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柏木 理佳NPO法人キャリアカウンセラー協会理事・桜美林大学北東アジア総合研究所客員研究員

激動の中国経済、金融、生活実態に迫るリアルレポート

<第4回>2016.12.28
中国人の生活実態を知ることが、中国の“いま”を知るカギになる

日本の正月にあたる「春節」では、多くの人が帰省するため、延べ30億人近くが車、鉄道、飛行機で大移動します。その様子は日本でもよく報じられているので、ご存じの人も多いことでしょう。

また、“爆買い”と称される訪日中国人の消費は、日本経済に膨大な恩恵をもたらしています。中国人が日本で爆買いする背景には、中国では、日本製高品質の電気炊飯器などの家電製品は非常に高く富裕層しか買えないという事情があります。日本の化粧品が中国国内のドラッグストアやコンビニエンスストアなどで3倍近い値段で売られているケースもあります。ユニクロなどのファストファッションも、中国ではブランドとして商品化され高価格で販売されています。しかし最近、円高が進み割安感がなくなってきたことと、中国国内のネットビジネスが拡大し日本に訪問しなくても安い商品を購入することができるようになってきたことで、爆買いが段階的に終了すると見られており、日本の小売店も営業方針の転換を打ち出すところも増えています。

そこで今回は、中国人の暮らしや価値観を、いくつかのポイントに絞ってご紹介していきましょう。

【一人っ子政策】

爆発的に増える人口を制御し、生活水準を向上させるため、1980年に一人っ子政策を施行した中国ですが、2013年から徐々に政策緩和が始まり、2015年、ついに一人っ子政策を廃止。 これは急速な高齢化と、縮小する労働人口の減少に備えた転換策と言えます。しかし、実際には、この政策ができても、都市・農村部を問わず、多くの人が家族を増やしたがらない傾向なのです。これは2人以上の子どもを育てるにはコストがかかること、さらに都市部では家賃など物価も高く教育費も増していることが理由です。

【公私の境がない社会】

もともと中国の人たちは共産主義国に育ったため、土地、家すべてが国のものであり自分は国に属している存在と認識している面もあります。日本で言えば全員が公務員で学生寮や社宅に住んでいるような感覚でしょう。

実際に中国の国有企業では、仕事中に私的な長電話をずっとしている、会社の備品を自宅に持ち帰る、昼休みを長時間とる人も多く、それに対して上司も何も言わないこともあります。これはつまり、国有企業に勤務すればその企業の社宅に住み、食事も会社の食堂を利用し、企業のモノは自分のモノという意識がどこかにあるからです。日本人からみて中国の人が公私の区別がないと思うのは、このような背景があるからです。日本企業で働いている日本人上司が中国人は基本的なマナーを知らないと感情的に叱るよりも、国の事情や物事の考え方を理解しておくと、人材能力を有効に発揮させやすくなるはずです。

【おむつとトイレ】

一人っ子政策廃止に伴い、多少なりとも「新生児が増える=おむつの需要が増える」ことが予想されます。日本製のおむつは中国都市部の裕福な家庭に絶大な人気を誇りますが、内陸部では日本製のおむつはおろか、布製おむつもあまり使用されず、パンツのお尻部分を丸く切り取り、いつでもどこでも排泄できる「股割れパンツ」が使用されている地域もあります。

そもそも、中国の公衆便所では、ドアがなく隣の人の姿が見えるところもまだまだ一般的。さらに、使用後に使うトイレットペーパーの紙質も硬く、下水処理の設備環境も悪いため、水洗トイレで流しても水量が少なく流れにくいのが現状です。トイレにトイレットペーパーの紙がつまらないよう使用後に紙を流さず、隅に置かれたゴミ箱にトイレットペーパーの紙を捨てる方式も多く存在します。日本型の高機能水洗トイレを使用する家庭は、ごくごく一部の富裕層に限られたことなのです。

【流行・ブーム】

数年スパンでめまぐるしく流行り(ブーム)が変化する中国では、これまで、ケンタッキー、マクドナルド、スターバックスや日本式のレトロな喫茶店が流行っていました。現在は健康ブーム。和食も流行の兆しをみせています。

このめまぐるしく流行りが変化する背景には、政府が発表する「五カ年計画」という、重点事業や経済運営の在り方を5年ごとに定める計画があります。その政策をよく理解することで今後はどの産業にフォーカスをあてるのかということがわかり、ビジネスをする上ではこれらの産業に注目すると利点があります。

例えば、本や雑誌の制作・流通が遅れている中、ここ数年のスマホ・ネットユーザの増加に伴い、電子書籍のビジネスモデルが台頭する一大ムーブメントが起きています。その半面、著作・肖像権に対する意識が低く、基本的なルールも未整備のままです。

つまり、ニーズがあればそのビジネスモデルを、まず成長させることが中国企業の手法です。当然、グローバルスタンダードから立ち遅れた著作・肖像権などについて、世界から注視されていることを中国側は理解していないわけではありません。しかし、その改善が進む前に需要のあるビジネスが急成長するのが中国です。そのため、中国では、環境ビジネス産業などかなり遅れている産業がある一方で、世界の最先端のビジネスが成長するといった産業成長の二極化が進んでいるのです。

【日本産の食べ物】

中国国内のりんご生産量は世界一を誇りますが、日本の海外向けりんごの輸出額は約130億円(2015年)にのぼり、日本から中国への果物の輸出では、りんごは代表格です。

