「給与」と「給料」の違いを説明できますか?意外と知らない給与の仕組み

就活ノウハウ

公開日:2024.01.31

就職活動を始める学生の皆さんにとって、「給与」はひとつの大きな関心事ですよね。初めての給与というものは、自分の労働の価値を金銭的に反映したものであり、新たなキャリアの始まりを象徴しています。本記事では、「意外と間違えやすい給与と給料の違いは?」という基本から、月給制と年俸制の違い、初任給についてなど、就活生が知っておくべき給与の基本について解説します。

意外と間違えやすい「給与」・「給料」の違いは?

「給与」とは、労働の対価として雇用主から労働者に支払われるものの総称であり、俸給、給料、賃金、歳費、賞与などが含まれます。これには基本給や賞与の他に各種手当(扶養手当、通勤手当など)や現物支給も含まれ、企業や行政によって内容は異なり、業績や時期によって変動があります。

一方で、「給料」とは給与の一部を指し、各種手当や賞与を除いた基本給のことを言います。企業は勤務時間に基づき社員の給料を定め、月1回などあらかじめ決められた回数と金額を支払います。

・給与(雇用主から労働者に支払われる全て) = 給料 + 各種手当 + 賞与 + 現物支給など
・給料は言い換えると基本給

■賞与(ボーナス)とは?

賞与は「ボーナス」「特別手当」「一時金」と同じ意味の言葉です。賞与は、毎月支給される「定期給与」とは別に支給されます。賞与の有無は企業の方針によって変化し、設定は自由です。支給額も企業の状況や個々の貢献度によって違うため、常に同じ金額が支給されるわけではありません。夏季賞与、冬季賞与など、年に1~2回支給する企業が多いですが、目標達成時の臨時ボーナスのように、不定期に発生するものもあります。

■各種手当は何があるの?

手当とは企業から給料のほかに支払われる賃金です。手当には「労働基準法で支給が定められたもの」と「企業が独自に支給するもの」の2種類に分かれています。

【法律で定められている手当】
・残業手当:
規定の労働時間を超えて働いた場合に支払われる手当。通常、追加労働時間に対して基本給の割増率に基づいて計算される。

・深夜残業手当:
夜間の時間帯(通常は22時から5時まで)に残業を行った場合に支給される手当。

・休日出勤手当:
週に1回・4週に4回必ず取得させなければならない「法定休日」に出勤させた場合に、通常勤務から割増した賃金を支払う手当。

【企業が任意で支給する手当の例】

・役職手当:
管理職や特定の責任ある役職に就いている社員に対して支給される手当。職務の責任や重要性に応じて設定される。

・住居手当:
社員の住居費用を支援するために提供される手当。地域や家族構成、住居の種類によって異なる場合がある。

・通勤手当:
社員が通勤にかかる費用を補助するための手当。

・家族手当:
社員の扶養家族に対する経済的支援として支給される手当。家族構成や子供の人数に応じて支給額が設定される場合がある。

・資格手当:
業務に活用できる資格や免許を新たに取得した従業員や既に保有している従業員に対し支給される手当。

支払い方法や頻度について

日本では「月給制」が一般的ですが、出勤した日数で給与を算出する「日給制」や、1年間に支給される給与総額が決まっており、分割した額が毎月支払われる「年俸制」などがあります。それぞれのメリットとデメリットをみてみましょう。

■月給制の特徴

日本の企業は月給制を導入している企業が多く、毎月25日に支払われることが多いようです。その背景として一説によると、過去の会計慣習が影響しているようです。手作業での経理作業が主流だった時代、月末から月初は請求対応や入金作業で忙しく、給与計算が始められるのは毎月10日頃でした。その結果、月の中旬に締め日(※)を設け、25日頃に給料の支払いを行うサイクルが定着しました。こうして給料日として25日が一般的になったとされています。
※締め日:
いつからいつまでの給料なのか、期間を区切った最終日のこと。例えば、月の締め日が15日で、毎月25日が給料日の場合は、前月16日から当月15日分の給料となります。労働基準法では、賃金の支給について「賃金は毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められています。

