神奈川県横浜市生まれ。豪州の大学へ進学後、香港に居住。1994年に北京首都師範大学(漢語科)へ留学後、シンガポールで会社設立などに携わる。その後、豪州ボンド大学院経営学にて修士号取得(MBA)、2007年に嘉悦大学准教授に就任。2015年には育児をしながら桜美林大学院国際学研究科「中国民営企業における独立取締役の監査・監督機能-日中比較及び研修機関の役割の-考察」にて博士号取得。現在は、NPO法人キャリアカウンセラー協会理事。桜美林大学北東アジア総合研究所客員研究員。主な著書に「30分間で天職が見つかる本」(PHP研究所)、「TOEIC400点だった私が 国際舞台で“デキる女”になれた理由」(日本経済新聞出版社)など。
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柏木 理佳NPO法人キャリアカウンセラー協会理事・桜美林大学北東アジア総合研究所客員研究員
“適性”を見つけて金融業界で輝く!キャリアデザイン指南
<第9回>2017.03.29
国際色に包まれる時代のなかで深めたい、異文化への理解
私はこれまでの経験から、日本と海外との間で文化や価値観の相違を肌身で実感することが多かったのですが、経済がボーダレスでつながった今、国境はあくまで地図上の境でしかありません。さらに、雇用形態が多様化するなかで適職や天職を20代前半で探し当て、生涯を通じてやりがいある仕事を見つけることはとても困難なことといえます。
今後は、終身雇用をベースとする日本人と日本企業の有様が世界中から問われることになり、同時に異文化への理解、外国人との円滑なコミュニケーションが当たり前とされる時代が到来します。特にIT企業、金融、商社、外資系企業で活躍したいと考えている人であれば、これまで以上に広くて多面的な視点・素養が求められることになります。
そこで今回は、将来金融業界のみならず、世界で活躍したいと考えているみなさんに、外国人と働く際に心得ておきたいポイントをお伝えします。
徹底した「成果主義」「個人主義」を貫く米国人
米国出身の男性Aさんが同僚の場合、こんなケースに遭遇するかもしれません。
Aさんは自分が担当する業務が終わったら、周囲がどんなに忙しい様子でも自ら進んで「手伝おうか」と周囲に声をかけません。早々に帰ってしまうでしょう。
これはAさんが決して不親切だからではなく「成果主義」「個人主義」の国で育ったことに所以します。日本人の私たちは自分の担当業務がひと段落した時、多量の仕事を抱えている同僚の姿を見たら「手伝うよ」といった発想になりますね。でも「残業をする = 効率が悪い」という発想に基づく米国人にとって、「自分に課せられた仕事が終了したら帰る」は当たり前のこと。残業を手伝う=自分の仕事が非効率、つまり「仕事ができない人」と思われるのです。時間に対する考え方が、日本人と欧米人ではまったく異なるということを理解しておかなくてはなりません。
なかでも、米国人やフランス人などは個人主義が徹底していて、日本人のように集団での旅行や飲み会には参加せず、独自のペースを維持する傾向が強いとされています。
同じアジア人でも異なる特徴を理解する
タイ出身の女性Bさんは、「何事もミスがないよう丁寧にやる」という文化で育ったため、普段からじっくり時間をかけて行動するタイプ。そのため日本企業に就職した後もスピードよりも丁寧さを優先させ、仕事にじっくり取り組んでいました。
この場合、Bさんとチームを組んでひとつの仕事に取り組む日本人であれば、「Bさんの仕事が終わらないと、自分の担当領域に支障が出てしまう。早くしてよ〜」とイライラしがち。ここで気をつけたいのは、イライラする自分は被害者で、丁寧に仕事を進めるBさんが悪者という構図を作り、関係を悪化させてしまうことにあります。
それを避けるためにも、「何が問題になっているのか」「どうしてほしいのか」という建設的意見や本音を相手に伝えることを苦手とする日本人特有の問題にも目を向ける必要があります。さらに、Bさんの出身国の文化等を事前に理解しておけば、Bさんの業務を最初から他の仕事に影響を及ぼさないポジションにすることもできるはずなのです。
逆に、同じアジア圏でも仕事の進め方がとても早くて“即断性”を武器にする国の人もいます。しかし、そういう人の成果物をよく見ると、かなりケアレスミスが多かったりもしますので、そういう人にはダブルチェック機能やフォローする人を割り振るなどの手だてが必要です。
宗教上の習慣やタブーを理解することが、相手への思いやりに
映画などでキリスト教の欧米人が食前に神様への祈りを捧げるシーンを見て、「いただきます」と言って手を合わせる私たち日本人の習慣に、あらためて気づかされることがあります。
同様に、「一日5回の礼拝を行う」または「13時から16時は仕事をしない」という宗教上の決まりや戒律に基づく国で育った人の習慣や価値観を理解し、それを尊重する姿勢も大切です。
また、タブー(禁忌)も国によって様々です。「アルコールは飲まない」「大声で話す」「頭をなでる」「人を指さす」「目上の人の前で喫煙」「プライバシーに立ち入る」「子どもはいますか?あるいは独身ですか?」と質問する……こうした何気ない言動が、場合によっては相手に不快感を与えることになりかねません。外国人の同僚ができた場合は、その人の出身地や国ではどんなことがタブーとされているかを理解することも相手への思いやりなのです。
外国人と円滑にコミュニケーションをとる方法やタブー、マナーなどの情報は、パソコンや書物からも得られますが、キャンパスライフを謳歌している人であれば周囲を見渡してみてください。おそらくごく身近に留学生がたくさんいますよね。せっかくのチャンスですので、留学生とおもいっきり仲良くなりましょう。お金と時間を使って遠い国に「留学」をしなくても、日本にいる彼らと接することでリアルな異文化、価値観を理解・体感できるはず。相手を理解しないまま、色眼鏡をかけた状態で「外国人はマナーが悪い」「外国人はわがままだ」と考えてしまうことは、とても不幸なことです。ぜひとも若いうちから異文化を肌身で理解し、「グローバル」の第一歩を踏み出しましょう。
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- 柏木 理佳
- Rika Kashiwagi