ずばり人事の本音を聞いてみた「エントリーシートは目立たなきゃダメですか?」──第4回:伊藤忠商事株式会社

体験談・インタビュー

公開日:2024.02.08

就職活動をしていく上で気になるけれどもなかなか説明会などでは聞けない就活生の悩みを人事にずばり聞いてみるインタビュー連載。今回のテーマは「エントリーシートは目立たなきゃダメなのか?」です。 エントリーシートの重点的に見ているポイントや、書類選考の基準など、普段聞けないことについて伊藤忠商事株式会社の人事総務部、臼田様にお聞きしました。

※内容および社名・所属等については取材当時のものとなっております。

近年の採用状況は「学生の多様化」がポイントに

──はじめに、御社の事業内容について教えてください。

当社は「繊維」「機械」「金属」「エネルギー・化学品」「食料」「住生活」「情報・金融」そして、ほか7カンパニーと協働し、特に生活消費分野に強みを持つ当社のさまざまなビジネス基盤を最大限活用しながら、異業種融合・カンパニー横断の取り組みを加速させ、市場や消費者ニーズに対応した「マーケットインの発想」による新たなビジネスの創出・客先開拓を行う「第8」という8つの営業カンパニーで運営しています。ビジネスは「トレード」と「事業投資」の2つの柱に基づいています。トレードは商品の売買・仲介を通じて、付加価値(物流や金融など)を提供し、世界中の取引に貢献します。事業投資では、さまざまな分野・地域で投資先の価値向上やシナジー創出を目指し、経営資源の提供や事業再編によりビジネスを拡大しています。

──さまざまな事業を展開している御社なので、非常に多くの応募があるかと思いますが、最近の応募者の傾向や特徴はありますか?

皆さん就活を始める時期が年々早くなっている気がします。例えば11月頃のインターンシップ等の選考の際に、ある程度いろいろな企業を見ていて、既に就職活動に慣れているという方が増えた印象です。また本選考前のインターンシップ等への応募が増えていて、かつ大学1、2年生からの応募も増えています。しかしながら、必ずしも早期=よいというわけではなく、時間をかけて将来の仕事を考える学生も多く、当社は、多様な価値観を持つあらゆる学生の皆さんの目線を意識し、当社や将来のキャリアを考えることに役立つ情報を意識して発信し続けています。

エントリーシートは「目立てばいい」ってわけじゃない

──御社の採用選考フローを教えてください。

昨年のフローは、まずは書類選考があり、エントリーシートと履歴書、自己紹介動画の提出と適性検査がありました。通過者の方はその後、面接を複数回行い、内々定というフローになっています。自己紹介動画では複数の設問を用意しており、応募者の方がどういう人なのかを説明する内容となっています。

──エントリーシートはどこを重視してチェックしているのですか?

エントリーシートはどうしても目立ったエピソードを書かなければいけないと思われがちですが、そこよりもなぜそれに取り組んだのか、自分なりにどう工夫したのか、プロセスの中でほかの人とどう関わったのかなど、その方が見つけた課題に対して行ったアクションについて知りたいです。場合によっては取り繕ったり、結果がよく見えるように書こうと考えると思いますが、何をどのように取り組んできたのかプロセスを重視して書いてほしいと思います。

また、人ぞれぞれの考え方がおもしろいと思って拝見しているので、これを書かなければダメというような正解はありません。例えば人から誘われたということが動機であり、自発的でないからダメということもありません。面接でどんどん聞いていけばその人の想いは出てくると思うからです。限られた文字数の中でうまくまとめることも重要ですが、自分らしさや素直に自分がどういう想いを持っていたのかを書いていただきたいと感じています。

──エントリーシート以外の選考について、評価のポイントを教えてください。

エントリーシートを含め動画、適性検査などを総合的に評価しています。動画がいいから適性検査の結果は見ないとか、エントリーシートがすごくいいからほかは見ないということはありません。その上で、質問に答えていないとか、どういう方かがわからない内容では残念ながら評価はできません。

動画では、エントリーシート等の紙だけではわからない部分を見たり、実際に話している姿から頭の中をどう整理して、決められた時間で話をするのかなどを見させていただいています。動画選考では、なにかおもしろいことをやらなければとか、目立たなければいけないということは全然ありません。決められた時間の中で自分の話をまとめて端的に伝えられていれば、実際に面接にお呼びしていろいろお聞きしたいと思います。

求める人材は「自ら行動を起こし、周りを巻き込みながら課題解決できる人」

──御社ではどんな人材を求めているのでしょうか?

