海外勤務の場合に適用される法律は?【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2025.07.30

海外勤務はキャリアを広げる上で絶好のチャンスですし、憧れをもつ学生の方も多いと思います。その一方で現地で働く以上、法律などについてもしっかり理解しておく必要があります。たとえば海外で怪我や残業が発生した際など、どの国の法律が適用されるのでしょうか。この記事では、海外勤務の場合に適用される法律について弁護士が解説いたします。
活発化する海外勤務
つい先日、新聞で次の記事を目にしました。
「三井住友銀行は、2025年4月入行の新入社員を対象に、最短2年目で海外配属を確約する採用コースを新設した。入社後の部署がどこになるかわからない『配属ガチャ』を排することで、英語力がある優秀な学生を確保する狙いがある。入社時に海外配属を確約する採用は国内銀行では初めてだという。」(読売新聞オンライン、2024年10月29日の記事から引用)
採用時から海外勤務を確約するとのことで、海外勤務を希望する優秀な人材を確保することが目的のようです。
海外勤務というと、なんだかカッコいいし、憧れてしまいますよね。ただ、現実的なことも考えておかなければなりません。具体的に言いますと、「海外で勤務する場合、どの国の法律が適用されるの?」という問題です。
言うまでもなく、法律は国ごとにさまざまです。日本では当たり前のことでも、海外では事情が全く異なることもあるでしょう。勇んで海外勤務を始めたとしても、「ところで、私にはどの国の法律が適用されるの?」という状態では困ってしまいます。
海外勤務で適用されるのは日本の法律?それとも海外の法律?
日本が定めた労働関係の法律は、日本国内でのみ通用することが原則です。そのため、事業が海外で営まれる場合、日本の労働法規は適用されないのが原則となります。
そうしますと、たとえば、割増賃金(いわゆる「残業代」)の扱いも変わる可能性があります。極端な話ですが、日本では当たり前である割増賃金が、勤務地の国では一切支給されないということも起こり得るわけです。
また、日本で働く場合、業務上の災害で怪我などを負った場合には労災保険(怪我の治療費、働くことができない期間の補償など)が給付されますが、海外勤務で同様のことが起こった場合、一切補償がないということもあり得るわけです。
というような話を聞くと、海外勤務をするのが怖くなってしまいますよね。でも安心してください。従業員の待遇についてしっかり考えている会社であれば、上記の問題に対する対処もされている可能性が高いです。
たとえば、海外勤務をする場合であっても、会社と労働者の合意により、労働契約に関して日本の法律を適用することは可能です。割増賃金に関しても、海外支店の就業規則などできちんと定めを設けておけば、日本の労働法規と同様の扱いをすることもできます。
また、労災に関しても、「特別加入」という制度を利用することによって、日本での業務災害の場合と同じ補償を受けることができます。
海外転勤前にどの法律が適用されるか確認しておきましょう
以上のとおり、海外勤務をするにあたって注意をしなければならないことはありますが、しっかりと会社から説明を受け、必要な対処をすれば、過度に恐れることはありません。海外勤務を希望する皆さんには、チャンスがあれば事前に会社に確認した上で活躍していただきたいと思います。
PROFILE
定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。