就活で使えるマインドマップとは?使い方を理解し、自己分析の質を上げよう
自己分析公開日:2024.11.20
突然ですが「マインドマップ」という自己分析方法をご存じですか?この分析はまだ自己分析をしていない方だけではなく自己分析の深掘りを行いたい方にもおすすめです。本記事では、マインドマップの基礎知識から具体的な作成方法、そしてその活用法までを詳しく解説します。
マインドマップとは?
マインドマップは、頭の中に散らばった情報や思考を視覚的に整理し、新しい発想を得るために使用される方法です。この思考整理法は、1970年代にイギリスの著述家トニー・ブザンによって提唱されました。マインドマップの構成はとてもシンプルで、中央にテーマやキーワードを置き、そこから連想した情報を放射状に広がる図として描いていきます。こうすることで、自分の頭の中に散らばった思考や感情、アイデアなどを視覚的に整理することができます。また、基本的には手書きで作成するため、紙とペンさえあればいつでも作成が可能という手軽さも大きな特徴です。
また、似たような思考整理法として、考えやアイデアを自由に発想する「ブレインストーミング」も創造的な解決策を見つける上で非常に有効ですが、ブレインストーミングで生まれたアイデアをマインドマップを使って整理することで、情報を効果的に視覚化し、活用することができます。この相性の良さから、両者を組み合わせることで、より深い自己分析や問題解決が可能になります。
就活にマインドマップを用いるメリット
就活にマインドマップを活用することで得られるメリットは、主に4つあります。
・思考を「見える化」して整理できるので、自己分析の深掘りをスムーズに行える:
就活の自己分析では、自分の強みや弱み、将来のキャリアビジョン、目標など、多種多様な情報を整理する必要があります。マインドマップを使えば、自身に関する情報をもれなく洗い出すことができ、視覚的に整理できます。
興味のあることや好きなことを主要なテーマに変えて作成していけば、自分の興味に合う業界、やりたい仕事や具体的な職種などを見つけやすくなります。
・ガクチカや自己PRの骨子づくりが非常に楽になる:
たとえば自分の「大学時代の経験」を中心にマインドマップを作成すれば、それぞれの経験から「学んだこと」や「得たスキル」までを順を追って視覚化していくことができます。情報を分解することで面接の際など具体的なエピソードを交えた魅力的なガクチカを話すことができます。
・企業研究や志望動機づくりにも活用できる:
特定企業の「経営理念」などを主要なテーマに変えて作成していくと、自分がその企業のどんなところに共感しているのか、興味のある事業内容、志望分野やプロジェクト、そこで自分が発揮できそうなスキルやもち味、その企業でのキャリアプランなどに展開することができます。こうして得られた情報を使えば、「この企業でなくてはならない理由」をしっかり押さえた志望動機を組み立てていくことができます。
・面接にもよい影響をもたらす可能性がある:
マインドマップには視覚的な要素が多いため情報が脳に強く刻まれやすく、記憶が定着しやすくなります。自己分析や企業研究のために作成したマインドマップを面接の前に見返すことで、質問に対して的確かつ一貫した回答をすることができます。また、話す内容が明確になるため、自信をもって面接に臨むことができ、好印象を与える可能性が高まります。
5つのステップで、「自己分析」に役立つマインドマップを作ってみよう
ではさっそく、自己分析に役立つマインドマップを作ってみましょう。
step1:紙とペンを用意しよう
マインドマップ作りに必要なのは、基本的には紙とペンのみ!紙に罫線や色柄があると思考を妨げる恐れがあるので、白無地がおすすめです。また、テーマから放射状にどんどん書き加えていくため、A4サイズ以上の大きめの紙を使用しましょう。紙は、自分から見て横長になるように置きます。
step2:中央にテーマを書き、そこから派生するキーワードを設定しよう
今回は自己分析が目的ですので、まず紙の中心にテーマとして「自分」と書きましょう。そこから5つくらいのキーワードを発想して、項目を作成します。
以下のような項目から自由にピックアップしてみましょう。
・得意なこと
・苦手なこと
・大切にしていること
・がんばったこと
・成功体験
