新卒必見!身元保証書の提出が求められる理由【弁護士が答えます】

就活ノウハウ

公開日:2024.07.17

会社によっては、入社時に、家族や親族などを身元保証人とする身元保証書という書類の提出を求められることがあります。多くの方は初めての経験で戸惑うかもしれません。そこで本記事では、企業が身元保証書の提出を求める理由やできない際のポイントなどを法律の観点から弁護士が答えます。

そもそも「身元保証書」ってなに?

身元保証書は、会社と身元保証人の間の契約(これを「身元保証契約」といいます。)を書面にしたものです。身元保証人としては、家族や親族が一般的ですが、会社によっては、会社が定めた条件を満たすならば、知人、友人でもよいとしているところもあるようです。

身元保証書の提出が求められる理由

そもそも会社が身元保証書の提出を求めるのには、以下の理由があります。

①新入社員の身元の確認

②新入社員が会社の諸規則を遵守して誠実に仕事に取り組むことの保証

③新入社員が会社に損害を与えた場合に身元保証人に連帯して損害を賠償してもらう

この中で、会社にとって重要な意味をもつのは③となります。新入社員が会社に損害を与えた場合、その社員自身が賠償責任を負うのはもちろんですが、入社したばかりの社員には十分な資力がなく、実際は賠償できないケースも多いため、そのような場合の備えとなるのが③です。

身内保証人の責任について

新入社員の皆さんにとっては、家族などに身元保証人になってもらう際に、身元保証人がどのような責任を負うことになるのかということは、とても気になるところだと思います。

そこで、今回は、身元保証契約について見ていくことにします。

身元保証契約は、労働関連の法律ではなく、「身元保証に関する法律」という法律で定められています。また、民法のルールも関わってきます。 

主な内容は、次のとおりです。

⑴契約期間について、期間を定めなかったときは3年、期間を定めたときでも最長5年となります。あまりにも長期間にわたる契約は、身元保証人にとっての負担が大きいからです。また、期間については更新できますが、自動更新は認められず、改めて契約更新の手続きをしなければいけません。

⑵会社は、労働者本人に不適任・不誠実な事柄があり、身元保証人に責任を生じる恐れがあることを知った場合や、労働者本人の業務・就業地の変更によって身元保証人の責任が重くなったり、身元保証人による監督が困難となる場合には、これを身元保証人に遅滞なく通知しなければならないとされています。この場合、通知を受けた身元保証人は、身元保証契約を解除することができます。また、身元保証人自ら、上記の事情を知った場合も同じく、契約解除できるとされています。

⑶会社は、身元保証人に請求できる損害賠償の上限額を定めておかなければならないとされています。これまで、身元保証人が責任を負う金額については上限がないため、身元保証人の責任が重くなりすぎる恐れがあるという問題がありましたが、民法が改正(2020年4月施行)されたことにより、身元保証契約においてはあらかじめ上限額を定めておかなければならず、上限額の定めがない場合には契約自体が無効となります。

身元証明書の提出は義務ですか?

身元保証人の責任の範囲が広がりすぎないように、さまざまな配慮をしていますが、やはり一定の責任を負うことになる以上、家族や親族などにお願いしづらい、そもそもお願いできるような人がいないという場合もあります。

このような場合、会社に対して身元保証書の提出を断ることはできるのでしょうか?そもそも身元保証書の提出は義務なのでしょうか?

答えとして、身元保証書の提出について、法律上の義務はありません。

そうすると、「義務でないならば提出するもしないも自由」、「提出しなくても会社から不利益な処分をされることはない。」となりそうですが、ここでちょっと注意が必要です。

過去、就業規則において身元保証書の提出が定められていたにもかかわらず、これを拒否した社員を解雇したケースにおいて、「身元保証書を提出しなかったことは従業員としての適格性に重大な疑義を抱かせる重大な服務規律違反又は背信行為」として、解雇を有効とした裁判例があります。

【シティズ事件】東京地裁判決(1999年12月16日)    

もっとも、この事件では、次のような事情がありました。

・この会社は金銭貸付業を行っており、社員は日ごろから金銭を扱う機会が多いため、横領などを防ぐために、身元保証書の提出を採用の条件とし、就業規則にもその旨が定められていたこと

・この社員は、会社から複数回、提出を求められ、また「提出しなければ金銭の貸付けをさせない」と言われたにもかかわらず、提出に応じなかったこと

・この社員はかつて金融機関で勤務したことがあり、そのときには身元保証書の提出に応じていたことからすると、会社が身元保証書の提出を求めた意味を十分に理解していたと考えられること

などの事情が考慮され、解雇が有効と認められました。

このケースを見ると、身元保証書を提出しなかったからといって、直ちに内定取消や解雇ということにはならないと考えられますが、やはり仕事の内容によっては身元保証書の提出が強く求められるケースがあります。また、身元保証書を提出することによって、あなたが信頼できる人物であることを会社に対して示すことができることも事実です

そこで、身元保証人を立てることにためらいがあるとか、特に身元保証人をお願いできるような人がいない場合、最近では保証人代行サービスの利用や会社に相談してみるのも一つの手です。

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PROFILE

英明法律事務所
福島 一代弁護士
パワハラ・セクハラ、労働条件、給料・残業代請求、不当解雇、労災認定など、労働者が抱える様々な法的問題を解決しています。人事労務分野の活動も幅広く行っています。

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