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プロの視点

柏木 理佳NPO法人キャリアカウンセラー協会理事・桜美林大学北東アジア総合研究所客員研究員

“適性”を見つけて金融業界で輝く!キャリアデザイン指南

<第6回>2017.02.01
就職後に陥りやすいミスマッチを防ぐ「キャリア・プランニング法」



業界や企業を研究し、何十社も面接を受け……といった様々な苦労を就活中に積み重ねてきたのに、あるデータでは「3年以内に転職する人が全体の3割にのぼる」とされています。 こうした人たちの大半が「憧れの会社に就職できたのに想像していた仕事と違った」「頑張ったのに認められなかった」といったストレスが退社を決意する理由になったようです。でも、どうしてこのようなミスマッチが起きてしまうのでしょう。

そこで今回はミスマッチを防ぐため、キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)の資格保有者であり教鞭を執る柏木理佳さんに「キャリア・プランニング法」をお聞きしました。この方法を実践する時期は早ければ早いほど有効なので、ぜひチャレンジしてみてください。

憧れの職業 = 自分に合った職業ではない

みなさんの友人や知り合いに「学生時代にたくさんのアルバイトに精を出したので、自分は社会経験が豊富だ」と言っている人はいませんか? 実はそうした人も就職後に転職するケースが意外に多いのです。アルバイトと社員では仕事の責任、業務の質がまったく違うということへの理解が足りなかったことが原因のようです。では職務経験がない学生は、どのように「自分に適した仕事」を見つければよいのでしょうか。

「キャリア・デザイン」というと、「未来の理想の自分像を描き、その理想像を実現するため数年単位で◯◯を経験・習得する計画を立てる」というのが一般的な解釈ですが、私が提案する「キャリア・プランニング法」は、まったく逆の発想によるもの。「過去を振り返り(逆算して)自分のライフスタイルを分析することで真の適性を導き出す」手法になります。

それは例えば、あなたが小中高時代に所属していた部活動、ボランティア活動、スポーツチームなどを元に分析するのもひとつの方法です。

部活に所属していた人であれば、「リーダー的役割を果たしていた」「先生や周囲の人との交渉が得意だった」「チーム全員で頑張ることが楽しかった」「競技は団体より個人競技だった」「ライバルと競いあうことで発奮した」「部活動に所属していたけれど細かい規則や週末に束縛されることがイヤだった」「部活には参加せず趣味に没頭していた」など。さらに、試験勉強でも「毎日決まった時間に勉強するタイプ」「試験前だけ集中的に勉強する効率派」「気が向いた時にガッと勉強する自由派」と人それぞれですね。

すなわち、これまでの人生であなたがとっていた行動はあなたの適性を表していることになり、過去の自分の行動を分析することが、自身の真の適性を知ることにつながるのです。

【ステップ1】10代の経験から、自分自身を逆算して分析しよう

単に「部活動」「勉強」と言っても、人によってやり方や喜びの感じ方、達成感は多様です。こうした行動様式、楽しみ方はあなたの性格・適性を理解するうえで、非常に重要なファクターとなり、その延長線上に「適した仕事」や「評価されやすい仕事」が見えてきます。

では、あなたの「なりたい職業」が、広告業に従事するクリエイティブ職だったと仮定しましょう。

「リーダー的役割を果たしていた」「先生や周囲の人との交渉が得意だった」「チーム全員で頑張ることが楽しかった」が上位にくる人であれば、自ら新しい企画を立ち上げてクライアントを探し、社内のメンバーを統括して広告物を創りあげていく、営業の側面が強いディレクター職も適している……と判断できるはず。

逆に、「競技は団体よりテニスやマラソンなどの個人競技だった」「一人は好きだけどライバルと競い合うことで上達した」のであれば、専門的なスキルに磨きをかけるクリエイティブ職でありながら、営業メンバーの意向にも答えるチームでの活躍が期待できるでしょう。

あるいは、「部活動に所属していたけれど、細かいルールや週末に束縛されることがイヤだった」「部活には参加せず趣味に没頭していた」という人なら、デザイナー、フォトグラファー、コピーライター、またはいずれ起業するタイプかもしれない……ということがわかります。

【ステップ2】嫌いなことを、思いつくままにあげてみよう

【ステップ2】では、自分が嫌いなことを思いつくままにあげていきましょう。

例えば、「朝早く起きるのが嫌い」「飽きっぽくて長時間集中することが苦手」「人から指示・命令されるが嫌い」「スポーツが嫌い」「外出が億劫」「人と接するのが嫌い」「パソコンに長時間向かうことは耐えられない」「電話が苦手」「細かい数字や計算が苦手」「文章を書くのが苦手」「リーダーは向いていない」「規則に縛られたくない」などで構いません。

このように苦手・億劫も含む「嫌いなこと」を列挙していくと、実は反対に「好きなこと」が明確になってきますし、どんな職業が自分に適しているか、向いていないかが、ぼんやりと見えてくるはずです。

例えば、金融業界へ就職したい人が、「細かい数字が苦手」「計算が苦手」ということであれば、その業界が求める素養から外れているかもしれません。さらに、「人と接するのが嫌い」「外出が億劫」であれば、営業職に就いてもよい成績はおさめられないかもしれません。

「自分がどんなタイプなのか……」「憧れの職業が自分に適しているか……」といった分析をしないといけないとなると、中には「面倒くさそう」「大変そう」と思う人がいるかもしれませんね。でも、ちょっとしたひと手間で自己分析はできることなのです。

例えば手のひらサイズのメモ帳を常に持参して、歩いている時にふっと思ったこと、また友達と話しているときの“気づき”などをメモしてみましょう。そして、いざ就活がスタートした段階で、“気づき”がメモされたノートを読み返してみれば、自分でもすっかり忘れていた思わぬ発見が見つかるはず。

学生時代にこうした思考回路を身につけておくと、社会人になってから回り道をせずに活躍できるチャンスが広がることを意味しますし、憧れの職業ではなく自分に適した職業に就くことで、周囲から評価を受けやすくなります。是非私の推奨する「キャリア・プランニング」法を活用して、「自分に適した仕事」を見つけましょう。


Profile

柏木 理佳
Rika Kashiwagi

神奈川県横浜市生まれ。豪州の大学へ進学後、香港に居住。1994年に北京首都師範大学(漢語科)へ留学後、シンガポールで会社設立などに携わる。その後、豪州ボンド大学院経営学にて修士号取得(MBA)、2007年に嘉悦大学准教授に就任。2015年には育児をしながら桜美林大学院国際学研究科「中国民営企業における独立取締役の監査・監督機能-日中比較及び研修機関の役割の-考察」にて博士号取得。現在は、NPO法人キャリアカウンセラー協会理事。桜美林大学北東アジア総合研究所客員研究員。主な著書に「30分間で天職が見つかる本」(PHP研究所)、「TOEIC400点だった私が 国際舞台で“デキる女”になれた理由」(日本経済新聞出版社)など。