会社の愚痴、ネットに書く前にちょっと待って!【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2025.08.13

夢と希望に満ち溢れた社会人生活がいよいよスタート!しかし入社後に「思っていたのと違う」「考え方が古い」など会社への愚痴や不満が出てきた際、あなたならどうしますか?インターネット上に愚痴をアップしたくなることもあるかもしれません。ただちょっとした愚痴でも発信の仕方によってはあなたのキャリアを左右するほどの法的トラブルにつながる可能性もあります。この記事では、学生の皆さんが将来会社に勤めた際にトラブルが発生しないように弁護士がポイントを解説します。
インターネット上でのストレス発散にはリスクがある?
これから社会に出ると理不尽なことやストレスを感じる瞬間があるでしょう。
愚痴のはけ口として、インターネット上(SNSや掲示板など)に仕事や職場への不満を書き込みたくなることもあると思います。
インターネット上での発信はさまざまな人から反応を受けることができ、刺激的かもしれません。ただ、その反面、不特定多数の人に発信内容を見られてしまい、自分の発信が社会的に問題になる(いわゆる「炎上」する)こともあります。
リスクの高い愚痴の発信方法とは?
発信の内容に踏み込む前に、「そもそもどんなツールを使って発信するか」の問題を考えたいと思います。
たとえばX(旧Twitter)に投稿をしようとするとき、スマートフォン、タブレット、パソコンといったさまざまなツールを利用することができます。会社に入ると、業務用のスマートフォン、タブレット、パソコンの貸与を受けることも珍しくありません。ついつい業務用の端末でインターネットを閲覧し、自分のXアカウントに投稿してしまいたくなることもあるかもしれません。
ただ、業務用の端末を利用してプライベートな投稿をしてしまうのは大変危険です。通常、会社は、業務用の端末をプライベートで利用することを禁じる規則(私的利用禁止規則)を設けているため、業務用の端末をプライベートで利用すること自体が勤務規定違反になってしまうリスクがあります。また、就業時間中の投稿であれば、職務専念義務違反を指摘されるリスクもあります。
「まあ、でもバレなければ大丈夫でしょ!」というご意見もあるかもしれませんが、この考えも危険です。会社は、業務用の端末がどのようなWEBサイトに接続されたかなどのログを管理していることが一般的です。そのため、会社が本気で調査をしようとすれば、業務用の端末がどのように利用されたかがわかってしまうのです。
これは愚痴以前の問題であり、投稿をしたこと自体がアウトになってしまう問題です。弁明の余地なしとなってしまう可能性があるので、十分に注意しましょう。
問題になる会社の愚痴のボーダーラインとは?
ここからは発信内容の問題です。
会社への不満を発信することが一切許されないわけではありません。むしろ、就業時間外のプライベートな場面で会社への不満を発信することは、本来的には個人の自由であるというべきでしょう。
もし会社の人にばれてしまった場合、信頼関係が危うくなる可能性はありますが、たとえば、「うちの会社マジでブラック!」、「上司うぜー」、「毎日朝礼やってるけど意味あんの?」などといった発信であれば、特に問題となることはありません。
他方で、会社への不満を具体的に発信してしまうのは注意が必要です。たとえばですが、飲食を扱う会社に勤めている人が、「●●(店の名前)には来ない方がいいよ。賞味期限が切れた材料も平気で使いまわしてるから。」などと発信してしまうと、会社の名誉や信用を害してしまいかねません。このような発信は炎上の可能性も高く、一度炎上してしまうと、会社側も発信者の特定に本腰を上げる可能性があります。こういった発信をする際は、SNS等ではなく、しかるべき機関に匿名で通報した方が安全です。
インターネット上に会社の愚痴を書き込む前に一度考えましょう。
インターネット上に会社の愚痴を書き込むことは一時的なストレス解消になるかもしれません。しかし、情報はあっという間に拡散したり、一度アップロードした投稿は永遠に残り続けてしまう恐れもあります。安易な書き込みは社会的信頼の失墜や炎上といった事態を招きかねないため、インターネット上に会社の愚痴を書き込む前にストレスを感じた時は頼れる友人などに相談したり、趣味に没頭したりして発散することを強くおすすめします。
余談ですが、弁護士には守秘義務があるので、依頼者の同意なく事件に関係する情報を外部に明かすことは許されません。「あの事件であの裁判官にこんなこと言われて腹が立つ!」と思っても、自分の胸の内にとどめておかなければなりません。
最近は弁護士も活発にSNSでの発信をしていますが、よくよく注意が必要です。私自身は、まだまだ怖くてSNS等は利用していません…。
PROFILE
定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。