・挫折体験
・アルバイト
・サークル活動
・興味がある分野
・キャリアビジョン
step3:項目ごとに自問を繰り返し、深掘りしていこう
設定した項目一つひとつについて、「なぜ?」「それから?」「どんなふうに?」などと自分に問いかけながら、連想を広げます。項目から枝を広げて、連想した言葉やトピックをどんどん書き足していきましょう。
たとえば、ESや面接でもよく訊かれる「挫折体験」を深掘りする場合、何に挫折したのか、なぜ挫折したのか、その時どんなことを感じたのか、挫折からどんなふうに立ち直ったのか、挫折体験を経て学んだことなどを考えて、頭に浮かんだ言葉を入れていきます。
このステップで大切なのは、「もうこれ以上浮かばない」と思うところまで自問と連想を繰り返すことです。どんな言葉が出てくるか、どんな展開になるかは、人によってさまざま。自由にのびのびと考えてみてください。
step4:マインドマップ全体を眺めて、つながりや新たなアイデアを見つけよう
改めて、完成したマインドマップ全体をじっくり眺めてみましょう。離れた項目同士に意外な共通点や関連があったり、新たに付け加えたい言葉やアイデアを思いついたりするはずです。共通点のある言葉に同じ色のマーカーを引いたり、関連性のある言葉同士を線でつないだり、工夫して視覚化してみましょう。このプロセスを通じて、これまで見落としていた自己の強みや興味の軸を再発見できる場合もあります。また、多くの関連性や共通点を見つけることで、自分が大切にしている価値観や強みが明確になり、自己PRやキャリアビジョンをより具体的に描きやすくなります。視覚化の工夫としては、大切だと思う項目や言葉にイラストやマークを付けると見やすくなります。綺麗に書くことにこだわらず、どんどん書きこんでみましょう。
step5:マインドマップで整理した情報をもとに、改めて「自分」についてまとめよう
最後にもう一度マインドマップ全体を見てみましょう。放射状に広がった自分についての情報の中から、以下の例のように目的に合わせて必要な事柄をピックアップし、就活ノートなどにまとめます。
・「挫折体験」:立ち直るために発揮した強みとそれを裏付けるエピソード、成長などに関連した事柄
・「ガクチカ」:がんばるモチベーションの源、がんばる中で発揮した強みや能力、経験からの学びなどに関連した事柄
【例文付き】マインドマップで整理した情報を文章にしてみよう
先ほどマインドマップで整理した「挫折体験」と「ガクチカ」を実際の就活に生かす文章にしてます。
文章にする際は伝えたい目的を明確にした上で、具体的なエピソードに活用できる情報をピックアップし、文章化することが大切です。例文を参考に、自分の情報で実際に作成してみましょう。
例1 挫折体験:
私の最大の挫折経験は、大学のバスケットボール部でレギュラーから陥落したことです。強豪校ではありましたが、大学1年の秋からレギュラーとして活躍していました。しかし2年の春リーグの直前に練習中に靭帯を切ってしまい、レギュラーから陥落してしまいました。ケガをした直後は絶望し、ライバルがレギュラーとして活躍する姿を悔しい思いで眺めていましたが、このまま終わるわけにはいかないという強い思いが湧いてきました。特に、周りのチームメートがケガをしても支えてくれた姿を見て、「自分もチームのためにできることを探そう」と前向きに考えられるようになったのです。
具体的に取り組んだことは2つあります。まず、1つ目は、ケガの回復状況に合わせたリハビリに全力を尽くしたことです。焦りや苛立ちもありましたが、今の自分にできることに集中し、リハビリを着実に続けることで3カ月後に夏リーグでレギュラー復帰を果たすことができました。2つ目は、コート整備の改善です。私のケガの原因の1つがコート床面の劣化だったため、練習前に床面をチェックするためのリストを作り、ほかのメンバーが同じようなケガをしないように心がけました。これにより、チーム全体の安全も確保できたと思います。
この経験を通じて、どんなに絶望的な状況でも、周囲への感謝やチームへの貢献を意識することで前向きに行動することを心がけました。その結果、思考もポジティブに変わっていき、自分なりの最大の努力や工夫をすることで、どんなに絶望的な状況も好転させることができると確信できるようになりました。
■例文のポイント!
