂げ、それに伴い医薬品のニーズが高まり、世界の医薬品市場を牽引している新興国におけるビジネスに目をつけたのが武田薬品工業です。
武田薬品工業は新興国事業が、消化器系疾患、オンコロジー、中枢神経系疾患とならんで売上ドライバーとなり、売上高を牽引。これらの4分野の継続した成長が見込まれ、今後も売上の伸長に貢献していくと推測されています。
また、これまで着目されることの少なかった疾患領域における新薬開発に乗り出すメーカーもあります。
アステラス製薬では、同社の強みおよびパートナーシップを活用して、新たな疾患領域や創薬基盤技術に積極的に挑戦。国立研究開発法人産業技術総合研究所との新たな研究契約を締結し、抗寄生原虫創薬に乗り出すといったイノベーションの創出を図っています。
このように、各社とも医薬品市場を勝ち抜くため、そして患者さんの健康に寄与する新薬を開発し続けるため、独自の戦略を立て競争力を高めています。
国内の医薬品市場では
ジェネリック医薬品メーカーの躍進に期待
厚生労働省はジェネリック医薬品の使用促進を図ることを目的に、2013年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し、2021年6月の閣議決定において、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上を達成させるとする新たな目標を掲げました。日本ジェネリック製薬協会の調べによると、2021年9月時点では79.0%となっています。
こうした政府によるジェネリック医薬品使用推進の影響を受けて、日本のジェネリック医薬品市場は、国内外のジェネリック医薬品の専業メーカーのほかに、新薬メーカー、調剤薬局などが参入し、市場が拡大しています。
国内のジェネリック医薬品の専業メーカーには、沢井製薬、日医工、東和薬品などのメーカーが、また、先発医薬品のメーカーから特許使用許諾を得て、同じ原薬、添加物、製法で製造されるオーソライズドジェネリック(Authorized Generic:AG)を扱うメーカーには、第一三共エスファ株式会社、カンデサルタン製剤のオーソライズドジェネリック(AG)を扱うあすか製薬などのメーカーがあります。
製薬メーカーにおける薬剤師の多彩な活躍の場
日本国内における医薬品市場は、薬価改定で成長率がやや緩やかになる向きがあるものの、成長傾向にあります。このように成長を続ける製薬メーカーにおいて、薬剤師が活躍できる職種には、
①薬の候補物質(シーズ)となる化合物を見つけ出す「研究職」
②新薬候補の化合物を用いて、ヒトでの臨床試験を実施して申請・承認手続きを行い、医薬品を世の中に送り出す「開発職」
③医療機関へ自社の医薬品を中心とした情報を伝え、医薬品の適正使用と普及を図る「MR職(Medical Representatives)」
④医薬品に関する最新の情報を収集、管理、提供する「学術職」などがあります。
いずれの職種も薬学部以外の工学部、理学部や文系の学部卒からの志望者が集まる人気職です。
こうしたなか、他学部卒の学生にはない薬学部卒の学生の強みは、実務実習や、卒論教室での研究を通して、これから自分が企業に身をおき、世の中に生み出していく医薬品をつくったり、使ったりする現場を実体験してきた点にあります。製薬メーカーでは、これまでの学生生活において実体験したことを最大限に生かし、それを企業でどう役立てることができるのかを具体的にイメージして、実現するためのプランを提案していくことが求められます。
キーワード
MR
「Medical Representatives」の略で医薬情報担当者のこと。 医療機関へ自社の医薬品を中心とした情報を伝え、医薬品の適正使用と普及を図ること、および医療機関から得られた医薬品の安全性・有効性の情報を収集して、それをさらに医療機関へフィードバックすることが役割である。
バイオ医薬品
遺伝子組み換えやクローニングなどのバイオテクノロジーを使って製造する医薬品。化学合成によってつくる従来型の医薬品より副作用が少ないとされる。バイオ医薬品の後発薬を「バイオ後続品」(バイオシミラー)といい、今後の市場拡大が見込まれている。