会社を退職したら研修費用を返さないといけないの?【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2026.05.20
この記事でわかること
- 研修費用は原則として会社負担
- 研修は業務の一環と考えられており、返還請求は例外的な扱いが多い
- 自ら希望して受講したり、業務との関連性が低い内容の場合はトラブルになる可能性もある
これから就職する皆さんが今後、転職やキャリアチェンジを決意して退職を申し出た際、会社から研修費用の返還を求められるケースがあります。何気なく受けた研修や資格講座が、退職時に「返還義務」として問題になることもあるため、事前に正しい知識をもっておくことが重要です。この問題について弁護士が答えます。
退職時に研修費用を請求されるのはなぜ?
入社後に受けた研修や資格取得支援が、退職時に「費用を返してほしい」と言われるケースがあることをご存じでしょうか。
たとえば、「会社が費用を負担して海外研修に参加させたのだから。」、「資格を取得できるように会社が資格スクールの費用を支払ったのだから。」といった理由によるものです。
しかし、ここで重要なのは退職したからといって、会社からこのような請求を受けた場合、必ず返還に応じないといけないのかという点です。
研修費用は本来誰が負担する?
そもそも、研修費用は会社、従業員個人のどちらが負担すべきものなのでしょうか?
研修費用は本来、会社が負担すべきものです。
というのも、研修は、従業員のスキルアップによって会社の業績を向上させるという、いわば会社のためになされるものだからです。本来、研修は業務の一環なの
です。
研修費用返還契約は有効?裁判で重視される5つの判断ポイント
しかし、実際は、「〇年以内に退職した場合には研修費用を返還する。」といった内容の契約を会社と従業員の間で締結しているケースが結構あります。この場合 は、どうなるのでしょうか?
前述通り、研修費用は原則、会社が負担すべきものです。
また、労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めています。これは、労働者の退職の自由を不当に制限しないための規定ですが、退職に伴い研修費用の返還を求める契約が、ここでいう「違約金」や「損害賠償額の予定」にあたるとして無効となる可能性もあります。
このような契約内容の有効性をめぐって、過去にいくつもの裁判が起こされています。
その際、裁判所の判断のポイントとしては、以下の5つが重要視されます。
①研修が従業員本人の自由な意思によるものなのか
②研修内容と業務の関連性の程度
③返還金額が過大でないか
④返還条件が従業員の退職の自由を不当に制限する内容になっていないか
⑤従業員が強制等されることなく自由な意思によって契約内容に同意しているか
などが挙げられます。
たとえば、上記①②について、従業員が自ら希望して研修を受講し、研修内容も自己研鑽的なものであったり、退職後も研修で得たスキルを活用できるといった場合には返還契約は有効という結論に傾くことになります。反対に、会社の業務命令により研修を受講し、研修内容も業務に直結しているという場合には無効の可能性が高くなります。
また、④の例として、「研修に参加してから10年以内に退職した場合には返還」など、返還が免除されるまでの期間があまりにも長い場合には、退職の自由を不当に制限しているとして無効の可能性が高くなると言えます。
このように退職に伴う研修費用の返還について会社と合意してしまった場合であっても、その合意が無効となる場合があります。
このようなケースに遭遇しないことが最善ですが、もし今後会社から研修費用の返還を求められた場合には、先程お話したポイントを確認して、本当に返還しなければいけないのか、検討してみましょう。
PROFILE
英明法律事務所
福島 一代弁護士
パワハラ・セクハラ、労働条件、給料・残業代請求、不当解雇、労災認定など、労働者が抱える様々な法的問題を解決しています。人事労務分野の活動も幅広く行っています。



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