挫折体験として抽出した内容から「転んでもただでは起きないしたたかさ」と「できることに全力で挑む姿勢」という2つの側面を取り上げ、この2つにまつわるキーワードもひろいながら文章化しています。
例2 ガクチカ(学生時代に力を入れたこと):
アルバイト先のカフェで後輩たちをサポートし、快適な仕事環境を作ったことです。わたしがアルバイトリーダーになった当初、わたし以外の4名のアルバイトは全員高校生でした。慣れない環境で緊張しながら働き、ミスをしては落ち込んでいく様子を見て、何とかしたいと思いました。全員が元気にイキイキ働けるには…と考え、まずは一人ひとりと話をして悩みや考えていることを聞くことにしました。
最初はなかなか話してもらえず苦労しましたが、仕事ぶりや休憩時間の様子などを観察して、一人ひとりに合わせた話題を考えるなど工夫しました。その結果、困ったことがあればすぐ相談してくれるようになったのでミスが大幅に減り、徐々に4人が互いにフォローしあって楽しく仕事をするようになりました。働く人が楽しくやりがいを感じながら働けば、結果的にお客様にいいサービスを提供できると実感しています。この経験を通して、リーダーがメンバーの特性を理解することが、よい環境づくりに重要なことなのだと学びました。
■例文のポイント!
マインドマップには「店長に恩返し」と「傾聴力のあるリーダー」という二つの側面が表れていますが、そのうち後者をクローズアップして自分のリーダーシップのタイプをアピールしています。さらに、「ガクチカ」で抽出したキーワードだけでなく、「得意なこと」で抽出した「観察」「親和性」なども絡めて文章化しています。
マインドマップに関してよくある質問と解決策
マインドマップを作成する際によくある質問と、その解決策をまとめてみました。
Q.マインドマップは何枚にもわたって書いていいの?
A.1枚で完結させることが望ましいです。マインドマップ全体を俯瞰して思考の流れや関連性を把握していくため、すべてが1枚に収まっている方が都合がよいからです。
Q.見本みたいにきれいに書けません!
A.見た目を気にする必要はまったくありません。じっくり自分と向き合って考えたことや思いついたことを、上述した5つのステップに沿ってアウトプットしていけばOKです!
Q.作る途中で、行き詰まってしまいました…
A.親しい友人と一緒に取り組んでみましょう。友人に「このテーマについてわたしのことをどう思うか」などと聞いてみると、客観的な視点からあなたの強みや特徴などを表す言葉を教えてくれることでしょう。さらに、互いに完成したマインドマップを見せ合いながら対話すると、自他に対するさらなる気づきを得ることができるはずです。
マインドマップで自己分析をブラッシュアップ!
本記事を読んで、マインドマップに少しでも興味をもっていただけましたか?自分を多角的に見つめ直し、自己理解を深め、他者に自身のことを的確に伝えるための手助けとして、マインドマップはとても有効なものです。
一度作ったマインドマップは定期的に見直したり、新しいテーマで新規作成してみたりすると、自分自身の成長や変化に気づくことができるのではないでしょうか。
ぜひこの機会に、マインドマップを使った自己分析の深化にチャレンジしてみてください。
PROFILE
濱野 裕貴子
キャリアコンサルタント・公認心理師・ワークショップデザイナー
大学卒業後、教育系出版社に入社。通信教育の先生方のマネジメントを中心に、キャリアインタビューや機関誌の編集などに携わる。業務を通じて感じた「同じ仕事をしているにも関わらず働く理由や価値観の違いが出るのはなぜか」という問題意識から、「キャリア」に興味を持つように。14年間の勤務後独立し、以後、大学ではキャリアカウンセラーや非常勤講師、企業では研修講師として、学生や若手社会人のキャリア支援に当たってきた。演劇や落語、お笑いなどのパフォーミングアーツに触れることが大好きで、身体表現を使った自己理解のワークショップなども手掛けている。筑波大学人間総合科学研究科生涯発達専攻カウンセリングコース博士前期課程修了(カウンセリング修士)。