【業界を徹底解剖】インフラ・交通業界の魅力や求められる資質とは?

業界・職種・企業研究

公開日:2024.10.02

インフラ・交通業界は、私たちの生活に深く根ざした重要な産業です。都市の発展や地域の活性化に欠かせないインフラと、日常の移動を支える交通システム。これらの整備と運営を担うこの業界は、絶え間ない技術革新と環境への配慮が求められます。 本記事では、インフラ・交通業界の全体像から最新動向、働く魅力や求められる資質について詳しく解説します。

そもそもインフラ・交通業界とは?

インフラ・交通業界とは、社会の基盤となる道路や施設などのインフラを提供し、物流や人の移動を支える業界を指します。この業界には、私たちの生活に欠かせない基盤施設の設計、建設、維持管理を担う企業が含まれます。

また、公共交通機関や物流サービスを提供する企業もこの業界に含まれます。これらは国や地域の経済発展と社会生活を支える重要な役割を果たしており、その仕組みは高度に専門化されています。インフラ・交通業界は、国家や地方自治体と緊密に連携して事業を進めることが多く、公共性と効率性の両立が求められます。

■インフラ・交通業界とは

インフラ・交通業界は以下のような分類に分けられます。

【電力・ガス・エネルギー】
安定した電力やガス、石油の供給は、日常生活や経済・産業活動にとって非常に重要です。電力には、発電所(火力、原子力、再生可能エネルギーなど)の建設と運営が含まれます。また、石油元売り会社は、石油の輸入から精製・販売までのすべての過程を扱います。

【鉄道・航空】
人々の移動や物流を支えるために必要不可欠な、鉄道、空港などの建設と維持管理を行います。電車、航空機などの公共交通機関の管理・運営を担う企業も含まれます。

【陸運・海運・物流】
陸運・海運には、車や船などを使い、人や物を目的地まで運送する企業があります。また物流には、さまざまな物を仕分け、保管管理する倉庫業を営む企業も含まれます。

インフラ・交通業界の大手企業と業界動向

次に、インフラ・交通業界における大手企業や業界全体の動向について見ていきましょう。

■インフラ・交通業界の大手企業

【インフラ業界】

・東京電力ホールディングス
東京電力は、日本最大の電力会社の一つで、関東地方を中心に電力供給を行っています。火力発電所、水力発電所など多様な発電設備を有し、安定した電力供給を提供しています。東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入にも力を入れており、太陽光や風力発電の普及に貢献しています。企業としての社会的責任を果たしながら、持続可能なエネルギー供給の実現を目指しています。

・東京ガス
東京ガスは、日本最大の都市ガス供給会社で、関東地方を中心に家庭用および業務用ガスの供給を行っています。天然ガスの供給を主軸に据え、エネルギーの安定供給と環境保護を両立させる取り組みを推進しています。ガスの供給のみならず、ガス機器の販売やエネルギーソリューションの提供も行い、総合エネルギー企業としての地位を確立しています。また、再生可能エネルギー事業やスマートエネルギーシステムの開発にも力を入れています。

・ENEOSホールディングス
ENEOSホールディングスは日本最大のエネルギー会社で、石油や天然ガスの販売など多岐にわたる事業を展開しています。エネルギー・素材の安定供給とカーボンニュートラル社会の両立に向けた取り組みを行っています。温室効果ガス排出削減を進めるとともに、既存のエネルギーを異なるエネルギー源の持続可能なエネルギーに転換を図るエネルギートランジションなどを推進しています。

【交通業界】

・東日本旅客鉄道(JR東日本)
JR東日本は日本最大の鉄道会社の一つで、関東・東北地方を中心に広範な鉄道路線を運営しています。新幹線から通勤電車まで幅広いサービスを提供しており、年間の輸送人員は60億人以上となっています。技術革新とサービス向上に積極的で、最新の車両導入や駅施設の改良を進めています。また、地域活性化や観光振興にも力を入れており、鉄道網を通じて社会に貢献しています。

同様に国鉄を分割・民営化した企業としてJR西日本やJR東海などがあり、それぞれの企業が地域の鉄道網を支えています。

・東日本高速道路(NEXCO東日本)
NEXCO東日本は、日本の高速道路網を管理・運営する大手企業で、関東以北の広範な高速道路ネットワークを有しています。高速道路の建設、維持管理、運営を行い、交通の円滑化と安全性の確保に努めています。また、サービスエリアの充実や環境配慮型の取り組みも推進しています。

同様に日本道路公団を分割・民営化した企業としてNEXCO中日本やNEXCO西日本があり、それぞれの企業が地域の高速道路網を管理・運営しています。

・ヤマトホールディングス
ヤマトホールディングスの子会社で宅急便サービスを中心に事業を行うヤマト運輸は、日本国内で最大手の宅配便業者であり、「クロネコヤマト」の愛称で広く知られています。全国に広がる配送ネットワークを持ち、個人向け宅配便「宅急便」をはじめ、法人向け物流サービスやクール宅急便など、多様なサービスを提供しています。さまざまな事業を行いながら物流プロセスの効率化やビックデータ分析を活用した配送の最適化や自動化などの取り組みを行っています。