中国では富裕層を対象とした贈答品用として、日本産のりんごが1ケース約1万円で売られている場合もあります。スーパーに行くと国産りんごが大半を占める中、日本産のりんごは高級品として売り場がすみ分けされています。中でも日本産の「ふじ」は、甘くて美味しいと中国の人にも大評判で、今後は、日本からのりんごの輸出高がさらに伸びていくことでしょう。

もちろん、寿司、天ぷら、たこ焼き、焼きうどん、味噌汁といった、レストランなどで食せる日本食も大人気ですが、中国のスーパーなどで売られている日本産のお米やイチゴ、また、日本のキャラクターやおまけのついたお菓子、インスタントラーメン、和風だし、わさびも高い人気を誇ります。

【ネットと物流】

「ネットで商品を購入してお金を払っても、きちんと商品が届かないのでは?」という不安が拭えなかった中国では、購入者が購入先(販売元)に直接お金を支払うのではなく、中間業者にいったん代金を支払い、その中間業者が買主に無事、商品が届いたことを確認した後で、購入先に代金を支払う仕組みが取られています。これは、過去にいくつものトラブルが起きた不安要素を元に構築されたシステムといえますが、今ではこうした安心感から都市部でネット販売が急激に伸びています。同時に、日本にいながら中国語のサイトをオープンした日本の零細企業が売り上げを伸ばすケースも増えてきています。

このように、パソコンやスマホを介したインターネットユーザ数が飛躍的に増加している一方で、政府の意向に反するコンテンツやアプリなども開発・販売され、すぐに政府のチェック(規制)がかかり、政府側とアプリ開発業者とのイタチごっこが続いている状態にあります。

【生命・損害保険】

民間の保険が中国に浸透してきたのは、1990年代のこと。1990年から2002年にかけて年30%の成長率で、飽和状態にある日本の需要に比べると今後も成長が期待できます。2003年の保険法により、生命保険会社だけに取り扱いが限定されていた業務内容が損害保険会社でも営業できるようになりました。マイカーブームにより自動車を保有する人が増え、子供の教育のためにピアノなど高級品を購入する人が増えるとともに損害保険に加入する人も増加しています。とはいえ、都市部で保険が浸透してきてはいるものの、内陸部での浸透度はまだまだ低い状況にあるため、格差是正などが実現した暁には、今後さらなる成長が見込まれる分野と目してよいでしょう。

【環境】

政府も環境問題に取り組んではいるものの、中国の二酸化炭素排出量は世界第2位に位置します。世界から注視される中国の大気汚染が一向に改善されない理由は、地方政府の財政難にあります。地方の中小企業への規律を強化し、企業が倒産すると地方の法人税収入が減少します。それは地方公務員の出世階段への弊害にもなります。地方政府の役人と中小企業との癒着が、環境問題の改善できない理由のひとつとなっています。資金不足により環境の設備投資ができない中小企業が地方政府に賄賂を渡すことなどにより環境汚染対策をとっていない企業が存続しているのです。

一方都市部で、問題になっているPM2.5対策として、高機能である日本製空気清浄機の需要が高まっており、あらゆる面において環境対策として、ますます日本製品への期待がかかっていくと考えられます。

【GDPにみる中国の消費割合】

最後になりますが、国力を図る数値のひとつに国内総生産(GDP)がありますが、2015年のGDP(※)、上位3カ国を見てみると、

■米国:17兆9470億ドル
■中国:10兆8664億ドル
■日本: 4兆1233億ドル

先進国の場合、GDPのうち消費が占める割合は平均6割とされていますが、中国の場合は4割程度にとどまっています。そこで政府は輸出型から内部型に切り替えるとして消費拡大に重点を置いています。今後は、富裕層の増加とともに中間層の拡大、格差是正、都市部におけるIT・サービス業の台頭、内陸部におけるインフラ整備など、多面的な要因から消費にまわるお金が増えていくと思われます。

中国経済は急成長を遂げていましたが、今後は緩やかな成長とともに、環境問題など負の面にも注目する必要があります。つまり、経済発展とともに環境問題など負の面においても法律が強化されることが予想されます。日本政府、日本企業、個人が中国市場のニーズに多面的に応えていけば、それが大国の消費行動を後押しするエネルギーになると思われます。

次回は、将来、東南アジア諸国や中国でビジネスを展開したいという志を抱く人に「成功を手中にするテクニック」をご紹介したいと思います。

※世界銀行「経済に関するデータ」

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Profile

柏木 理佳
Rika Kashiwagi

神奈川県横浜市生まれ。豪州の大学へ進学後、香港に居住。1994年に北京首都師範大学(漢語科)へ留学後、シンガポールで会社設立などに携わる。その後、豪州ボンド大学院経営学にて修士号取得(MBA)、2007年に嘉悦大学准教授に就任。2015年には育児をしながら桜美林大学院国際学研究科「中国民営企業における独立取締役の監査・監督機能-日中比較及び研修機関の役割の-考察」にて博士号取得。現在は、NPO法人キャリアカウンセラー協会理事。桜美林大学北東アジア総合研究所客員研究員。主な著書に「30分間で天職が見つかる本」(PHP研究所)、「TOEIC400点だった私が 国際舞台で“デキる女”になれた理由」(日本経済新聞出版社)など。