着替えは「労働時間」に含まれますか?【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2025.01.22

社会に出ると各企業が定めたルールや規定を理解し、従う必要があります。本記事では弁護士に寄せられた「労働時間」に関する質問を取り上げ、皆さんが抱える素朴な疑問を解決いたします。
着替えの時間は労働時間?
【ご質問】
私の勤務先では、会社の制服着用が義務づけられています。また、勤務時間の前後に制服の着脱をすることが義務づけられており、制服での出退勤は認められていません。私は時給制で勤務しており、勤務先はタイムカードを参照して1分単位で給料計算をする仕組みになっているのですが、私は出勤時は制服に着替える前に、退勤時は制服を脱いだ後に、タイムカードを打刻しています。結果として、制服の着脱にかかる時間である1日1分程度についても給与の支給を受けています。よく考えてみると、私のこのような行動に問題がないか(給与の詐取といった問題にならないか)心配になったので、回答をお願いいたします。
【ご回答】
着替えが、勤務先から着用を義務づけられている制服等を着脱するための時間ということであれば、会社の指揮命令下にある時間として労働時間と認定される可能性があるものと考えられます。ご質問者様のケースでは、勤務時間の前後に制服の着脱をすることが義務づけられており、制服での出退勤は認められていないということですので、このことも、着替え時間が労働時間であることを後押しするひとつの事情になると考えられます。
労働時間と認定し得る場合には、ご質問者様が制服に着替える前、制服を脱いだ後にタイムカードを打刻する行為は問題無いということになります。
(もっとも、単にジャケットを羽織っているだけであるなど、制服といっても簡易な着脱が可能な衣服であるような場合、着替えの時間が労働時間であるとは認められにくい傾向にあると考えられます。)
法定労働時間内でも残業代は出るのですか?
【ご質問】
会社との雇用契約や就業規則では、所定労働時間は7.5時間となっているのですが、実際は8時間以上就業しています。でも、法定労働時間は8時間なので、8時間を超えなければ私は残業代の支給を受けることができないのでしょうか。それとも、7.5時間から8時間までの30分間についても、残業代の支給を受けることができるのでしょうか。
【ご回答】
ご質問者様の勤務されている会社の所定労働時間が7.5時間で、8時間労働していらっしゃるということであれば、30分間につきましては割増賃金(残業代)対象となります。法定労働時間の枠内であるからといって、残業代の対象外ということにはなりません。ただし、法定労働時間(1日8時間)の範囲内ですので、法定内残業ということになり、25パーセントの割増しはつかないことになるかと存じます(就業規則等に別段の定めがある場合はつく可能性があります)。一方、1日8時間を超える分については、法定外残業ということになり、最低25パーセントの割増(就業規則等でこれを超える割増率を定めている場合は、その割増率による割増)の残業代の支給を受けることができることになります。
まとめ
企業によっては移動時間が労働時間に含まれるケース、含まれないケースなど細かい規約が制定されている場合があります。皆さんが社会に出た際に気になることがあったら、先輩社員や各企業の担当者に確認してみましょう。

PROFILE
英明法律事務所
浦辺 英明弁護士
解雇問題、従業員の処遇問題、残業代請求問題、ハラスメント問題など、幅広く人事労務分野における活動を行っています。著書に「Q&Aで納得!労働問題解決のために読む本」(日本労務研究会編・共著)など。