就業時間中の息抜きはダメ?【弁護士が答えます】

就活ノウハウ

公開日:2024.10.16

就業時間中の息抜きはダメ?

働く上で、適度な息抜きは生産性を高めるために重要ですが、就業時間中のスマホ操作など、仕事と関係ないことをすることは許されるのか気になる方も多いでしょう。法律の観点から、就業時間中に許容される範囲について弁護士が詳しく解説します。従業員としての権利と義務、そして企業側の対応について理解を深め、職場での適切な行動を目指しましょう。

「個人目線」の息抜きの解釈

仕事をしていると、「少し煮詰まったからYouTubeでも観たいな」、「今週末、どこに出かけるか調べようか」などなど、息抜きをしたくなるタイミングが時々発生します。もちろん休憩時間だったら何をしても自由なのですが、就業時間中にちょっと息抜きをするのはどうなのでしょう?「就業時間なんだから、息抜きしちゃダメでしょ」という真面目な人もいれば、「ちょっとYouTube観るくらいはいいんじゃない?」という人もいるでしょう。個人の意見はさまざまですが、実際のところ、法律的にはどう解釈すべきでしょうか?

「法律目線」の息抜きの解釈

企業に入社する際に結ぶ「雇用契約」は、使用者(会社)と労働者(皆さん)との間の雇用に関する契約です。使用者は、契約に従ってきちんと労働者に賃金を支払う義務を負います。その一方で労働者は、雇用契約によって定められた就業時間、職務に専念する義務を負います。つまり、賃金と労務の提供とが等価交換の関係にあるわけです。

問題は、「職務に専念する義務」がどの程度のものであるかです。この点の解釈によって、どこまでの息抜きが許されるかが変わってきます。「とにかく注意力のすべてを職務遂行に注がなければならない」と解釈するのか、「必要な仕事に支障がなければ、注意力のすべてを職務遂行に注ぐ必要まではない」と解釈するのか、という問題です。

働く側としては後者の解釈であってほしいと思いますよね。ただ実は、最高裁判例の基本的解釈は前者なのです。うかつに息抜きをしてしまうと、職務専念義務違反だと言われかねません。

職場における「息抜き」の実態

ここまで読んだ皆さんを少し萎縮させてしまったかもしれません。ただ、実際の会社では、「注意力のすべてを職務に注がなければ処分する!」などと言われることはほとんどありません。同僚とのコーヒーブレイクや雑談、短時間のスマホ操作などは黙認されているはずです。いちいち目くじらを立てていたら、労働者が会社を去ってしまいますからね。

ただ注意が必要なのは、会社が明示的に禁止している行為です。たとえば、「休憩時間を除き、喫煙を禁じる」という規則が存在する場合、就業時間中に席を外して喫煙することは避けるべきです。実際、公務員が就業時間中に喫煙をして処分されるニュースを度々目にします。気をつけましょう。

■休憩時間と息抜きの違い

休憩時間とは労働基準法で定められた休憩時間のことを指し、「労働時間が8時間を超える場合、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」といったように、一定時間を超える労働に対し一定の休憩時間を設けることが義務化されています。
息抜きは、休憩時間以外の時間で行うリフレッシュを目的とした短時間の休憩のことを指します。

節度を守った息抜きは仕事の効率化に有効

息抜きは、生産性アップやケアレスミスの低減といったパフォーマンスの向上に繋がるため、仕事においても有効です。

ただし、息抜きの時間や頻度は個人の判断に委ねられているケースが多いため、注意する必要があります。過度な息抜きは周りの人からサボっていると思われる可能性もあるので、コーヒーを飲んだり軽く体を動かしたりといった自身がリフレッシュできる簡単な息抜きの仕方を見つけるのがおすすめです。

余談ですが、我々弁護士は大多数が個人事業主なので、いつどのように仕事をするかは個人の裁量次第です。仕事中にYouTubeを観ても叱られることはありません。でも、息抜きばかりしていると仕事が溜まって恐ろしいことに…。

息抜きはあくまでも息抜きです。節度を守ってがんばりましょう。

PROFILE

定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。

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