ChatGPTで、ガクチカを書いてみた──ES作成に役立つ生成AIの就活活用術

就活ノウハウ

公開日:2023.06.27

ここのところ大きな話題になっている生成AI「ChatGPT」。ニュースなどでは、世界を変えかねない存在のように報じられています。4月時点での調査データによると※ChatGPTを使ったことがある学生は28.2%と、日常生活にも浸透してきています。ではこれを就活に活用できないか、と考えてみました。特に、エントリーシート作成時に苦労しがちな「ガクチカ」を書かせてみるとどうなるか?その作成経過と、ChatGPTを就活で有効活用するためのポイントをお届けします。 ※株式会社ディスコ「キャリタス就活2024 学生モニター調査結果」(2023年4月発行)

自分のことをAIが書いてくれるとしたら

ChatGPTを使う流れとしては、まず「プロンプト」と呼ばれる指示を出します。「どんな目的の文章か・文字数などの制限・入れ込むべき要素」といった内容を入力すると、AIが膨大な過去データから探して選んで文章として紡ぎ出します。こうして生成された文章を推敲させながら完成度を高めていくのが大まかなプロセスです。

では、就活に必要となるエントリシート、特にガクチカを書かせてみたらどうなるでしょうか。これについては、みんな気になるらしくネットの記事にもよく採り上げられています*。

自己PRやガクチカを作る場合は、いったん自分を客観視して情報を再構築する必要があります。この「客観化」をChatGPTに担当させるとよいでしょう。自分では難しい俯瞰的な視点で文章化してくるわけですから、まさに補助役に適したツールなのではないでしょうか。

では自分が投げかけた問いを、どう打ち返してくるか検証してみます。

*キャリタス就活 公式アカウント:https://www.instagram.com/careertasu/
にも記事が掲載されています。

試しに、ガクチカを書かせてみました

まずは、自分が学生時代にやってきたこととして下記のような情報を設定してみました。
あくまでも検証用のフィクションです

・学生時代はアーチェリー部に所属していた。関東学連のランキングは上位にいたが、優勝は今まで経験がなかった。

・しかし最上級生の時ついに優勝し全国大会へ出場した。全国大会のトーナメント戦では二回戦で敗れたが、創部始まって以来の快挙を成し遂げた。

という指示で書かせてみました。ここでは、エントリーシートの文字数制限として多く見られる400文字以内と指定。その結果が以下の文章です。


学生時代、私はアーチェリー部に所属し、関東学連の上位ランキングを誇りました。しかし、優勝の経験は今までありませんでした。それでも最上級生の時、私たちはついに優勝し、全国大会への出場を果たしました。全国大会のトーナメント戦では二回戦で敗れましたが、創部以来の快挙を成し遂げたのです。

この経験から、私は困難を乗り越える強い意志とチームワークの重要性を学びました。私は自己成長を追求し、困難な状況でも諦めずに前進することができる自信があります。また、優勝の瞬間を迎えた喜びと感動は、私にとって忘れられない瞬間です。私は貴社のチームに貢献し、共に成長し、目標を達成するために全力を尽くします。貴社の文化や価値観にも真摯に取り組み、貴社の成功に貢献できることを誇りに思います。私の経験と意欲を活かし、共に成長する機会をいただければ幸いです。


前半は指示のまま、後半でそこから得た教訓を交えて何を学んだか、これからどうしたいかについて触れています。でもどこか優等生的で無難な文章ですね。そこで、もう少しディテールに踏み込んで、

・自分は主将だったが、個性的なメンバーのチームをまとめるのに苦労した。

・全国大会二回戦は雨の日で気温が低くコンディションが悪かったが、チーム全員でがんばった。

ということを加えてやはり400字以内で書かせてみました。


学生時代、アーチェリー部に所属し、関東学連の上位ランキングを誇りましたが、優勝経験はありませんでした。私は主将として個性的なメンバーのチームをまとめるのに苦労しましたが、コミュニケーションとリーダーシップ力でチーム結束を高めました。そして最上級生の時、ついに優勝し、全国大会への出場を果たしました。全国大会二回戦は雨の日で気温も低くコンディションが悪かったですが、チーム全員で困難に立ち向かいました。創部以来の快挙を成し遂げました。

