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- 人大事〜創業の思いつなぎ、貫く独自性〜
70歳定年時代を前に、金融業界の働き方は?
人生100年時代、金融業界では定年延長が進み、長く活躍できる環境が整いつつある。しかし、役職定年の課題もある。金融業界で身につく知識やスキルは、市場価値の高い人材への成長を促し、長期的な活躍を可能にする。充実した社会人生活を送るためには、自身のキャリア形成が重要である。
人大事
創業の思いつなぎ、貫く独自性
100年を超えて貫く「人大事」
人材こそが企業の価値そのものであり、経営戦略の実現力となる。昨今、人的資本経営の重要性が大きな注目を集めているが、今から100年以上も前から、人材を何よりも大切にしてきた企業がある。リテール分野に絶対的な強みを持つ岡三証券だ。岡三証券グループ人事戦略部長を務める阿部直樹氏は、同社に息づく「人大事」のカルチャーがいかに重要であるか、次のように話す。
「金融のプロフェッショナルとして、『お客さまの人生』に貢献する。それが、岡三証券のパーパスであり、存在意義です。お客さまと長く関係を築き、生涯にわたる資産運用のお手伝いや幅広いソリューションを提案する。その価値を生み出す原動力は、紛れもなく一人ひとりの社員です。だからこそ、私たちはすべての社員に『この会社で長く働きたい』と思ってもらうための挑戦を続けています」
そして、今、岡三証券の「人大事」は、さらなる進化を遂げようとしている。社員との長期的な関係を構築することを目的に、人事制度の抜本的な改革に取り組んでいるのだという。
人生は、自らの意志で「選ぶ」
医療において、検診が重要な意味を持つのと同じように、あらゆる組織改革は、「可視化すること」から始まる。岡三証券は、株式会社ビズリーチとの連携によりタレントマネジメント機能を構築。社員のキャリアや社内のポジションの見える化に着手し、社員が自律的なキャリア形成を図れる仕組みを導入した。また、主として異動希望の把握を目的としていた従来の自己申告制度を刷新し、社員が働きたい地域や働き方に関するキャリア意向を表明できるキャリアプランシートの運用を新たに開始した。
生まれ育った地元で働きたい。両親の介護のために、一時的に勤務地を変更したい。多様な選択肢の中から、それぞれが望む道を「選ぶ」ことができる。それは、自らの人生を充実させる上で、何よりの魅力だと言えるだろう。
「これまで、活躍の場やポジションは、会社から与えられることが一般的でした。しかし、私たちが思い描く新たな人事制度では、一人ひとりの社員が、当社における働き方やポジションを自らの意志で選んでいける、いわゆる社内転職のような仕組みの構築を理想としています。社員一人ひとりの人生を社員自身が描くことは当然であり、その人生におけるキャリアについても会社主導に拠るばかりでなく、自ら考え選択することを大切にしてもらいたいと考えています。挑戦する社員には機会と環境を提供し続ける組織づくりを実現したい。人事権を社員へ渡しながらキャリアのオーナーシップを社員が持ち、自己実現が図れる会社にしたい。そんな想いを抱いて、改革に取り組んでいます」(阿部氏)
「独自性」を進化させ、すべての社員が夢を持てる企業に
一人ひとりの人材が、多様な選択肢から「機会」を手にする。そのための基盤が整備された今、この変革の成否を左右するのは、この制度をいかに効果的に運用していけるかにあると言っていい。その上で、大きな追い風となるのが、岡三証券の「独自性」だ。
「岡三証券の人材はいい意味で型にはまった社員がおらず、それだけ多様な個性が輝いています。私たちが手掛ける改革は、当社の『独自性』をさらに進化させていくためのものであり、社員の夢や意欲を応援していくためのものです。社員の自律的なキャリア形成が活性化されれば、さらなる個性の輝きにつながっていくはずですし、社員も求められる喜びをこれまで以上に感じられると思います。社内転職の仕組みを通じて各部門が人材を奪い合うような魅力的な会社を実現していきたいものですね」(阿部氏)
岡三証券の人事制度改革は、個人の意欲ややりがいに頼るだけのものではない。「役割・責任・成果に応じた報酬体系」や市場価値の高いパフォーマーには相応の報酬が与えられる「夢のある報酬水準」の実現も大きな改革の目玉だ。従来の20%増となる「初任給30万円」を実現したほか、社員全体の報酬を引き上げるという意思決定を下している。
さらには社員の帰属意識および経営参画意識の向上を図るために、入社2年目以上の営業社員を対象に、成果に応じて年間で最大100万円相当の自社株を付与する制度を導入。開始初年度となる2025年度では200名程度の社員に株式が付与された。岡三証券らしい独自性のある報酬制度を整えたと言える。
「岡三証券の新たな評価・報酬体系には『Pay for Job,Pay for Performance』の考え方が徹底されています。年功序列の考えを一掃し、発揮した価値や果たす責任によって評価される。この改革によって、活躍のスタイルはより多様なものになっていくでしょう。近い将来、20代で支店長を任される人材も出てくるかもしれませんね」(阿部氏)
企業が個人を一方的に選ぶ時代は、とうに終わっている。エンゲージメントという言葉が示すように、今は個人と企業が互いに選び合い、その未来にワクワクし続けられる関係を築いていかなければならない。人材は企業価値そのもの。「人大事」を貫く岡三証券の未来は、きっと輝かしいものになるはずだ。
「岡三証券の存在意義は『お客さまへの人生貢献』ですが、それは社員に対しても同じことだと思っています。目指すのは、『すべての社員が夢を持てる企業』になることです。私たちの独自性である『人大事』の精神を貫き、さらに進化させることで、選ばれる理由をつくっていきたいと考えています」(阿部氏)
記者の目 WEB限定
人材を大事にする。その考え方は、日本企業共通のものだといわれているが、多くの企業は人材をコストとして捉えていた一面がある。企業の財務状況を表す財務諸表において、「人件費」としてしか表されていなかったのがその証拠だ。しかし、現代においては、企業の価値は、人材そのものであることが常識となっている。だからこそ、各企業では、人材を伸び縮みする「資本」として捉え、その能力やスキルを最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上を目指す人的資本経営に取り組んでいるのだ。
人的資本経営において、岡三証券が手がける抜本的な人事制度改革は、各企業が参考にするモデルケースとなり得るチャレンジだ。金融のプロフェッショナルとして、お客さまの人生に貢献する。同社が掲げるパーパスや経営戦略と見事にリンクしたデザインとなっているからだ。人材こそが、理念を体現する唯一無二の財産であり、次の100年を切り開く原動力であることをはっきりと理解しているのだろう。
「仕事だから仕方ない」「会社ってそういうものだ」。先人たちは、ある種の諦めを抱いて、ビジネスに向き合ってきたように思う。しかし、そんな常識は今や過去のものだ。一人ひとりが持つ個性や、夢、情熱、好奇心……。これまでのビジネスで後回しにされていたものが、新たな価値創造の原点となっているのだから。
夢や希望に向かって、自分らしく、目を輝かせて仕事に、人生に向き合っていく。「人大事」を貫く岡三証券なら、それができると確信させられた。
岡三証券グループ(岡三証券株式会社)
事業内容 | 岡三証券グループは、当社、国内9社、海外1社のグループ会社により構成され、 グループ中核企業の岡三証券をはじめとする各社において、総合的な資産運用サービスを提供 |
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本社 | 東京都中央区日本橋室町二丁目2番1号 |
資本金 | 185億8,900万円 |
営業利益 | 819億3,600万円 |
従業員数 | 3,343名(2025年3月) |