「障害のない社会をつくる」株式会社LITALICO人事が重視する、社会課題に向き合う人財に必要な資質とは?

体験談・インタビュー

公開日:2023.07.11

SDGs『Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)』の概念やサステナビリティ(持続可能性)の考え方は、近年、広く社会に浸透してきました。また、ダイバーシティの推進も積極的に行われており、多様性を許容する社会の実現に向けた様々な取り組みがなされています。

そうした社会環境において、企業の新卒採用時の選考や、Z世代と言われる今の就活生・就活準備生の企業選びの基準も変化してきているといいます。そこで今回は、「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、就労支援や教育サービスを提供している株式会社LITALICOで、人事統括部のマネージャーである河合さんに、社会貢献性の高い企業へ志望する学生の就活事情や、同様の業界を志望する学生向けのアドバイスなどを伺いました。

事業を通じて、多様な人が幸せになれる「人」が中心の社会をつくる

──はじめに、LITALICO様について簡単に教えてください。

当社は2005年に、社会課題をビジネスの力で解決することを目指し創業しました。現在は「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げ、障害者の就労支援サービス、幼児教室・学習塾、インターネットメディア事業などを展開しています。

障害は個人の側にあるものと一般的に思われていますよね。弊社では、障害は「一人一人の生きづらさを感じる原因は、社会が多様な人がいるという前提に作られていない」から生まれるものだと考える、障害の社会モデルという考え方を参照して、社会側にある障害にアプローチします。

「障害のない社会」の実現にむけて、社会を多様な人々が生きづらさを感じずに済み、多様な人が幸せになれる「人」が中心の社会へ変革するための事業に取り組んでいます。

──河合様のプロフィールを教えてください。

2017年に新卒で入社しました。元々教育に関心があり、大学院ではオンライン授業をどのように教育で活用するかを専門に扱っている先生のもとで学んでいました。その頃から、画一的な教育ではなく、一人一人に合わせた個別の学びが大事になると感じており、教育事業で、かつ既存の教育制度に含まれない事業を行っている会社としてLITALICOに興味を持ち、入社を決めました。

入社後は、発達障害のお子さんの保護者向けWebメディアの営業職からスタート。その後、事業所で使用する教材や職員向けのeラーニングコンテンツの開発、コールセンターの立ち上げ、企画系業務のマネージャー職などの様々な職種を経て、2022年から新卒採用、育成を行う人事に異動し今に至ります。

大切なのは誰かが変えてくれると思うのではなく自分で変えようとすること

──御社が採用で重視していることを教えてください。

「人はみんな違う」という前提がある会社なので、その人のその人らしさを生かして働いていける環境を作ろうという想いがあります。会社は働いている人の力を借りてビジョンの実現を目指しているので、働いている人も各々にとっての大切なことを実現できるよう、働いている人と会社の双方にとってwin-winの関係であることを重視しています。

具体的には、社会の仕組みを変えていく上で、スケールを目指しているからこそできることやサステナブルに社会課題に取り組むことに関心がある方に、当社 のリソースを使って自分のビジョンも会社のビジョンも実現していってほしいと考えています。

──社会課題の解決を目的に掲げる御社に応募する学生の特徴などがありますか?

自分がどのような社会を作りたいかのビジョンを持っている方が増えていると感じます。特に、社会で生きる一人一人の可能性を追求したい、という想いを持っている方が多い印象です。

また経済格差、教育格差、居場所のなさに対する想いや、自分自身の教育上での経験からくる想いなどを持っている学生も多いですね。

また、就職活動以前から社会課題などを意識しているためか、早くから企業やNPOなどでインターンシップ等に参加している学生が多いように思います。

また、当社には留学経験など、マイノリティ性の高い経験をされた方も多いです。留学を通じて他文化との違いや違和感に気づくきっかけが多いからか、人それぞれに違いがあることや、社会には目に見えない特権性が存在しているのではという前提で物事を見ている人が多いのだと思います。

弊社以外の応募先としては、人材系や教育系、公共系のコンサルティング会社などが多いのですが、応募先選定の基準として、「ビジョンが明確かどうか」と「成長環境があるかどうか」を重視して検討しているようですね。

──社会貢献性の高い事業に関わってもらうからこそ、採用にあたって重視する部分は?

今、目の前にいる人にどのような価値を届けるか・困っている人に何をしようかという視点と、それが起きていることの原因を考え、仕組みをどう変えようか働きかける視点の両方を持ち合わせているかどうかですね。

仕組みへ働きかける視点とは、事業を何のためにやるかという目的を考えることや、事業を通して何が変わるのか・変えたいのかを問う視点を持つことです。

誰かが困っていた時に、顕在化している困りごとだけではなく、構造や他者との関係性から生じる困難までも捉えて変えていくことが求められており、広い視野を持って考えられるかも重視しています。

──入社後、活躍できるのはどのような人?