私は目標に向かって努力し、困難な状況でも諦めずに前進する意欲を持っています。リーダーシップや協調性を発揮し、チームの成功に貢献することができると自負しています。貴社での成長と共に、チームの一員として貢献できる機会をいただければ幸いです。


要素を多くしたせいか、「自分は入社してどうなりたいか」についての部分が抜けてしまいました。これではどこか中途半端な印象が拭えません。就活で使うためには、もう少し差別性のある要素やくだりがほしいところです。

設定を増やし、さらに完成度を上げてみました

そこで、部活動以外に付随して行ったこととして、

・アーチェリー教室を開き、地元の子どもたちにアーチェリーを教えた。

という項目を入れてみました。


学生時代、私はアーチェリー部に所属し、関東学連の上位ランキングを誇りましたが、優勝経験はありませんでした。主将として個性的なメンバーのチームをまとめるのに苦労しましたが、コミュニケーションとリーダーシップ力でチーム結束を高めました。そして最上級生の時、ついに優勝し、全国大会への出場を果たしました。全国大会二回戦は雨の日で気温も低くコンディションが悪かったですが、チーム全員で困難に立ち向かいました。創部以来の快挙を成し遂げました。また、私はアーチェリー教室を開き、地元の子どもたちにアーチェリーを教えました。地域貢献と教育の一環で自己成長を達成しました。私は目標に向かって努力し、困難な状況でも諦めずに前進する意欲を持っています。リーダーシップや協調性を発揮し、貴社のチームや社会貢献活動に積極的に貢献したいと考えています。貴社での成長と共に、地域や社会に貢献する使命感を持ち、全力で取り組むことをお約束します。


今度は「地域貢献」「社会貢献」といった言葉が現れています。少しガクチカとして受ける要素が出てきました。でも文章の流れは少しぎこちないですね。ではさらに、下記の情報をプラス。

・就職した企業に活かせる活動ができたと思う。


学生時代、私はアーチェリー部に所属し、関東学連の上位ランキングを誇りましたが、優勝経験はありませんでした。主将として個性的なメンバーのチームをまとめるのに苦労しましたが、コミュニケーションとリーダーシップ力でチーム結束を高めました。そして最上級生の時、ついに優勝し、全国大会への出場を果たしました。全国大会二回戦は雨の日で気温も低くコンディションが悪かったですが、チーム全員で困難に立ち向かいました。創部以来の快挙を成し遂げました。また、私はアーチェリー教室を開き、地元の子どもたちにアーチェリーを教える活動を行いました。

この経験から、教育やコーチングのスキルを磨き、就職した企業でも活かせると確信しています。私は目標に向かって努力し、困難な状況でも諦めずに前進する意欲を持っています。リーダーシップや協調性を発揮し、貴社のチームや社会貢献活動に積極的に貢献したいと考えています。貴社での成長と共に、地域や社会に貢献する使命感を持ち、全力で取り組むことをお約束します。


「コーチング」という言葉も入り、それなりにまとまってきたようです。若干文字数は多くなりましたが、自分の乗り越えた壁やその過程、そこから得た学びと自分のPRポイントも書かれているので、ガクチカらしさは濃くなりました。

どこまで完成度を高めるか、問いかけの内容を変えながら何度も試して、このように自分なりのガクチカを作らせていくことができます。また、文字数についても300字、200字と制限を変えて要約させられますので、各企業への対応が可能です。

なお、自分でブログを運営したりnoteなどに文章を書いたりしている人は、その内容をChatGPTにまとめさせようと考えるかもしれません。しかしURLを貼って指示しても「リアルタイムのウェブブラウジング機能はありません」と返されてしまいます。記事を貼り付けて内容をまとめさせることはできますが、文字数制限があるようです。運営会社のオープンAI社は明らかにしていないものの、日本語で2,000文字程度ではないかと言われていますので、それ以内に抑えておきましょう。

肝となるのは指示の仕方と自身のチェック

このように、自分の情報をChatGPTに伝えてガクチカに仕上げることは比較的簡単です。ただし、納得のいく文章を書かせるためには冒頭にも書いた通り「指示(プロンプト)」の出し方が重要です。この入力次第で生成の精度が大きく変わってきます。

