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変わりつつある人事制度。キーワードは自律と自立

日本型人事制度も、時代の要請に応え、柔軟な変化を求められている。それは金融業界も同じだ。メガバンク・地方銀行ともにキャリアを築ける制度や施策を導入することで変化をつくり出している。特に専門性のある人材の育成に力を入れるケースが増えており、金融機関の今後を見据えたプロフェッショナル人材の登用は、重要な役割となるだろう。

成長と挑戦

提供:三菱UFJ銀行

「成長と挑戦」を後押しする人事制度

2019年4月、三菱UFJ銀行は、新たな人事制度をスタートさせた。従業員一人ひとりが高い人間力とスキル・専門性を身につけた「真のプロフェッショナル」として、変化を先取りし、変革に挑戦する人材へと変化していくことをめざす姿とし、人事制度改定のコンセプトとして、「成長と挑戦の後押し」と「昇格から登用へ」の二つを掲げた。この制度について、入行7年目上大岡支店の近藤は語る。

「成長と挑戦の後押しとは、一人ひとりが主体的にやりたいことを追求し、自己実現をめざすことを応援するというコンセプト。従業員一人ひとりの自律的・自発的なキャリア形成を促すべく、自身がやりたいことを実現できる制度を拡充しました。昇格から登用へというコンセプトは、年功序列的な昇格という考えに固執せず、実力本位の登用、適材適所の実現に向けて制度を見直したもの。今後さらなる実力本位での若手登用の促進をめざします」

「成長と挑戦」を後押しするために整備された人事制度は、多彩なメニューで構成されている。そのいくつかを紹介しよう。まずは「Job Challenge」。これはMUFGグループ各社である銀行・証券・信託問わず、自身の希望部署や業務に進んで挑戦することができる社内公募制度だ。制度開始以来、応募者は継続的に増加し、直近では年間約2,000名が応募するなど、広く浸透している。若手登用という観点で新たに設けられたのが、「Position Challenge」。これは若手行員を対象に、通常であれば役付者が担う高位ポジションへの登用をめざして挑戦する制度である。次が「オープンEX」。取引先のスタートアップ企業などへの業務出向を通じてその企業のチカラになるとともに、銀行内では得られないスキル・専門性を出向者に身につけてもらうことを狙った制度だ。「Position Maker」は、行員の自由な発想を起点に、ビジネス変革・業務改革に向けた職務を自身で創り出すことができる制度。また、2022年度より新たな取り組みとして、新規事業創出プログラム「Spark X」が始動し、これまでのべ1,000を超える新規事業アイデアの応募があった(詳細後述)。

「各種制度整備の効果もあって、めざす姿ややりたいことを自ら主体的に考えて行動を起こす、その機運は着実に醸成されつつあります。やりたいことに挑戦して、自己実現をめざし、そうした取り組みが社会貢献にも繋がり、『世界が進むチカラになる(パーパス)』。自分が挑戦してみたい事業フィールドや身につけたいと思うスキル・専門性は実際に働いてみて見えてくることも大いにあります。MUFGの広大なフィールドはその選択肢が無数に広がっています」

また、三菱UFJ銀行の人事戦略は、事業環境の変化を先取りした意欲的な人的資本投資を行っている点も特徴的だ。教育研修関連費用として、年間約25億円以上という、業界内でも高水準の投資を継続している。

近藤 加奈恵 上大岡支店 2018年入行

「Position Challenge」が成長の契機に

多彩な人事制度の中で「Position Challenge」を活用した一人が、入行8年目仙台支店の鈴木田だ。鈴木田は入行後京都支店に配属となり、法人営業を2年間担当。その後営業本部へ異動し、大企業の副担当を経験。そして入行5年目、この制度を活用して仙台支店に異動し、大企業担当者としての職務に就いた。