・自分なりの問題意識を持ってアクションを起こしている人
・自分で働きかけて物事を変えていくことに挑戦できる人

が活躍できるのではないでしょうか。

些細なことでもいいので、身近なことで関心を持ったことをそのままにせず、現場を見にいくなど情報収集するアクションを起こすことで、背景となる構造理解や課題について解像度を上げることができるのではないかと思います。そしてその上で、誰かが変えてくれると思うのではなく自分で変えようすることがとても重要だと考えています。

最近は、既存のルールや慣行を「変えて良い」という意識・原体験を持っている人が増えてきている印象があります。違和感を持ったことを変えていこうという意識を持っている方はこの業界が向いているのではと思いますね。

自分ではコントロールできないことに向き合った経験は、必ずその人の糧になる

──ソーシャルビジネスに関わりたい、社会に貢献する仕事に付きたいと考えている学生向けにアドバイスがあれば教えてください。

自分自身の身近なところでも良いので、問題意識や関心があるところに目を向けたり、関わってみて、新鮮で解像度の高い情報を増やしていく経験を積むことが重要だと感じています。社会から定義された社会課題を語るのではなく、自分が見た課題や困難さを話せるようになることが大事です。

また全てにおいて100点はない、という意識を持つことも必要だと感じます。トレードオフ(何かを達成するためには何かを犠牲にしなければならない関係のこと)やジレンマ(2つの相反する事柄で板挟みになり、窮地に追い詰められる状況を指す言葉)、があることに対して意識を向けて目をつぶらず、長く腰を据えて向き合っていくことが大切です。難しい現実に思考を停止させず、「その先に何かできることがあるのではないか」と仲間と色々と考えることが楽しいと思える方にはソーシャルビジネスは向いているのではないかと思います。

いきなり、社会課題に対してどうしようかと考えることはハードルが高いので、身近に起きていることや気になったことを見過ごさず、見に行ってみるだけでも良いと思います。

実際、最近お話しした学生から、外国人労働者の方が多く居住する団地があるエリアに住んでいて、近所の外国人労働者向けの日本語教室が気になり、様子を覗きにいってみたというエピソードを聞きました。行動としては「ただ見にいっただけ」なのですが、ある社会課題に関心を持った最初の行動でもあるわけです。この一歩を踏み出せるかどうかが結構重要なのではないかな、と思っています。

──社会貢献などを軸に就職活動をする学生に向けて、どのような視点で企業を見たらいいのか、どのように情報収集するのがおすすめか、などアドバイスがあれば教えてください。

業界問わず企業を見る視点としては、

・ビジネスモデルがどう進んでいるか
・お金がどうやって回っているのか
・事業がどういう構造で続いているのか

などを意識すると良いでしょう。特に社会課題を取り扱うビジネスにおいて、ビジネスモデルに注目することは重要です。社会課題は「社会にとって課題」であるが、ビジネスが成り立つのは「顧客にとって課題」のため、社会課題をビジネスで解決しようとするとズレが生じやすいです。このズレをビジネスモデルがどう埋めているかを注目することで、その事業が持続的なのかどうかを判断することができると思います。

また、自己分析の中で自分の成長要素を知っておくことが良いと思います。

例えば、

「高い目標があればがんばれる」
「志が高い仲間がいるからがんばれる」
「待遇が良いからがんばれる」

など自分のがんばれるドライバーが何かを見極めて、企業探しの軸に入れておくとミスマッチを防げると思います。

その中で特にソーシャルビジネスに関わりたい学生の方は、関心のあるテーマにどれくらいの距離感で関わりたいかの視点も採り入れることも大事だと感じます。

例えば教育業界だと、「教員のように現場に近い場所で関わりたいのか」「教材を作るといった間接的に現場に関わる距離感で関わりたいのか」、または「文科省のように政策を作る距離感で関わりたいのか」など、同じテーマでも関わり方の距離によって目指す会社も変わってくると思います。

──最後に学生にメッセージをお願いします。

学生さんとお話していて思うのですが、あまり意識せず「就職活動ってこういうものだろう」と、王道のやり方に合わせにいってしまっている方も多いように感じます。それよりも、自分だからこそ発揮できている好奇心を突き詰めていくことに挑戦していくが大事なのではないかと思います。

そして、その過程の中で、いろんな難しいことや自分ではどうにもできない課題と出会ったりすることがあるのではないかと思います。そのような経験をすると、何らか成果を生み出せず無力感を味わうこともあると思いますが、自分ではコントロールできないことに向き合った経験は、必ずその人の糧になると私は信じています。

明確な成果が出た経験がなくても、大きな社会課題を解決した経験がなくても、身近な問題に対して暫定解を出し続けるしかないことにどう向き合ってどう考えて、どう歩んできたかこそが重要なのだと思います。

PROFILE

中尾 あずさ
大学卒業後、新卒で旅行会社にて営業・海外添乗員を経験後、大手人材会社へ転職。営業・人材育成・研修講師を行う。その間、アルバイト→契約社員→正社員→時短勤務と様々な勤務形態を経験。在籍中に3人の子供の出産・育児休暇を経て仕事と子育てを両立。2011年にキャリアカウンセラー(CDA)資格を取得。副業にてトータル3500人の相談業務に従事し独立。高校、大学でエントリーシートの添削や面接対策、進路相談など就職活動支援や就業中の方へのキャリアコンサルティングを実施。

【主な資格】
・キャリアカウンセラー CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
・国家資格キャリアコンサルタント
・青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー
・育休後アドバイザー

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