■インフラ・交通業界の動向

近年、インフラ・交通業界ではデジタル技術の導入や環境負荷の低減が大きなテーマとなっており、スマートシティの推進やIoT技術の活用による効率化や安全性の向上への取り組みが進められています。

・カーボンニュートラルへの取り組み:
日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言していて、インフラ・交通業界が果たす役割に期待が集まっています。現在、再生可能エネルギーを活用した鉄道やバスの運用が進んでいるほか、自動運転技術やドローン配送といった次世代の交通手段が実用化に向けて開発されています。また、太陽光発電や風力発電といったクリーンエネルギーの導入も注目されています。

・デジタル化:
デジタル技術を活用した交通管理の効率化と安全性の向上への取り組みが進んでいます。スマートシティやMaaS※などの新しい交通モデルが注目され、リアルタイムデータを活用した交通制御や自動運転技術の開発が進展しています。デジタルインフラの整備により、渋滞の緩和や輸送計画の最適化が進み、物流業界や公共交通においてもコスト削減と顧客サービスの向上が期待されています。

・ドライバー不足:
高齢化によるドライバー不足が深刻化しています。労働力不足や労働時間規制の強化などに伴う「2024年問題」の解決策として、運行管理などのデジタル化が進められているほか、ドライバーの待遇改善やシニア人材の確保、共同配送の導入など、業界全体でさまざまな模索が続いています。
※MaaS(Mobility as a Service):スマートフォンアプリなどを通じて、複数の交通手段を統合し、利用者に一括で提供するサービスのことです。バスや電車、タクシー、自転車シェアリング、カーシェアリングなどが含まれます。利用者はひとつのプラットフォームで予約、支払いができるため、移動の効率化、利便性の向上が期待されます。

インフラ・交通業界で働く魅力

インフラ・交通業界は、社会の基盤を支える重要な分野であり、多くの人々に影響を与える仕事です。インフラ・交通業界で働く魅力について、以下にまとめました。

・社会貢献度が高い:
この業界は、人々の暮らしや都市の発展・地域の活性化に不可欠であり、社会全体に貢献することで高い満足感ややりがいを感じることができます。

・長期安定の雇用環境:
常に必要とされている事業であるため、経済変動の影響を受けにくく、安定した雇用環境が期待できます。

・技術の最前線で働ける:
最新技術の導入や大規模プロジェクトの推進などを通して、自身の成長を実感しやすい環境です。社会に直結する大きな事業に携わることが多く、達成感を味わうことができます。

・地域社会の発展に寄与できる:
インフラ・交通業界での仕事は地域社会の発展に直接寄与するため、その影響力と意義の大きさを実感することができます。

・多様なキャリアパス:
技術職だけでなく、営業、企画、管理職など多様な職種が存在し、さまざまなキャリアパスを選ぶことができます。

インフラ・交通業界で求められる資質

インフラ・交通業界で成功するために求められる資質とその理由をまとめます。

1.技術的な専門知識とスキル:
企業や職種によっては土木工学、電気工学、機械工学などの専門知識が不可欠です。また、新しい技術やソリューションに対する柔軟な対応力も求められます。

2.安全意識の高さ:
人々の暮らしや輸送にかかわる極めて重要な事業を担っているため、計画立案から管理・運営まで、安全性がもっとも重視される業界です。安全への意識を常に高くもつことが求められます。

3.チームワークとコミュニケーション能力:
多くの技術者・関係者と連携しながらプロジェクトを進めるため、優れたチームワークとコミュニケーション能力が欠かせません。

4.持続可能な社会を実現するための環境意識:
地球環境への配慮と意識が高く、持続可能な社会の実現に貢献しようとする姿勢が求められます。

5.法規制やガイドラインの理解と遵守:
建設や交通に関する法規制やガイドラインを理解し、日ごろから遵守することが求められます。

まとめ

インフラ・交通業界は、社会の基盤を支える重要な役割を担っており、技術革新や環境対策が進む中で、その重要性はますます高まっています。この業界はキャリアの安定性が高いことに加え、自分の仕事が人々の生活や経済活動に貢献していることを感じられるやりがいのある仕事ができます。

まだ希望する業界が定まっていない方は業界研究をはじめ、多角的な情報収集が欠かせません。ブレない「就活の軸」を定めるためにも、まずはしっかりと自己分析を行い、興味をもった業界から情報収集をしていきましょう。

PROFILE

小柳 眞理
ジャーナリスト/キャリアコンサルタント
大学卒業後、25年にわたり日本とアメリカの新聞、テレビ、Web、雑誌で報道記者・編集者として取材・執筆・編集に従事。政治、外交、地方行政を中心に、のべ2000人以上にインタビューを行う。2015年に子供を出産後、全国転勤をしながら仕事と子育てを両立。育休復帰後の働き方に悩んだ経験から女性のキャリア支援を志し、2023年、国家資格キャリアコンサルタント、CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)資格を取得。同時期、記者として得た知識を深めるため大学院に入学し、20代の仲間たちとともに国際関係論を学ぶ。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士前期課程修了(国際関係論修士)。海外留学中の学生を含む大学生・大学院生のキャリア支援や、さまざまな業種で働く女性へのキャリアコンサルティングを実施している。

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