【業界を徹底解剖】流通・小売業界の魅力や求められる資質とは?

業界・職種・企業研究

公開日:2024.10.16

流通・小売業界は、最終消費者と商品・サービスの接点を担う、重要な役割を果たす業界です。メーカーと小売業とをつなぐ卸売業や、スーパーや百貨店、さまざまな専門店など消費者と直接かかわる仕事などが存在し、必要な商品やサービスを必要な人に届ける仕組みを支えています。

この記事では、この業界を志望、もしくは興味をもつ学生の皆さんに向け、流通・小売業界の基礎知識や働く魅力、求められる資質について解説します。

そもそも流通・小売業界とは?

流通・小売業界は、商品が製造元から消費者に届くまでのプロセスを担う企業群を指します。具体的には、以下のような業態が含まれます。

【流通・小売業界】
流通・小売業界は、商品が製造元から消費者に届くまでのプロセスを担う企業群を指します。具体的には、以下のような業態が含まれます。

卸売業者:メーカーから大量の商品を購入し、小売業者に販売する。

百貨店やスーパー・コンビニエンスストア:メーカーや卸売業者から仕入れた幅広い商品を顧客に販売する。

専門店:家電量販店やドラックストアなど、特定の商品カテゴリーのみを販売する。

オンラインショップ:インターネットを通じて商品を販売する。

流通・小売業界の大手企業と業界の動向

流通・小売業界の大手企業と、業界全体の動向について見ていきましょう。
まず、代表的な企業を紹介します。

■流通・小売業界の大手企業

・国分グループ本社
1712年創業で、主に食品や飲料の卸売業を中心に事業を展開する企業です。国内外の食品メーカーや小売業者との強固なネットワークをもっており、1万社のメーカーから60万もの商品を仕入れ、小売・外食の企業に商品を販売しています。また、高度な流通システムを駆使して、日本の食品流通において重要な役割を果たしています。

地域の特産品や地産地消の促進、サステナビリティへの取り組みなど、多岐にわたる社会貢献活動も積極的に行っています。卸売業を中心に幅広い事業領域があるため、従業員には多様なキャリアパスが提供されているのも特徴の一つです。また、配偶者の転勤や育児などのやむを得ない事情で一度退職した人を対象にした再雇用制度「キャリアリターン制度」があります。

・イオン
日本を代表する流通・小売業界の大手企業で、総合スーパー(GMS)を中心に展開しています。1758年に三重県四日市で創業した「岡田屋」を源流として事業を発展させ、1969年に「ジャスコ」、その後、2001年に「イオン」となりました。環境配慮と効率化を目指し、現在、グループ内の約4,000店舗(2024年6月時点)を対象に、独自のアプリ「iAEON」を通じてレシートをデジタルで受け取り、管理する電子レシートサービスを拡大する計画を進めています。

また、東南アジアで店舗数を増やすなど海外展開にも積極的です。従業員の福利厚生に関しては、2023年にパートタイマーと正社員、それぞれの賃金を引き上げる方針を発表していて、労働市場での競争力を維持しようとしています。

・セブン&アイ・ホールディングス
日本の流通・小売業界を代表する企業で、子会社の「セブン-イレブン・ジャパン」が運営するコンビニエンスストア事業を中心に、スーパーマーケット事業などを展開しています。全世界に約83,000店舗以上(2023年2月時点)、日本国内だけでも約21,000店舗(2022年12月時点)あるコンビニエンスストア「セブン-イレブン」は、日本のコンビニ市場で圧倒的なシェアをもち、業界をリードしています。新規の商品開発やサービスの革新にも積極的で、nanaco(ナナコ)という電子マネーを通じてキャッシュレス決済の促進にも力を入れています。

また、女性の活躍推進にも積極的です。女性の管理職比率を2026年2月末までに30%にする、介護離職者ゼロなどの目標を掲げ、取り組みを進めています。

・ローソン
日本の大手コンビニチェーンの一つです。1975年の創業以降、拡大を続けていて、2024年2月時点で、国内に約14,000店舗、中国やインドネシアなどを中心に海外に約7,4000店舗あまりを展開しています。「地域密着」を目指し、2023年から全国8エリアに「エリアカンパニー制」を導入し、権限と機能を各エリアに移行して、経営の執行度を高める取り組みを進めています。新しい仕組みづくりにも積極的で、2021年からは、「Uber Eats」を利用して医薬品を届けるサービスを国内で初めてとしてはじめ開始しました。

社員のチャレンジを支援する一貫として、一定の条件を満たした社員に「FA(フリーエージェント)権」を付与し、希望する職種・勤務地に確実に異動できるようにする制度を設けています。

・ファーストリテイリング
「ユニクロ(UNIQLO)」ブランドで知られるグローバルな小売企業です。シンプルで機能的な衣料品を手頃な価格で提供することで、国内外で広く支持されています。ユニクロ以外にも「GU」や「Theory」、「PLST」などのブランドを運営しています。特にユニクロはアジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界各地で多くの店舗を運営し、国際市場でのプレゼンスを強化しています。グローバル化の一環として、社内公用語として英語を採用しています。

また、不要になった衣料品を回収し、リサイクルした羽毛を使って新たなダウンジャケットを製造・販売するなどしていて、サステナビリティに対する取り組みも強化しています。

