「これってオワハラ?」と迷ったとき【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2023.11.28
皆さんは「オワハラ」という言葉を耳にしたことはありますか?
「オワハラ」とは、「就活終われハラスメント」の略語です。企業が就職活動者に対して内々定や内定を出す際に、他の企業へ就職されないよう囲い込みをすることを意味します。余談ですが、昨今では様々なハラスメントを「〇〇ハラ」と略しますが、パッと見たときに意味がわかりにくくなっていますね。
オワハラの意味は上記のとおりですが、問題のある囲い込みとそうでない囲い込みとの線引きが難しいところです。企業としては有望な人材に就職してもらいたいわけですから、内定を出した人にきちんと就職してもらいたいと考えることは当然です。
この記事では、「オワハラ」の線引きを解説してみたいと思います。
様々な囲い込みの手法
企業が内定者を囲い込むときに用いる手法を考えてみましょう。マイルドなものからハードなものへ順に、3つの例を挙げます。
①面接の際に、「弊社が第1希望なのですか」と尋ねる
②内定の際に、内定承諾書の提出を求める
③内定の際に、他社への就職活動を行わないことの誓約書を提出させる」
この3つの例について、「オワハラ」として問題になるかどうかを検討します。
①面接の際に、「弊社が第1希望なのですか」と尋ねる
この質問は、実際の面接の現場でなされることも多いのではないかと思います。本当は第1希望でなくとも、「いいえ、御社は第1希望ではありません!」とは答えにくいですよね。「御社が第1希望です!」と答えた場合、後に内定を断るのは気まずくなります。「弊社が第1希望なのですか」と尋ねることは、多少なりとも内定者を囲い込む効果がありそうです。
ただ、多少なりとも囲い込みの効果があるとしても、「弊社が第1希望なのですか」と尋ねることに問題があるとは考えにくいところです。企業としては、就職活動者が自社を最優先に考えているかどうかに強い関心を持つ でしょう。自社を第1希望と考えている者から優先的に採用すること自体は合理的です。
そうすると、「弊社が第1希望なのですか」という質問をすることがオワハラに該当するとは考え難いです。
②内定の際に、内定承諾書の提出を求める
企業が正式に内定を出す際に就職活動者に対し内定承諾書の提出を求めることも、就活の現場では珍しくないと思います。
①とは違い、文書で正式に内定を受諾するわけですから、承諾書を提出する側にとってはプレッシャーがかかります。「承諾書を出した後に内定を蹴ったら、違法行為になってしまうのではないか」という不安を抱くかもしれません。その意味では、内定者の囲い込み効果が発生するといえるでしょう。
しかし実際は、内定承諾書に強い拘束力はありません。内定承諾書を提出した後に他の企業への就職を決めたとしても、損害賠償等の制裁があるわけではありません。そもそも労働者には退職の自由があり、内定であってもそれは変わらない(むしろ、正式雇用に比べればより緩やかになる)ということです。
一般的な内容の内定承諾書の提出を求めるだけであれば、オワハラには該当しないと考えられます。
③内定の際に、他社への就職活動を行わないことの誓約書を提出させる」
内定承諾書のほか、他社への就職活動を行わないことの誓約書を提出させることを求めるのはどうでしょうか。皆さんも感覚的に、「それはマズいのでは?」という印象をもつのではないでしょうか?
皆さんの直感は正しく、上記の手法には問題があります。なぜ問題があるかというと、就職活動者の自由な意思形成を阻害するからです。
そもそも人には職業選択の自由が認められ、自身の自由な意思で働き場所を見つけることができます。この自由な意思を制限することは極めて問題です。
③の誓約書は、言ってみれば 「ウチの会社以外に就職しないと約束するなら内定を出すよ」という圧力をかける行為です。このような圧力をかけられてしまったら、自由な意思などあったものではありません。これはオワハラに該当するというべきでしょう。
おわりに
この記事では3つの例だけを挙げて解説しましたが、就活の現場ではより様々なオワハラが存在するのだと思います。
皆さんが「これはオワハラなのでは?」と疑いを持った ときは、「自由な意思形成を阻害していないか」という視点で考えてみてください。就職活動者の選択肢を奪って内定を確保するような会社は、やはり問題があると思います。真に魅力のある会社ならば、フェアな手法で、それでも内定者を確保できるはずです。
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PROFILE
定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。