・自分の立場を明確に

あなたになりきってもらうため「大学●年の就活生」であることを最初にはっきり伝えておきます。

・何を生成するかもはっきりと

「エントリーシートに記入するためのガクチカ」を作ることを明らかにしておきます。ChatGPTは、ブログやメルマガ、ツイートと、メディアによって書き方を変えることができます。

・制約条件を出す

「出力文字数●●字以内」「文章は簡潔に」といった具合に、条件を示しておきます。
また、書かせた文章は必ずチェックすることを忘れないでください。

・間違いのチェック

試しに有名人の情報をChatGPTに質問すると、全く違う答えが返ってくることはよくあります。あなたが入力した事柄を間違えて解釈していないか、十分にチェックすることが肝心です。また、ChatGPTが収集している情報は2021年までということがサイトに記されています(最新バージョンであるChatGPT-4は画像や音声などのフォーマットも入力データとして処理できるように進化。リアルタイムで情報収集ができ、扱える入力文字数は25,000字まで拡大*)。
*出典: https://openai.com/product/gpt-4

・情報をこまめに追加

ChatGPTの特徴は、生成された文章を踏まえて書き直してくれること。文章を読み、足りない点や強調したい点に関する情報を追加しながら、何度も書かせてください。そして、自分の体験と合っているかどうかのチェックを随時行いましょう。あくまでも「あなたらしい」ガクチカを書くことが目的です。

平均的すぎる文章を自分で手直し

ChatGPTは誰が見ても納得するように無難な文章を書いてきます。言い換えると、あまりにも平均的過ぎると言っていいでしょう。これにあなたらしさを加えてオリジナルの文章に仕上げていってください。既にAIによってあなたらしさは浮き彫りにされているはず。その要素を文章に盛り込めば、あなたしか書けないガクチカが完成します。

おさらいとして、今回入力したプロンプトを記しておきます。これを自分なりに書き換えてみてください。就活のエントリーシートに使用するガクチカを、下記の内容を使用して書いてください。条件として、

・400字以内であること。
・企業の採用担当者の心に響く文章であること。

<内容>
・学生時代はアーチェリー部に所属していた。関東学連のランキングは上位にいたが、優勝は今まで経験がなかった。
・しかし最上級生の時ついに優勝し全国大会へ出場した。全国大会のトーナメント戦では二回戦で敗れたが、創部始まって以来の快挙を成し遂げた。

さらに、追加条件として下記を指示しました。

・自分は主将だったが、個性的なメンバーのチームをまとめるのに苦労した。
・全国大会二回戦は雨の日で気温が低くコンディションが悪かったが、チーム全員でがんばった。
・アーチェリー教室を開き、地元の子どもたちにアーチェリーを教えた。
・就職した企業に活かせる活動ができたと思う。

プロンプトは箇条書きで整理して書くとよいと言われています。AIと言っても相手はコンピューター。はっきりした指示を出した方がより効率的に伝わります。

ただし、個人情報の流出には細心の注意を

一方で、ChatGPTのリスクも指摘されています。それは、入力された情報も学習データとして蓄積してしまうこと。もちろん個人情報もその範疇に入ってしまいます。従って、個人を特定できる名前・住所・電話番号等の入力は避けなければなりません。例えば今回サンプルとして使った条件で言うと「個性的なメンバー」「アーチェリー教室で教えた子ども」の情報などは絶対に書かないこと。悪意を持った誰かにそれらの情報が盗まれたり悪用される危険性があります。

国や地域によっては、ChatGPTの使用を禁止している企業・官公庁も多く見られます。それだけ個人や企業の情報漏洩のリスクに敏感になっているのです。これからもセキュリティに関する議論は続くでしょうし、提供しているOpenAI社でも対策をさらに進めていくと思われます。

ChatGPTを有効活用する方向性の日本でも、それらのリスクは常に意識する必要があります。それさえ間違えなければ、心強く便利な存在であることは間違いありません。まずはガクチカや自己PR作成ツールとして使いこなし、可能性の片鱗に触れるところから始めてみてください。

PROFILE

鳥羽山 康一郎(とばやま こういちろう)
静岡県生まれ。広告制作会社、外資系広告代理店にてコピーライター、クリエイティブディレクター、プランナーとして勤務後、2006年よりフリーランスとして独立。外資系マーケティング理論の知見を活かし、広告・Webライティング等を中心に執筆活動を展開中。地方取材、インタビューも得意とする。

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