それ、法律上の「休憩時間」と言えますか?【弁護士が答えます】

就活ノウハウ

公開日:2024.05.01

労働基準法(以下「労基法」といいます)には、「休憩」についての定めがあります。これは、使用者(会社)は労働者に対し、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を与えなければならない、という内容です。

しかし、就業規則などではきちんと休憩時間の定めを設けていても、実際にはきちんと休憩時間を運用できていない会社は珍しくありません。この記事では、休憩時間について少し掘り下げて解説してみたいと思います。

そもそも「休憩時間」とは何?

そもそも、「休憩時間」とは何を意味するのでしょうか。

「休憩時間」は休憩をする時間に決まっているでしょ、と言われてしまうかもしれませんが、法律的にはもう少し深く解釈しなければなりません。

法律上の「休憩時間」とは、労働者が労働から解放され、自分の自由に使うことのできる時間を意味します。このポイントを押さえておくと、世の中で休憩時間とされることの中には法律上の「休憩時間」と言い難いものが含まれていることが理解できます。

具体例その1・電話番

ここからは、具体例を交えて考えてみましょう。

例えば、上司から、「入社1年目の社員には、昼休みの時間に顧客からの電話対応をしてもらいます。電話対応以外の時間は自由に過ごしてもらって構いませんが、必ず電話には出てください。電話自体は数分で終わるものがほとんどです。」という指示がされた場合はどうでしょうか。

数分程度の電話対応をすればよいのだし、休憩時間と評価して構わないのでは?などと考えがちだと思います。しかし、上記の指示がなされた状況では、法律上の「休憩時間」とは評価できません。

前述のとおり、「休憩時間」は、労働から解放された時間でなければいけません。いつかかってくるかわからない顧客からの電話を待ち、対応を義務付けられる状態では労働から解放されているとはいえません。

具体例その2・ランチミーティング

具体例その2は、ランチミーティングです。

例えば、上司から、「昼食の時間を利用して仕事の打ち合わせをしたいので、来れる人は集まってください。参加は任意です」と言われた場合はどうでしょうか。このランチミーティングは「休憩時間」にあたるのでしょうか。

ここでのポイントは、上司が「参加は任意です」と発言していることです。参加が任意であれば、このランチミーティングは業務命令ではなく、いわば労働者の自由意思で行われるものです。労働者の自由意思でランチミーティングを行うのであれば、その時間は「休憩時間」と扱ってよいと思われます。

しかし、「参加は任意です」という発言を文字通り受け取ってよいのでしょうか。任意といいつつ、欠席した場合には人事評価で不利益を被ることもありえます。不利益を被ることが予想されるのであれば、労働者としては、本当は参加したくなくても「参加します」と言うしかありません。この場合は、任意といいつつ実質的には業務命令が下されていると評価すべきです。

以上のとおり、「休憩時間」にあたるか否かを判断する際は、上司(=会社側)の発言の外面だけを考慮するのではなく、その裏に潜む実質的な意図を考慮しなければなりません。

なお、以上の話はランチミーティングだけに限ったものではありません。「休憩時間を利用して資格取得のための勉強会をしましょう。参加は任意です」という場合も考え方は同じです。

おわりに

ここまでご覧いただくと、法律上の「休憩時間」は案外厳しく判断されるのだな、という印象をお持ちになったのではないでしょうか。

なぜ厳格に判断されるかというと、「休憩時間」が労働者にとって重要な権利だからです。十分な休憩時間が与えられないまま仕事を続ければ、労働者の健康は(肉体的な健康だけでなく、メンタルの健康も)蝕まれてしまいます。

これから社会に巣立つ皆さんに、この記事が役立てば幸いです。

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PROFILE

定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。

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