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価値創造戦略で新たなビジネスを切り拓く
価値創造戦略は、新たなビジネスを切り拓く東京海上日動の強い意志の表明に他ならない。社会の変化や技術の進展により保険の重要性は格段に高まっているが、従来型のビジネスモデルだけでは成長に限界がある。働き方を含めた人材への積極的な投資は、社員がもたらす提供価値を高めることが保険の新たな領域を拓くとの認識からだ。同社が新たな領域を切り拓くことが、業態の変革を主導することになりそうだ。
価値創造戦略
独自の価値創造戦略が社会課題解決の一翼を担う
“いざ”と“いつも”を支える存在へと進化する価値創造戦略
「空飛ぶクルマによるエアタクシー事業性調査を実施」「電動キックボードの安全性向上のための協業を開始」「『宇宙プロジェクト』の始動~宇宙ならではのリスクに挑戦し、社会課題を解決〜」――これらのニュースリリースの発信源は、東京海上日動だ。一見、既存の保険という業態からはイメージしにくい取り組みだが、実はこれは同社が進めるビジネスモデル変革への第一歩であり、「価値創造戦略」である。
人材開発室採用チームマネージャーの栗谷氏が説明する。「お客様の“いざ”という時を支えるとともに、価値提供領域を拡大して“いつも”支える存在へと進化するのが私たちの目指す姿です。単に事故時に保険金をお支払いするだけではなく、クライアントの既存ビジネスをドライブしたり、共に新規事業を立ち上げています。例えば、ドライバーの運転性向を分析して交通事故のリスクを低減する。あるいはお客様の健康診断のデータや生活習慣を通じて病気になりにくく、万一病気になったとしても重症化しにくくなる助言をするといったことです」(栗谷氏)。そのためビッグデータやAI等の技術の知見を活用すると同時に、多様な企業とパートナーシップを結び事業領域を拡大している。冒頭に紹介した取り組みはその一端でもあるが、保険というビジネスの本質は変わらない。福沢諭吉が幕末に近代的保険を“災難請合い”“生涯請合い”と紹介してから150年以上過ぎても、社会的課題を解決することが保険の役割だ。「明治維新以降、開国によって貿易が盛んになりましたが船舶の座礁事故という“いざ”等を支えたのは保険であり、日本に自動車が1,000台ほどしかなかった時代に万一の事故という“いざ”を支えたのも保険です」
多様な企業とのパートナーシップで事業領域はさらに拡大へ
時代の変化や技術の発展によって、いまや保険に求められる役割や使命は大きく広がっている。例えば空飛ぶクルマは技術的にはほぼ確立されており、関係法令が整備されれば商用飛行も実現可能だ。東京海上日動では2019年から空飛ぶクルマを開発中の企業に保険を提供しており、2025年大阪万博開催時の大阪ベイエリアにおけるフライトの実現に向けて事業を推進している。また、小型で新しいモビリティである電動キックボードは世界中で普及し始めており、日本でも大都市を中心にシェアリングサービスが実現している。このように、さまざまなリスクに対する保険や専門性の高いリスクソリューションを提供するとともに、協業を通じてデータを用いた多様な実証実験を行い新たなサービス開発も進めている。さらに宇宙については近年、その裾野が急速に広がっている。東京海上日動は約50年にわたり、宇宙特有のリスクに対する保険商品やリスクコンサルティングを提供。2022年には「宇宙プロジェクト」を始動させ、社内横断チームが中心となって衛星利用を通じた新たな保険商品やソリューションの開発、宇宙に関わる企業との協業を通じた宇宙・地上双方の課題解決への貢献、人工衛星データやデジタルを活用した災害時の被害状況の即時把握・迅速な保険金の支払い、防災・減災に向けた災害予測精度の向上などに取り組んでいる。
その一例として、月面探査ミッションを支援する「月保険」を開発した。2024年内には民間企業による月面探査が計画されるなど、これから月面探査に挑む民間企業の増加が見込まれるなかで、宇宙領域におけるパイオニアとしての価値提供領域を広げている。
また、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」の枠組みのもと、宇宙での活動が多様化しリスクが複雑化するなかで、JAXAの技術協力を得ながら新たなリスク評価手法の構築とソリューション開発にも挑んでいる。
クライアントは新たな価値、
マーケットを創造するパートナーに
近年、気候変動による影響はグローバルな社会課題となっており、その解決に向け、多様なデータやAI、IoTといった技術が果たす役割は大きくなっている。そのため、夜間や雲に覆われた場所でも観測できる特殊なレーダを搭載した衛星の製造や衛星画像の高度な解析技術をもつフィンランドの企業と資本業務提携を結んだ。これにより自然災害に関する損害サービスのデジタルトランスフォーメーションや新たな商品・サービスの共同開発を進め、さまざまな社会課題解決に向けた取り組みを始めている。
東京海上日動の価値創造戦略は、当然ながら同社の保険ビジネスを大きく変えつつある。「企業は、今後はクライアントというだけではなく新たな価値、新たなマーケットを創造するパートナーになります。それに伴い、私たちの仕事も、クライアントの挑戦を成功に導く支えになることが求められます。社員一人ひとりが成長し続けるための環境づくりとして、全社員を対象に毎月の給与に2万円を上乗せして資格取得やスキルアップの後押しをするインセンティブを導入。さらに社内副業制度を取り入れたり、社外副業を認めることで、活躍・成長の舞台を広げるようにしています」
社員自身の価値をこれまで以上に高め、価値創造戦略によって、保険の新たな地平を切り拓いていく。
記者の目 WEB限定
価値創造と保険。一見、すぐには結びつきづらいかもしれないけれど、東京海上日動の価値創造戦略は決して荒唐無稽な物語ではない。その根幹にあるのは、変化する時代への対応、そしてクライアント企業とのパートナーシップ、絆の強さだ。
保険が当たり前に存在する現代でこそ、保険ビジネスは手堅いものといったイメージを持たれることも増えてきたが、東京海上日動の前身である旧東京海上が創業した1879年、旧日動火災が創業した1898年当時はいまだ文明開化の最中、明治時代の真っ只中で、保険も社会に現れたまったく新しい仕組みの一つだった。しかしその時代から船舶の座礁事故時の「いざ」を支え、自動車の数が少なかった時代から自動車事故の「いざ」を支え、時代を先取りした先進的な取り組みで人々の生活を支えてきた。
今日、テクノロジーは爆発的に進化し、空を飛ぶタクシーも月旅行もリアルなものとなりつつある。さらにその先にはどんな未来が待っているのだろうか。つねに時代の先端を走り、「いざ」という事態に備えてきた東京海上日動は座して未来の訪れを待つだけでなく、自ら未来を創り出そうとしている。時代の後を追うのではなく、来るべき時代をいち早くとらえてビジネスの展開を考える。その姿勢は150年前も現在も変わりなく、また仕事の醍醐味も変わることはないだろう。
東京海上日動火災保険株式会社
事業内容 | 損害保険業 |
---|---|
資本金 | 1,019億円 |
正味収入保険料 | 2兆4,179億円(2023年度) |
総資産 | 10兆7,896億円(2024年3月31日現在) |
従業員数 | 16,296名(2024年3月31日現在) |