内定辞退で損害賠償はありえる?【弁護士が答えます】

就活ノウハウ

公開日:2024.03.27

「あれだけうちが第一志望だと言っていたのに内定辞退?損害賠償請求も含めて検討させてもらいます。」ここまで過激な表現でなくとも、内定辞退の際に叱責されたり、嫌味を言われたりという先輩諸氏もいるかと思います。

ここで「本当に損害賠償請求をされたりするケースなんてあるのだろうか」と不安を感じる学生さんもいるかと思いますので、今回は内定辞退について取り上げます。

結論から言いますと、「内定辞退」をすること自体は法的に可能であると考えられます。

学生には職業選択の自由が保障されており、また、入社した後でさえ退職の自由が保障されているのですから、内定辞退が可能であることは当然であるようにも思えます。

ただし、最近の裁判例(東京地判平成24年12月18日)は、内定辞退者に対する損害賠償請求事件において、以下のように判示しており、注目に値します。

「本件内定(本件労働契約)は、平成23年3月にa大学b学部c学科を卒業することを停止条件として成立している(なお入社日を「効力発生の始期」と解する立場を前提とする。)。そして、このような本件内定の特殊性にかんがみると、入社日までに上記条件成就を不可能ないしは著しく困難にするように事情が発生した場合、原告は、信義則上少なくとも、被告会社に対し、その旨を速やかに報告し、然るべき措置を講ずべき義務を負っているものと解されるが、ただ、その一方で、労働者たる原告には原則として「いつでも」本件労働契約を解約し得る地位が保障されているのであるから(民法627条1項)、本件内定辞退の申入れが債務不履行又は不法行為を構成するには上記信義則違反の程度が一定のレベルに達していることが必要であって、そうだとすると本件内定辞退の申入れが、著しく上記信義則上の義務に違反する態様で行われた場合に限り、原告は、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任を負うものと解するのが相当である。」

ここで挙げた裁判例は、著しく信義則上の義務に違反するような態様の内定辞退には損害賠償責任が発生する旨を明確に示しました。「著しく信義則上の義務に違反するような態様」とは、内定式の直前にメール一本で理由も付さずに内定辞退の連絡をして、その後の会社からの連絡には一切応じないようなケースなどが想定されます。

損害の内容としては、採用選考や入社準備に要した費用や、他の応募者を採用できなかったことの機会損失等が挙げられるかと考えられます。

このような事態に至らないためにも、またこれから社会人になるための常識としても、内定辞退に際しては、内定先に対して誠実に対応することが必要ということになると考えられます。

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PROFILE

英明法律事務所
浦辺 英明弁護士
解雇問題、従業員の処遇問題、残業代請求問題、ハラスメント問題など、幅広く人事労務分野における活動を行っています。著書に「Q&Aで納得!労働問題解決のために読む本」(日本労務研究会編・共著)など。

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