新卒学生のためのインターンシップ・就活準備サイト

Articles
注目記事2022.06.29

変わりつつある人事制度。キーワードは自律と自立

金融機関イコール安定。そんなイメージは昔のものになりました。激動の時代の中、生き残っていくために自らリスクを取りながら変革に挑む動きが顕著です。人事制度にも、そうした変化は明確に反映されています。

日本型人事モデルが終わる

「硬直化」とか「ガラパゴス」とか、ネガティブなワードで語られることの多い日本企業の人事制度。様々なイノベーションを阻害する元凶のように決めつけられることも少なくありません。

しかし日本型の人事制度が、これまでの日本の経済成長の原動力となったことは事実です。

終身雇用からくる安定感は仕事に専念できる環境を生み、人事異動によって長期的な観点で人材を育成することができました。

一方で、人材が同質化してイノベーションが起こりにくい、組織が硬直化しやすい等のデメリットが指摘され続けてきたのも事実です。

しかし新卒人口が減少し、キャリアアップのためには転職に抵抗感を抱かない人材が増える中、かつての日本型人事モデルは力を失っています。

そのため金融各社とも人事制度の変革こそ急務と、様々な施策を打ち出しています。もちろん手探りの段階ではあるのですが、大きな変化が生まれているのは間違いありません。

プロフェッショナルを育てる人事制度

金融業界というと「堅い」というイメージが真っ先に浮かびます。何よりも信用を重んじる業界なのでそれも当然のこと。特に銀行は「信用創造」がビジネスの基本ですから、堅実であるというのは大切なことです。

基本的にはこのようなイメージは大きく変わることはないでしょう。堅い、すなわち真面目であることは、何にも増して重要な要素だからです。

一方でFinTechの誕生など、外部環境が変化していく中、環境に応じて柔軟に対応していく力も求められています。いわば「しなやかさ」が必要とされており、そのために金融業界では人事制度自体の変革に着手しています。

例えば、メガバンクでは三菱UFJ銀行が従業員の「成長と挑戦」の後押しと、業務革新・事業変革の推進を目指して新たな人事施策を打ち出しました。既存領域にとらわれずに新規事業の創出を目指す提案制度もスタートしています。

三井住友銀行では「Be a Challenger」というキーワードのもと、公募制度やエキスパート制度など、自分の目標に従って自律的にキャリアを築いていける仕組みを用意しています。

さらに、みずほフィナンシャルグループでは「熱意と専門性」をテーマに、年功序列の撤廃やキャリアデザインの支援などの人事制度改革を実施。今後はグループ横断的な転勤や異動を可能にして、一人ひとりがキャリアを自由に構築できるようにする予定です。

もちろん、こうした取り組みはメガバンクにとどまりません。転居のない総合職を新設したり、退職金の前払制度を導入したりと、これまでになかった新たな制度の導入に踏み切る地方銀行が目につくなど、広がりを見せています。

異動を繰り返して最後は支店長で「上がり」という従来の「銀行すごろく」は過去のものとなりつつあるようです。

自分の成長は自分の責任で

金融業界全体を見渡して特に目につくのが、専門性のある人材を重用しようとする動きです。

特にデジタル人材の育成に力を入れており、専門職コースを新設して金融工学などに強い人材を育てようとしています。こうした人材については基本的に異動や転勤がなく、待遇面でも優遇されるケースが増えています。

いずれの取り組みにおいても特筆すべきは、主体的に能力開発に取り組む姿勢が求められていることです。キャリア開発だけでなく能力開発についても受け身は通用せず、自分の成長に対する責任は自分が負わなくてはならない時代になったようです。

自分の道は自ら拓いていくという姿勢は、いうまでもなく金融機関自身に求められることであり、金融機関が生き残っていくためには従来の常識にとらわれないチャレンジが不可欠であることを示しているといっていいでしょう。

まとめ

一時期日本では「成果主義」が大流行しました。しかし「評価につながらない仕事をやりたがらない」「長期的な仕事は嫌われる」といったマイナス面が目立ち、失敗するケースも少なくありませんでした。

このように人事制度には、実際にやってみなければわからない面がありますし、走りながら軌道修正する柔軟さも必要です。金融業界での新たな人事制度の波についても、今後に注目したいところです。