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インキュベーターとしての金融
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経営関与を通じた新産業創造

提供:日本政策投資銀行

日本の産業や社会の様相は、AIをはじめとする技術革新の発展により大きく変わりつつある。こうした革新的技術を社会実装して事業化につなげるためには、一企業や既存業界の枠組みを超えたオープンな協働や官民連携を通じて新しい価値観の共有・ルール形成を図っていく視点が重要である。こうした経済社会の構造変化における金融の果たすべき役割とは。
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官民一体プロジェクトのまとめ役として新会社設立をリード

2018年2月20日、燃料電池自動車(FCV)向けの「水素ステーション(水素ST)」の本格整備を目的とした新会社(JHyM)が設立された。有望な次世代エネルギーのひとつとされる水素燃料を広く用いる社会の創造を目指し、自動車会社、インフラ事業者、金融投資家などの参画によって誕生した新会社は、水素STの設立と運営の支援を強力に推し進めていく計画だ。
日本政策投資銀行(DBJ)は新会社の設立に資金の出し手として参加すると同時に、その後の運営フェーズにおいては、各参画企業の足並みをそろえるためのマネジメントに従事し、水素社会の実現に向けた体制の構築を牽引してきた。
「会社設立の約2年前に経済産業省が水素STを2020年度までに160カ所、2025年度までに320カ所に増やすという目標(水素・燃料電池戦略ロードマップ:2016年3月22日付改訂)を示し、それを受けてこの取り組みはスタートしました。FCVの普及・発展は一企業の努力だけでは実現しません。FCVの開発・生産を進めるとともに、水素の供給などに必要な周辺インフラを併せて整備しなければなりません。そのために、主力となる各分野のトップ企業が結集し、さらには官民一体となった体制を築く必要がありました」と、企業金融第2部の高橋通典はふり返る。
DBJは、その「中立性」と、企業や産業の成長をロングスパンで支援する「長期性」に基づき、金融ソリューションやさまざまな助言の提供も行い、「新産業創造の結節点」として機能することを、重要な使命と位置づけている。
「DBJで働くことの面白さは、金融業務だけでなく、国や産業の将来を見据えた取り組みに関与する機会が多いところにあります。JHyMへの取り組みもそのひとつです。私たちは30年後に『あの会社が起点となって社会が変わった』と言ってもらえるように、日々努力しています」 

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変化する経済社会、そのプラットフォーム構築を担うDBJ

「持続可能な社会の実現」への貢献をビジョンの中に掲げるDBJは、「インフラ再構築・強化」「産業の創造・転換と成長」「地域の自立・活性化」を戦略上の重点領域と定めている。水素社会の実現に向けたJHyMの取り組みは、世界レベルでの低炭素集約型社会の実現に貢献するだけでなく、国内エネルギー産業の構造改革を推進するとともに、地域に根差した中小事業者を巻き込むことにより地方における新産業創造の起点となる可能性も秘めている。
また、自動車産業は日本の製造業出荷額の約2割、就業人口の約1割を占める日本の主要産業である。日本の自動車産業が今後も日本経済を牽引するためには、電気自動車(EV)やFCVなどの車種に加え、CASE(注)に代表されるような、時代の変化に適応して技術や経験を増すことが欠かせない。FCVは日本の自動車メーカーが研究を重ねてきた分野で、その技術力は世界のトップ水準にあり、新しい成長の原動力として期待されている。
「将来の日本経済を左右しかねない長期的な取り組みにおいて、私たちDBJの役割は増しており、今後もその難易度は高度化していくと言えるでしょう。JHyMでは設立後にとどまらず、運営フェーズにおいても、それ以上のまとめ役を務めることを目指しています」
本来の目的を見据えながら各社の利害を調整し、「ベストなマネジメント(組織経営)を目指しています」と高橋は語る。

(注)2016年にドイツのDaimler AGの中長期戦略で発表されたコンセプト:「Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)」を示し、今後の自動車産業における潮流を指す概念

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将来の理想社会につながる仕事の責任とやり甲斐

新会社JHyMの運営は、2つの事業戦略によって進められている。ひとつは「水素STの増設・拡大」で、4大都市圏のみならず、日本において効率的に水素STを建設していく戦略だ。JHyMの運営に携わる企業金融第2部の篠崎晋一郎(取材当時)は、「水素STについては、どこにSTを造ればFCV購入の促進につながるのか、ユーザー利便性の観点から、中長期的な視野に基づき最適配置を考えることが重要です。一方で、事業者の有無や自治体の熱意にも差があり、調整は容易とは言えません」と説明する。
もうひとつの戦略は、「水素STの運営の効率化」だ。水素ST運営の規制のあり方について海外の先進事例を参考にする一方、インフラ事業のノウハウや経験を持つ事業者と共同で運営コスト削減に取り組んでいる。水素STの整備・運営に対しては、国や自治体の補助金も拠出されるものの、FCVの国内販売数が累計5,000台に届かない現状では、長期的な計画なしに運営は難しい。
「インフラ整備とFCVの普及は、ある意味でニワトリとタマゴの関係にあります。少しずつ同時に拡大する好循環を常に意識してマネジメントに努めることが重要です。とはいえ、改めて、JHyMの設立理念に立ち返りつつ、各参画企業が現実に直面している各種課題に向き合いながら、公平性に重きを置き、客観的な数値をベースにした議論を心がけ、マネジメントに関与することにしています」
FCVの普及は水素社会実現に向けての第一歩であり、低炭素エネルギーですべてが動く地球にやさしい社会へのステップのひとつでもある。「そうした動きの中心にいることを実感するとともに、来年の東京オリンピック・パラリンピック開催のみならず、その先の未来を見据え、大きな責任とやりがいを感じています」と、篠崎は日々の業務を物語る。

※このインタビューは2019年8月に行われたものです。

日本政策投資銀行

[ 本店所在地]東京都千代田区大手町1丁目9番6号 大手町フィナンシャルシティ サウスタワー
[ 資 本 金 ]1兆4億24百万円 (全額政府出資)
[ 従 業 員 数 ]1,195名 (2020年3月末)

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