「これって就活セクハラ?」不安になる前に知っておきたい見極めポイントや対策について

体験談・インタビュー

公開日:2023.09.19

就職活動をしていると、企業の方と電話をしたり1対1で話す機会が出てくるでしょう。それはOB・OG訪問の過程や選考の中で不可欠なことでもあります。しかし中には「企業名を騙って、非通知で“相談に乗る”と電話をかけてくる」ケースや「選考の過程で、より普段の姿を見るために、リラックスした雰囲気でお酒を交えて食事をしよう」と誘う事例を聞くことがあります。

このようないわゆる「就活セクハラ」は国や企業が対策を取ることはもちろん必要ですが、自分の身は自分で守れるようにしておくことも重要です。今回はそんな「就活セクハラ」の見極めポイントや対策について「一般社団法人日本ハラスメント協会」の代表理事である村嵜さんにお話を聞きました。

Profile
一般社団法人日本ハラスメント協会代表理事
村嵜 要(むらさき かなめ)
ハラスメント専門家、執筆者、実業家。令和元年、日本ハラスメント協会設立。令和3年、厚生労働省に就活ハラスメント(セクハラ)防止のための署名、提言書を提出。東京都の令和4年度「ハラスメント対策推進事業」アドバイザー。法務省「ハラスメントADRセンター」センター長。報道番組などテレビ出演多数。

──就活セクハラについてどのようなことが起きているのか教えてください。

当協会の就活ハラスメントホットラインに来た相談なのですが、ある学生さんがOB訪問後、選考が進む中でそのOBの方に「君の良いところを伝えてあげた」「自分が人事部長に伝える内容次第で合否を左右する」など言われ、2人での食事に誘われたというケースがありました。

また、オンライン面接が増えたことで、画面越しに自分の部屋についてからかわれたり、「ジャケットを脱いで」と言われたという就活セクハラも起きています。面接官の方もオンラインで自宅から面接を行うケースもあるので、会社という場所から離れることで気持ちの緩みがあるのかもしれないですね。

そして具体的なご相談もありますが、一方で「これって就活セクハラですよね?」という確認の相談もあります。当協会では具体的な相談ではなくても、簡単な確認や問い合わせも対応しています。

──就活セクハラが行われる背景や理由について、どのように考えていますか?

いくつかあると思います。

学生がどうしても企業に入りたいと言う想いが強く、内定を出すという交換条件を出されると判断に迷うことがあるのかもしれません。また、他の学生は普通にそれを受け入れているように感じて迷ってしまうこともあるのではと思います。

さらには、就活中は友達をライバルと感じてしまい相談ができなかったり、親に心配をかけたくない気持ちで抱え込んでしまったりすることもありそうです。就活中は様々な企業の選考が進んでいてとても忙しいと思います。ゆっくり悩んだり相談しようという気持ちになれないのかもしれません。

──就活セクハラを事前に防ぐための見極めポイントや予防策、対応策について教えてください

まず通常の選考のフローに則ったやりとりかどうかが1つの見極めポイントです。全体への連絡なのか自分への個別連絡なのかなども判断基準になると思います。そして、疑問に思ったら担当者にこれは通常の選考に則っているのかと確認の質問をしてみて、返答が明確でなかったり怪しい態度の場合は「一旦保留にしたり考えさせてください」と持ち帰るのが良いでしょう。

何事も全てその場で即答する必要がないということを知っておくことも大事です。連絡が来た時間帯が夜中であったり土日休みの会社が土日に連絡をしてきたら、少し気にかけた方が良いでしょう。

また、仮に担当者の方などと2人で会うケースがあった場合は人通りの少ない場所は避ける、お酒を勧めてきたら気をつける、会社で会った時と態度が異なったり、見返りを求めるような発言や態度には注意するなどの対応が必要でしょう。

万が一、性的な質問などをしてきた場合には、「プライベートな質問にはお答えしないと決めています」や「採用に関係ある質問だけお願いします」など事前に自分の返答を考えておくと慌てず対応できると思います。

オンラインの画面越しのセクハラに関しては、事前にオンライン用の背景を用意しておき、自分のプライベートが相手に伝わらないようにしておくという対策も有効です。

そして、セクハラかどうかの判断は自分1人では難しいと思いますが、記録を取っておくことがその後の事実確認に大切です。「いつ・誰に・何を・どのように」や「目撃者はいたか」など時系列で簡単なメモで良いので取っておくとよいですね。オンラインの場合はスマホで録音したり、メールなどをスクショするのも良いです。録音も自分の身を守るためには全く問題ありません。

──セクハラ被害を受けた学生が、その後取るべきアクションについてお聞かせください。

まず家族などに相談ができそうであれば相談していただきたいと思います。トラブルがあった会社から内定が出たけど入るのか悩んだり、内定は出ていないけど途中で選考を辞退するか、迷うと思います。保護者の方の一言で思い切れたり、決断できる場合もあります。保護者だけでなく、信頼できる方のアドバイスは結構重要ですね。

また、相談窓口を利用することも有効です。相談窓口だとしっかり細かく全部を言わなければいけないと思いがちですがそんなことはありません。一部ちょっと気になるポイントだけ教えて欲しい、という相談でも構いません。相談する、確認することで腑に落ちたり、心がスッキリしてモチベーションが維持できて次の選考に向かっていけるようになるかもしれません。

ただ、絶対に相談しなければいけないわけではありません。相談することがストレスになってしまう場合は、無理をする必要はありません。自分に合った自分らしい対応策を持っておけると良いでしょう。

もう一つのアクションに、周囲の流れに合わせなくても良いということがあります。集団面接などで違和感のある質問があった時、他の人は答えているから自分も答えなければいけないと思いがちですが、疑問に感じたことは即答せず、後から回答しても何とかなります。

以上、それぞれのアクションに対してご自分が納得した形で対応できると良いですね。

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こうした事例や対策方法、相談先を事前に知っておくだけでも何かあった時に冷静に対応することができます。サポート体制としては下記があります。ご自身の学校のキャリアセンターとも連携しながら、状況に応じて上手に活用してください。1人で抱え込まずに自分に合った方法で対応していきましょう。

【サポート体制・相談窓口】

一般社団法人日本ハラスメント協会

厚生労働省 都道府県労働局雇用 環境・均等部(室) 各都道府県毎 相談窓口一覧

キャリタス就活 あんしん相談

PROFILE

中尾 あずさ
大学卒業後、新卒で旅行会社にて営業・海外添乗員を経験後、大手人材会社へ転職。営業・人材育成・研修講師を行う。その間、アルバイト→契約社員→正社員→時短勤務と様々な勤務形態を経験。在籍中に3人の子供の出産・育児休暇を経て仕事と子育てを両立。2011年にキャリアカウンセラー(CDA)資格を取得。副業にてトータル3500人の相談業務に従事し独立。高校、大学でエントリーシートの添削や面接対策、進路相談など就職活動支援や就業中の方へのキャリアコンサルティングを実施。

【主な資格】
・キャリアカウンセラー CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
・国家資格キャリアコンサルタント
・青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー
・育休後アドバイザー

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