仕組みから攻略する 面接対策PART3 グループワーク

ES・選考対策

公開日:2023.04.03

就職活動で必ず行われることと言えば、まず「面接」が思い浮かぶと思います。ほとんどの企業で当然のように行われている面接ですが、私の立場から言うと、実は面接は思っているほど人を正しく評価できません(面接は不要という意味ではありません)。

面接が思っているほど人を正しく評価できない理由は後で説明するとして、最近は企業の間でも面接評価の脆弱性が認知され始め、少しずつやり方を工夫したり、面接以外の評価手法も取り入れたりするようになりました。その代表格が「グループワーク」です。

そこで今回はグループワークについて詳しくお話ししようと思うのですが、体験したことのない人も多いと思うので、まず簡単にグループワークとはどのようなものか説明したいと思います。

そもそもグループワークとは

グループワークはさまざまなやり方があるのですが、オーソドックスなものは6人程度のグループで、30分~40分で課題に挑戦するというものです。「自社の○○という製品のテレビCMをつくるという設定でコンセプトを考えてください」や「○○の売上を30%向上させるにはどうしたらいいか」といった課題についてグループで話し合った後、結論を模造紙にまとめて発表する場合が多く見られます。 グループワークと似たようなものとして、「グループディスカッション」や「ディベート」というものもあります。それぞれに特徴があるので、以下の図をご覧ください。

ディベート・グループディスカッション・グループワークの特徴

図にあるように、グループワークでは、ディスカッションに加えて何らかの「ワーク」を行うことが指示されます。「自社CMのコンセプトを考える」という課題ならば、「コンセプトをディスカッションした後、発表用資料を作成してプレゼンしてください」という感じです。話し合いの様子だけでなく、資料を共同で作成する様子や、プレゼンも評価されることになります。

ディベートは、「電車内で携帯電話を使うことについてどう思うか」というような課題について、賛成派と反対派に分かれて討論するものです。自分が賛成チームに入るか反対チームかは運営者から指定されるのが一般的です。

面接が思ったより正しく人を評価できない理由

では改めて、「なぜ面接が思っているほど正しく人を評価できないのか」を説明したいと思います。その理由から、グループワークについて理解を深めてもらいたいと思います。

面接の最大の特徴はみなさんもご存じの通り、応募者に対し質問を行い、その回答を評価することです。応募者の「主体性」を評価したいときには、「学業にどのように取り組んでいますか?」といった質問をして、それに対する回答の中に、「主体的に行動した事実」を確認することができれば、「主体性」があると評価します。

このときの面接官は、質問に対して返された応募者の「発言」を評価しています。本当に能力があるかは明確に分からずに、その場の応募者の発言内容によって評価が決まっていると言うことができます。

上手に発言すれば合格できるのではないかという思いは応募者も持っています。そのために、「なりすまし」や「印象操作」というものが頻繁に起こります。

「なりすまし」とは、自分の理想像をつくり上げ、面接の時間中はその理想像になりきろうとする行為をいいます。「印象操作」とは、自分の印象を少しでも良いものと思われるように、評価が下がりそうなことは話さずに隠す行為のことです。

これらのことが理由となり、面接では思ったより人を正しく評価することが難しいのです。

一方グループワークは、目の前で応募者の行動を直接観察して評価できるので「なりすまし」や「印象操作」に惑わされることが少なくなります。「主体性」のある学生を採用したければ、目の前で「主体的」に行動した学生を合格にすれば良いのです。

応募者の選考設計を支援していると、面接の結果と入社後の評価に大きな違いがあると相談されることがあります。そのような場合に、今説明したような面接のデメリットを補完するために、グループワークの導入を勧めることがあります。

すると、面接では「主体性」があると高く評価されていた学生が、グループワークではまったく「主体性」を発揮せずに不合格になるということが起こります。発言だけでなく、実際の行動でも「主体性」がある応募者が合格者として残ることになります。こうして、より精度の高い評価を実現することが可能になるのです。

グループワークにおける評価の考え方

企業にとってグループワークを実施するときに最も重要なことは何かというと、事前にしっかりと評価の基準を作成しておくことです。それには、求める人財に求める能力が、グループワークではどのような行動として表れるのかを事前に議論しまとめておく必要があります。(図を参照)