【月給制のメリット】
安定的な収入:企業が任意で支給する各種手当がつくケースが多く、直近の自身の成果がその年の賞与へ影響することから自身のモチベーション向上につなげやすい。

追加業務の明確な報酬:残業代など追加業務に対する報酬が明確であることが多い。

【月給制のデメリット】
大幅な給与アップの可能性が低い:昇給率は業種や企業、業績により異なりますが、月給制の場合は一回の昇給額が制限されていることが多いため、年俸制と比較すると実績に応じた飛躍的な給与アップは難しい傾向にある。

■日給制の特徴

「出勤日数×日給額=日給制の給与」として算出され、月に一度まとめて支払われる給与体系です。正社員雇用で日給制を採用しているケースはあまり多くありません。

【日給制のメリット】
柔軟なワークライフバランスの実現:出勤した分だけ給与が増え、業務が早く終わって退勤しても給与は変わらないことから仕事とプライベートの時間を両立しやすい。

【日給制のデメリット】
自己管理の必要性:出勤日数に応じて給与が決まるため、欠勤が自身の給与および生活に影響し、月々の収入が不安定になりやすい。

■年俸制の特徴

企業と従業員が1年単位で給与の総額について合意し、その額を定める給与形態です。年俸の決定方法は、企業ごとの賃金規定に基づく算出方法をベースに、従業員の前年度の成績や期待値などが給与額の決定に影響を与えることが一般的です。

年俸制では年間の給与総額が一括で支払われるわけではありません。労働基準法第24条により、賃金は毎月一回以上定期的に支払わなければならないため、年俸を12等分して毎月支払う方法や、14分割して12回を月々の給与とし、残りの2回をボーナスとして支払う方法もあります。

また、年俸制においても、月給制と同様に残業代の支払い義務が発生する場合がありますが、みなし残業制を採用している企業も多いため、入社前に確認することも重要です。
※みなし残業制の場合でも、休日労働・深夜労働を行った場合は、原則どおり割増賃金が適用されます。

年俸制は、外資系企業やグローバルに事業を展開している企業で導入されていることが多いようです。理由としては、これらの企業は国際的な人材市場で競争するため国際基準に沿った給与体系を採用することが多く、外国では月給制より年俸制が多く導入されていることから、年俸制を採用することで国際的な人材の獲得と保持が容易になるためです。

またグローバルな事業展開を行う企業には、異なる国籍や文化的背景を持つ従業員がいます。年俸制は、このような多様な労働力を管理し、公平な評価基準を提供するのに適しています。

【年俸制のメリット】
成果主義に基づく報酬:個人の成果や貢献度が直接給与に反映され、高い報酬を得る可能性がある。

モチベーションの向上:成果に応じた報酬がモチベーションを高め、キャリアアップの動機づけに繋がる。

【年俸制のデメリット】
給与反映のタイミング:年俸制は前年度の成果を基準に1年間の給与額を決めるため、成果が上がらなかった場合には、翌年の年俸額を減らされる可能性があります。また、成果を上げたとしても給与に反映されるタイミングは翌年になってしまう場合が多いです。

■給与の支払い方法と税金について

日本の多くの企業では給与の支払い方法として銀行口座への振込を採用していますが、近年、一部の企業では従業員に給料の一部を電子マネーやプリペイドカードにチャージする形で支払うケースが見られます。

この動きは、キャッシュレス化が進む現代において、現金よりも電子マネーの方が取り扱いやすく、利便性が高いという考え方から生じています。従業員にとっても給与の管理が容易になると同時に、企業は給与支給の効率化を図ることができます。キャッシュレス時代の到来に伴い、こうした給与支給方法の多様化は今後さらに進む可能性があります。