「弊行では若手に大きな仕事を任せ、ドンドン挑戦させる風土があり、それは人事制度にも象徴されています。私は、より大きな裁量と権限を持つ職務に挑戦したいと考え、Position Challengeを活用して仙台支店に赴任しました。現在は、東北エリアにあるインフラ関連の上場大企業を担当しています。その会社はインフラ事業をコアビジネスにしながらも、地域の価値を高められる新規事業に取り組みたいという意欲を強く持たれています。私はこれまでの経験を活かすとともに、若い視点もエッセンスとして加えながら、お客さまの成長に貢献したいです。求められるレベルが高い分、確かなやりがいを持ち、着実に自分が成長している実感を得られています」

鈴木田 慶悟 仙台支店 営業第一部 取引先二課 2017年入行

新規事業創出プログラム「Spark X」

新規事業創出プログラム「Spark X」――。これは、新規事業アイデアを広く募集する、新たに立ち上がったプログラム。社内外の関係者とアイデアをブラッシュアップし、選考を勝ち上がると、最終的には社長プレゼンの場が用意され、優れた起案者は、所属・年齢・役職関係なく、事業開発責任者へ登用する枠組みだ。「Spark X」の立ち上げから関わり、現在その運営を担当しているのが、デジタル戦略統括部DX室の山本だ。

「ターニングポイントは、『社長と本気で語る会』でした。この会は、亀澤社長と若手従業員がMUFGの未来を自分事として考え、4カ月にわたり継続的に議論する取り組みです。その場で、参加メンバーがボトムアップ型のビジネスコンテスト企画を提案。社長自らが賛同の意を示したことで、プロジェクトはスタート。以後、私と『語る会』の若手メンバー数名を中心に企画立案を進め、2022年春に募集を開始しました」

募集テーマは、金融領域に限ることなく、MUFGのパーパスである「世界が進むチカラになる。」に合致する新規ビジネスアイデアすべて。最初から緻密なビジネスプランや事業計画は求めず、「想い」さえあれば、誰でも参加可能なルールとしている。

「新しいビジネスはあくまで手段。パーパスの実現、つまりはお客さまをはじめ身近な人を幸せにし、結果として社会をより良くすることが目的です。実際の募集では、予想を上回る応募があり、その多くに熱いパッションを感じました。MUFGの未来を拓くための変革と挑戦に携われることに大きなやりがいを感じています」

今後、審査、事業性実証などを経て選抜されたアイデアは、翌年事業化の可否が判断される。やりたいことを実現するための挑戦の舞台である「Spark X」。その動向に大いに注目したい。

山本 浩太 デジタル戦略統括部 DX室 新事業Gr 2011年入行

記者の目 WEB限定

メガバンクの人事制度が大きな変革期を迎えている。三菱UFJ銀行も職務内容に応じて評価・処遇する「ジョブ型」を一部導入する予定で、今後は総合職や一般職といった垣根を取り除き、全従業員を「真のプロフェッショナル」と位置づけていく考えだ。評価や処遇も、能力や専門性を重視したものへと切り替わる。

背景に挙げられるのが、内閣官房が「人的資本可視化指針」を発表し、金融庁が人的資本に関する情報を有価証券報告書に記載することを求めているように、企業資産において人的資f産の占める比重が増加していることだ。投資家も非財務情報を重視するようになり、人的資本の情報はその重要な一要素である。人的資本への投資も従来以上に求められるようになった。

言うまでもなく社会環境・競争環境は激しく変化しており、適者生存の言葉通り、変化に対応できなければ企業の生き残りは難しくなっている。三菱UFJ銀行も、挑戦・学びの機会を充実させつつ、一人ひとりの自律的キャリア形成を支援し、変革への挑戦を促して、活躍機会の獲得へと結びつけたいと考えている。各種プログラムも、自律的な成長を支援するものだ。

大量の新卒を採用し、競争に勝ち抜いた人材を責任あるポジションに登用していくのがこれまでの日本型雇用慣行だった。そんなレガシーな人事制度の一新につながる地殻変動と表現したくなるほどの大胆なチャレンジである。成果に期待したい。

株式会社三菱UFJ銀行

事業内容 金融業およびその他付帯業務
資本金 1兆7,119億円(単体)
当期利益 9,447億円(2024年3月末現在)
従業員数 31,756名(単体)(2024年3月末現在)
事業所 国内421拠点、海外104拠点
(2024年3月末現在)

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