「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」って本当に違法?【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2026.02.04
この記事でわかること
- フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは、舌打ちやため息など不機嫌な態度で相手を威圧すること
- 法律ではまだ明確に定義されていない
- フキハラに遭遇した場合は「組織的な解決」も対処法の一つ
最近SNSやニュースで耳にするようになった「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」。
職場の人に対して舌打ちやあからさまな無視など、感情を武器にするような態度が「ハラスメントにあたるのでは?」と注目を集めています。
しかし、こうした行為は法律上、本当にハラスメントとして罰せられるのでしょうか。
この記事では、実際に話題となった事例と法律上の考え方を整理しながら、「フキハラ」はどこまで問題になるのか、弁護士の視点から解説します。
そもそも「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」とは?
フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは、舌打ち・ため息・無視・不機嫌な態度や表情で自分が不機嫌であることを表に出し、周囲に精神的な負担を与えるハラスメントです。
明確な暴言や命令ではなく、「態度・表情・空気」で相手を萎縮させる点が特徴です。
最近ではSNSやニュースでも取り上げられ、職場トラブルの新しいハラスメントタイプとして注目されはじめています。
フキハラとモラハラの違いは?
フキハラとモラハラ(モラルハラスメント)はどちらも心理的圧力や精神的苦痛を相手に与える行為ですが、手法などに違いがあります。
フキハラは、舌打ち・ため息・無視・不機嫌な態度や表情など感情が表面化した結果、相手に心理的圧力をかけるハラスメントです。無意識でも本人の気分や癖が不機嫌な態度等につながるケースが目立ちます。
一方で、モラハラは、相手を精神的に追い詰めたり支配したりすることを目的とした言動が継続的に行われるハラスメントです。たとえば人格否定、侮辱、無視、過度な要求など、相手の自尊心を傷つけたり行動を制限したりする意図が明確に存在することが特徴です。
【実例つき】職場におけるフキハラの具体例とは
フキハラは、職場や家庭などさまざまなシーンで誰もが「加害者になる可能性」「被害者になる可能性」があります。
実際にあった職場におけるフキハラの具体例を参考にしてみましょう。
公務員である男性が、部下である女性による不機嫌ハラスメントを理由に、女性に対し損害賠償請求訴訟を提起し、女性から3万円の慰謝料を支払ってもらう和解が成立したという事件がありました。報道元である毎日新聞2025年11月30日デジタルニュースによれば、上司男性が部下女性から受けた言動は次のとおりです。
・資料の数字の根拠を質問した際に、舌打ちをされる。
・「覚えていません」と不機嫌な態度で返答される。
・「明日、休んでもいいですか。顔も見たくないので」と発言される。
・廊下ですれ違うときに、顔をそむけて壁を見るようなそぶりをされる。
・仕事中に突然「指をなめるの、やめてもらっていいですか」と言われる(男性には身に覚えがない)。
上司男性は、部下女性による上記言動によって精神的苦痛を被り、損害賠償請求をしたという事案です(出典:毎日新聞2025年11月30日デジタルニュース)。
これってハラスメント?パワハラとの違いを整理
部下女性の言動が事実であるとすれば、上司に対する接し方として不適切といえるでしょう。
ただ、ここでひとつ疑問が生じます。それは、「部下女性の言動は、法律上違法とされるハラスメントにあたるのか?」です。この場合に参考となるのは、パワハラ(パワーハラスメント)の定義です。以前に別の記事で触れましたが、改めてパワハラの定義を整理しましょう。
パワハラは、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの、という3つの要素によって構成されると解釈されています。
報道された事案は、部下女性から上司男性に対する言動であり、①の要素を満たすものとは言い難いです。そのため部下女性の言動は、典型的なパワハラとして対処することは難しいといえるでしょう。
報道記事においても、部下女性の言動は「不機嫌ハラスメント」と表現されており、パワハラとは異なる新たなハラスメント類型として問題提起されています。
フキハラは司法によって認められるのか?
私個人の意見としては、報道記事が拡大解釈され、「部下によるフキハラは損害賠償請求の理由となる」という一般論を立ててしまうことは危険であると考えます。
まず注意いただきたいのは、報道記事の事案が「判決」ではなく「和解」によって解決している点です。「和解」とは要するに、訴訟を提起したものの、裁判所の判決ではなく当事者(原告と被告)の合意によって事件を解決する手続です。つまり、裁判所は、部下女性の言動が違法であるか否かについて一切判断していないのです。
次に、もし判決まで至った場合、部下女性の言動は違法であると判断されたかを検討してみます。
私は、判決になった場合、部下女性の言動が違法であるとまでは認定されない可能性が相当程度あっただろうと考えます。なぜかといえば、上司・部下という関係上、部下女性の不適切な言動に対しては、上司からしかるべき措置を講じることができると思われるからです。あまりにもひどい言動が続く場合は別として、部下が上司に対し不適切な言動をしても、違法性が認められることは容易ではないと考えます。
以上のとおり、少なくとも、「フキハラ」というハラスメント類型が司法の場で認められたという状況にはないと考えられます。
もし職場で“フキハラ”が起きたら?フキハラの対処法は?
将来、皆さんが出世をした際に部下によるフキハラが発生した場合にはどのように対処すべきなのでしょうか?
私は、上司から部下に対する損害賠償請求というよりも、職場内の統制の問題として対処することが適切だと考えています。部下が上司の指示に従わず、反発的な態度を取り続けるとすれば、それは職場の秩序や士気を乱す行為です。そうした場合、使用者(民間であれば会社、公務員であれば国や地方公共団体)は、秩序を乱した者に対し、適切な措置(場合によっては懲戒処分)を講じなければなりません。こういった統制が機能しないと、反発的な部下がいる場合、上司は苦しい立場に置かれてしまいます。対処法として法的対応よりも企業内の規律や評価制度・指導方法を通じて解決することが現実的です。たとえば加害者側が無意識的にフキハラをしている可能性もあるため、事実確認や個別面談、指導、事前に防ぐための研修などがあげられます。
働く上で「態度」も評価される時代に
社会に出ると、自分の言動が周囲にどう影響するのかを考えることは、仕事のスキルと同じくらい大切になります。
同時に、もし自分が不当な態度や扱いに悩んだときには、それが「仕方ないこと」なのか、それとも法的・労務上の課題なのかを知っておくことで、自分を守れる場面もあります。皆さんがこれから出会う職場が、お互いを尊重し、気持ちよく働ける場所になるように。そのための知識として、今回のテーマが役に立てば幸いです。
PROFILE
定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。



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