振り込まれた金額が少ない?給与から引かれる税金を理解しよう

「あれ?振り込まれた給与が伝えられていた金額より少ない!」と驚いてしまう前に、給与から引かれる主要な税金を理解しておきましょう。

所得税:給与所得に対して課される税金です。年収に応じて異なる税率が適用されます。

住民税:所得に基づいて自治体に納める税金で、前年の所得に基づいて計算されます。住民税には所得割と均等割があります。

社会保険料:これは税金ではありませんが、給与から控除される重要な項目です。以下に分けられます。

健康保険:医療費の一部をカバーするための保険料。
厚生年金保険:老後の年金を確保するための保険料。
雇用保険:失業時の給付金や雇用安定のための保険料。
労災保険:労働者が業務上の事故や病気で被害を受けた際に給付される保険で、通常は雇用主が全額を負担します。

これらの税金と社会保険料は、給与から自動的に控除されるため、手取り給与はこれらの控除後の金額となります。控除額は年収や家族構成、住んでいる地域などによって異なります。

4月に入社したら初任給は5月になるの?

いつ・どれくらいの給料が支払われるのかは、それぞれの会社の給与規定や就業規則などで定められています。その内容で初任給がいつ、どれだけ支払われるかが決まります。チェックするべきポイントは、以下の2つです。

・月給制か日給制か年俸制か
・締日と支払日

月給制は1カ月の給与が決まっており、給料日にその金額が支払われることになります(欠勤などの場合、その分は差し引かれる会社もあります)。日給制では1日の賃金が決められており、実際に何日働いたかで支払われる給料が決まります。

月給制では入社時に決められた月給分が支払われますが、日給制では締め日までの実労働日数で給与額が変わります。

年俸制の場合は、年間の給与総額が決まっているので、企業の賃金規定に基づいた分割金額が4月の給料日に支払われます。

■初任給の支払いパターン

・当月末締め、当月25日払い
その月の末日までの給与を25日に受け取ることになり、4月1日入社の新入社員は4月分の給与を4月25日に受け取ることになります。月給制の場合はもちろん、日給制や年俸制の時も1カ月分の給与が支給されます。4月分の残業代は5月分の給与とともに支給されることになります。

・〇日締め、当月△日払い
「15日締め、当月25日払い」などの場合です。その場合、4月に支給される給与は、3月16日から4月15日までの分となります。4月1日入社の新入社員は4月25日に初任給が支給されます。日給制の場合は、4月1日から15日までの半月に働いた分が支給されることになります。月給制の場合は1カ月分が支給される場合、半月分が支給される場合など、会社によって対応はいろいろあるようです。事前に給与規定を確認しておくと安心ですね。

3月16日から4月15日の残業代は、4月の給与または5月の給与で支払われます。こちらも会社によって対応が異なります。

・月末締め、翌月△日払い
その他、「月末締め、翌月10日払い」などの場合、4月に働いた分は5月10日に受け取ることになります。つまり、4月1日入社の新入社員は、4月に給料を受け取ることができません。5月10日が初任給ということですね。1カ月以上収入がなくなりますから、事前に生活費などを用意しておく必要があります。

■試用期間の取り決めも確認を!

入社直後は「試用期間」を設けている企業もあります。試用期間中でも、会社側と労働者側の労働契約は成立しているので、基本的には正規雇用と同じ待遇を受けることができ、正社員と比べて待遇の中身が大きく変わることはありません。しかし一部の企業では試用期間中の給与や待遇が正社員と違う場合もあります。
例えば、
給与の差異:試用期間中は正社員としての給与よりも低い場合がある
各種手当の制限:企業が独自に支給している各種手当(家族手当や住宅手当など)は、試用期間中は対象外にしている場合がある

試用期間は通常、3カ月~6カ月間が一般的ですが、企業や職種によって異なる場合があります。試用期間中の給与額や待遇などを入社前に必ずチェックをしておきましょう!

まとめ

給与は労働の全対価を示し、給料はその基本部分を表します。給与明細を理解し、税金や保険料の控除を把握することは社会人になる上でとても重要です。

また、一部の企業では従業員が給与の一部を貯蓄や投資に充てることを支援する財形制度(勤労者財産形成促進制度)といった制度もあります。給与から自動的に一定額を積み立て、将来の資産形成を無理なく行えることは従業員にとっても嬉しいですね。

就活生・就活準備生の皆さんは、企業選びを行う際、単に基本給の額だけでなく、給与体系などを総合的に判断していきましょう。

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