企業が作成するグループワークの評価基準例

評価項目優良行動例問題行動例
発信力・自分の意見を整理して趣旨を明確にして伝えている
・論拠を明示して論理的に伝えている
・同意などが中心で、発言に自らの意見がない
・発言が多すぎてかえってグループワークの質を下げてしまう
・自分の考えを整理しきれないまま話し出して混乱させてしまう
傾聴力・適切な質問をすることでさらに有効な情報を引き出している
・相手の発言に自分の考えを適切に加えることによって、相手の発言の質を高めている
・話を最後まで聞かずに、自分の話をしてしまう
・一応聞いているが、集中しておらず何度も聞き直す
・発言をよく聞かずにすぐに否定してしまう

学生の方からよく、「グループワークで進んで司会をすると有利になるのでしょうか」という質問をいただきます。もちろん役割を積極的にこなすことは、良い評価につながる行動を取りやすいので、チャンスを広げることにつながると思います。

ただし司会という役割も、「チームの成果を最大限引き出した」「参加者の発言は公平に聞いた」「単なる進行役だった」「チームを迷走させてしまった」というように、取った行動によってもたらされる結果はさまざまです。「役割につく」=「能力がある」ではなく、「良い行動をとる」=「能力がある」という考え方で評価は行われます。

逆に、「司会ではなかったけれど、このチームでは実質彼女がリーダーだった」「発言は少なかったけど、要所で効果的な発言をした。チームの成果は彼がいなければ変わっていた」といったように、チームや成果物に対して貢献すれば、一般的に高い評価を得ることにつながります。

積極的に発言してチームでの存在感もばっちりあったのに、不合格になる人もいます。本人もなぜ不合格なのか分からないかもしれません。実はたくさん発言をしていても、チームや成果物には何も貢献していない(ので評価が低い)というケースを採用の現場でよく見てきました。

選考以外でも重宝されるグループワーク

グループワークは選考時だけでなく、インターンシップや採用広報のセミナーなどでもよく行われています。例えば、自社のビジネスケースなどを用いた課題などが示されるのですが、この場合は参加者を評価することではなく、自社に対する理解を深めてもらうことが目的になります。

グループワークは、レクチャー形式でただ話を聞くよりも、主体的かつ積極的な参加を促すことが可能です。課題を「自分ごと」ととらえてもらう効果もあります。結果的に、参加者の企業理解度や満足度が高いです。

最近の採用広報は、第2回「採用広報とは」で説明したように、企業と学生の双方向のコミュニケーションの場として設計されています。グループワークであれば、自社のことを知ってもらいつつ、参加者の発言もよく聞くことができ、双方向のコミュニケーションを実現できます。

こうした背景から、今後も採用活動のさまざまな場面でグループワークが実施されると思います。
その場で初めて会った人に対して自分の考えを適切に伝えなくてはならず、グループワークは難しいと感じる人もいるかもしれません。

グループワークが上手になりたいと思ったならば、日常生活の中で「自分の考えを人に話す」「人の意見を聴く」ということを行ってみると良いと思います。自分の考えを人に話す際には理由を簡潔に添えること、人の意見を聴く際には自分の考えと比較して相違点を考えてみることが上達のコツです。

加えて自分だけではなく、常に「チームの視点で考える」ことも必要です。企業は常にチームで仕事をするため、グループワークではチームで仕事をすることができる人かどうかも確認されています。
しかし不安に思う必要はありません。誰でもチームで活動した経験があると思います。自分が目立とうとか、合格がかかっているという意識ではなく、メンバー一人ひとりから成るチームであることを忘れずにいれば、おのずとチーム行動が取れるはずです。

「自分の考えを話す」「人の意見を聴く」「チームの視点で考える」の3つは、コミュニケーションの基本です。 意識して実践することで誰でも向上させることができますし、社会人になってもずっと求められる、必須のスキルだとも言えます。ぜひ前向きにとらえ、グループワークを楽しんでもらえればと思います。

PROFILE

小宮健実
株式会社採用と育成研究社 代表

米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手がけている。

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