■流通・小売業界の動向

・デジタルトランスフォーメーションの加速:
新型コロナウイルスの流行と長く続いた外出規制の影響で、オンラインショッピングの需要が急増しました。これに伴い、業界全体でeコマースへの対応やデジタル技術を活用した効率化が進んでいます。AIやビッグデータを活用したマーケティングや商品管理など、各企業が新たな技術を導入しながら戦略の強化に力を入れています。

・サステナビリティへの関心の高まり:
環境に配慮したビジネスモデルが注目されています。店舗で古着を回収し、ポリエステルや羽毛などの素材をリサイクルし、再び商品として売り出す取り組みなどが進んでいます。また、廃棄物を減らすためのリフィル(詰め替え)製品の展開や、プラスチック製品や化粧品の容器の回収なども積極的に進められるようになっています。

・「2024年問題」への対応
労働力不足や労働時間規制の強化などの、いわゆる「2024年問題」への対応が急ピッチで進んでいます。流通・小売業界においても、配送頻度の低下による欠品リスクの高まりや、配送コストの増加による商品価格の上昇などの恐れがあります。その対策として、フードロス削減に向けた取り組みやコストをおさえるための商品企画や管理が求められます。

流通・小売業界で働く魅力

流通・小売業界は、単に商品やサービスを最終消費者に届けるだけではなく、豊かさや安心感など、生活する上で重要な価値を提供します。この業界でキャリアを築くことは、人々の豊かな暮らしを支えるとともに、よりよい社会の仕組みづくりに貢献していくことにつながります。具体的にどのような魅力があるか、解説します。

・キャリアの多様性と成長機会:
流通・小売業界は非常に多様なキャリアが存在し、たとえば営業、マーケティング、IT、カスタマーサービスなど、さまざまな分野で活躍することが可能です。また業界は常に進化しており、DXやサプライチェーンの改善など、新しいスキルを習得するなど成長機会も豊富です。

・消費者との接点:
消費者に商品を提供する環境の中で、自分の仕事が消費者の生活にどのように影響を与えているかを実感できます。また、人と接する仕事を好む人にとっては顧客の満足度をじかに感じられる点が魅力です。

・国際的視野の拡大:
流通・小売業界は、国際的な供給チェーンや貿易の影響を強く受けるため、国際的な視野をもつことが重要です。グローバルなトレンドを把握し、多様な文化や市場のニーズに応えることで、国際的なビジネス環境でのキャリア形成が可能です。

・チームワーク力と問題解決能力の向上:
この業界では、季節や消費者のニーズの変化に対応しながら日々チームで協力して目標を達成していく中で、チームワーク力や問題解決能力を高めることが期待できます。

・社会的インパクトとサステナビリティへの貢献:
流通・小売業界は、規模が大きいだけに持続可能なビジネスモデルやエコフレンドリーな製品の提供など、社会的な責任を果たす役割を期待されています。このような取り組みに参加することで、社会貢献を実感しながら働くことができるでしょう。

流通・小売業界で働く人に求められる資質

ここでは、流通・小売業界で働く人材に求められる資質を紹介します。どのような能力が必要とされているのか、参考にしてください。

1.顧客対応力:
顧客と直接接する機会が多いため、優れたコミュニケーション能力や問題解決能力が求められます。また顧客のニーズを理解し、それに応じたサービスやサポートを提供することが重要です。

2.柔軟性と適応力:
消費者のニーズや市場の動向は、日々目まぐるしく変化します。そんな状況を楽しむマインドセットをもち、柔軟に変化に適応する力が求められます。

3.組織力とチームワーク力:
多くの業務がチームで行われるため、協力し合って目標を達成する能力が求められます。また、各部門間での連携が重要となるため、ほかのチームメンバーや部門との効果的なコミュニケーションも必要です。

4.データ活用能力:
売り上げや在庫管理、販売データの分析など、データを活用した業務が多く基本的なデータ分析スキルが求められます。これにより、効率的な業務遂行や戦略的な意思決定が可能となります。

5.責任感:
顧客に対して提供する商品やサービスに責任をもつことが重要です。責任感をもち、品質を向上させることで顧客との深い信頼関係を築くことができます。

まとめ

流通・小売業界は、わたしたちの日々の生活に密接にかかわる重要な業界であり、消費者の生活の満足度に大きな影響力をもっています。また、消費者との距離が近い業界なだけに、新しいサービスや技術革新への対応が常に求められる業界でもあります。この業界でキャリアを積むことで、変化の激しい時代の中で新しいスキルを身につけながら柔軟に対応できる能力を磨くことができるでしょう。

PROFILE

小柳 眞理
ジャーナリスト/キャリアコンサルタント
大学卒業後、25年にわたり日本とアメリカの新聞、テレビ、Web、雑誌で報道記者・編集者として取材・執筆・編集に従事。政治、外交、地方行政を中心に、のべ2000人以上にインタビューを行う。2015年に子供を出産後、全国転勤をしながら仕事と子育てを両立。育休復帰後の働き方に悩んだ経験から女性のキャリア支援を志し、2023年、国家資格キャリアコンサルタント、CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)資格を取得。同時期、記者として得た知識を深めるため大学院に入学し、20代の仲間たちとともに国際関係論を学ぶ。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士前期課程修了(国際関係論修士)。海外留学中の学生を含む大学生・大学院生のキャリア支援や、さまざまな業種で働く女性へのキャリアコンサルティングを実施している。

この記事のタグ

関連記事

最新記事

編集部のおすすめ記事

公式アカウントで最新情報を配信中!