特定の人材像はありません。多様な価値観を持った方に来ていただきたいと思っています。ただビジネスモデル上、周りの環境に左右されやすく、周囲の人たちを巻き込んでいきながら新しいビジネスを時代に合わせてつくっているので、課題を発見し、その課題をいかに自分たちのアセットで解決するかが重要になります。

そして自分たちで解決できない場合は周囲を巻き込む必要があり、課題発見から課題解決までを当事者意識を強く持って行動を起こせたり、周りを巻き込んでいける人が当社では活躍されていくと思います。

──この業界に関わりたい学生はどのような視点を持っているといいと思いますか?

自分の将来に対して、長い目で見てどういう人になりたいかという将来像を描いた上でそれを実現するために会社を選ぶ、という視点があるとよいと思います。就活はゴールではなく、あくまでご自身の将来ありたい姿を実現する手段であるということを忘れないでいただきたいです。そのため、自分を偽らずに本当の自分で勝負をしてもらいたいと思います。面接などでもあまり型にはまらずにご自身が思っていることをしっかり言語化してほしいと思っています。

学生だからこそできる企業研究がある

──企業理解や業界分析についておすすめの方法があれば教えてください。

商社の特徴でもありますが、ビジネスモデルがわかりにくいので、「総合商社ってなんだかかっこいい」という理由で志望されると実態と理想が乖離してしまうことがあります。そのため実態を知った上で、かつ自己分析を行い、やはりこの会社が自分に合っていると思えるといいですね。

企業理解や業界分析のやり方としては、直接話を聞けるOB・OG訪問は有効な手段だと思います。最初はハードルが高く、大変かもしれないですが少し勇気を出して1回やってみる、その一歩がとても大事です。これを聞いたらマイナスになるなどと考えずに、率直にわからないことは聞いてみるくらいの気軽な気持ちで先輩社員に会っていただければと思います。
一応社員の時間をもらっているので、真剣に向き合うという意識だけは忘れずに、「相談してみよう」という感じでもよいのではないでしょうか。

──就活生へのアドバイスをお願いします。

難しいかもしれませんが、できるだけ自分の「素」を出して臨んでほしいと思います。就活はゴールではなく、なりたい自分への手段に過ぎません。入社することを目的にしてしまわずに、将来像を逆算して就活を進めてほしいと思います。

最初は商社志望かもしれませんが、セミナーやOB・OG訪問でいろいろな人の話を聞いていくと自分の知らない職種や情報を知ることができます。調べていくうちに、違う仕事がおもしろいと思うかもしれません。さまざまな可能性を持った上で話を聞いたり、さまざまな視点から興味ある業界・企業を見るのもいいと思います。

最初に感じた「この会社っておもしろそう」というきっかけを大事にして、そこから情報を集めてみて、本当に自分に合っているのか、何をやってみたいのかなど自分の「素」と向き合って考えていただきたいと思います。

PROFILE

中尾 あずさ
大学卒業後、新卒で旅行会社にて営業・海外添乗員を経験後、大手人材会社へ転職。営業・人材育成・研修講師を行う。その間、アルバイト→契約社員→正社員→時短勤務と様々な勤務形態を経験。在籍中に3人の子供の出産・育児休暇を経て仕事と子育てを両立。2011年にキャリアカウンセラー(CDA)資格を取得。副業にてトータル3500人の相談業務に従事し独立。高校、大学でエントリーシートの添削や面接対策、進路相談など就職活動支援や就業中の方へのキャリアコンサルティングを実施。

【主な資格】
・キャリアカウンセラー CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
・国家資格キャリアコンサルタント
・青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー
・育休後アドバイザー

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