職場にある隠しカメラは違法?【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2024.09.11
これから社会人になる皆さんが直面する可能性がある問題の一つとして、プライバシーの侵害があります。たとえば、職場に設置された隠しカメラや企業から支給されたパソコンなど企業における監視は法律的に違法なのでしょうか。過去に寄せられたプライバシーに関する質問に弁護士が答えます。
職場にある隠しカメラって違法?
【質問】
私が働いている職場に、突然隠しカメラが設置されました。聞くところによると、職場でさぼっている従業員がいるかをモニタリングするために設置されたもので、人事部の担当部署が随時映像を確認しているとのことです。従業員の同意なしに、モニタリングのための隠しカメラを設置することは法律的に問題が無いのでしょうか。
【回答】
経済産業省の「ガイドライン」では、企業による対従業員のモニタリングの留意点を以下のように定めています。
① モニタリングの目的、すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること。
② モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。
③ モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし、事前に社内に徹底すること。
④ モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監査または確認を行うこと。
あなたが勤める会社で監視カメラの設置が従業員に対するモニタリングのためである場合、前記ガイドラインに該当することが必要となります。そのため隠しカメラの設置は禁忌であると考えられ、会社は、監視カメラ設置の事実や設置数・場所を事前に従業員に伝えるべき内容であると考えられます。
ほかにどのようなことがプライバシー侵害にあたる?
監視カメラに関する問題は従業員のプライバシーにかかわる問題ですが、プライバシーにかかわる問題という括りでは、類似のケースとして、①業務時間外の行動把握、②SNSの禁止といった問題が挙げられます。
■ケース①:業務時間外の行動把握
たとえば、上司から、業務に関連する資格試験を受験することを命じられ、業務時間外に受験勉強をしているところ、上司が土日も含め、その日の勉強時間について毎晩、LINEで報告することを求めてくるといったケースです。
上司が部下等に指揮命令できるのは、業務時間内に限られますので、業務時間外までそのような報告義務を課すことは本来できません。どうしても報告してほしければ、業務時間内に、業務の一環として報告をさせるということが考えられますが、そもそも、業務に関連する資格試験とはいえ、受験勉強自体は私的な活動のため勉強時間について報告義務を課すこと自体、あまり適切なこととはいえないと考えられます。
■ケース②:SNSの禁止命令
次に、FacebookやInstagramなどのSNSにおける従業員の私的な投稿について、上司が「このような投稿は会社のイメージにもかかわるので、今後は一切やめるように。」と通告してきたといったケースがです。
こちらもケース①と同様に、上司が部下を指揮命令し、監督できるのは業務の範疇に限られますので、私生活上の行為に関してまで介入することは原則としてできないと考えられます。もっとも、私生活上の行為であっても、会社に対する社会の信頼やイメージを毀損するものであるような場合には、企業秩序を維持する観点から、介入することが許容されるケースもあるように考えられます。従業員がプライベートで発信している内容が、会社に対する社会の信頼やイメージと関係の無いようなものであるのであれば、上司の指示は不当であると考えられます。
これから皆さんが働く職場でも、隠しカメラによるモニタリングの問題にとどまらず、業務時間外の行動を報告したり、SNSの禁止のように、従業員のプライバシーと会社の指揮命令権がせめぎあう局面に遭遇することが数多くあると思います。
本稿ではいくつかの例を挙げて、法的にどうなるかということを解説させていただきました。ご参考になりましたら幸いです。
PROFILE
英明法律事務所
浦辺 英明弁護士
解雇問題、従業員の処遇問題、残業代請求問題、ハラスメント問題など、幅広く人事労務分野における活動を行っています。著書に「Q&Aで納得!労働問題解決のために読む本」(日本労務研究会編・共著)など。