第8章
金融業態別に見る現状と課題
⑤リース・ノンバンク - クレジットカード・消費者金融
企業の成長を後押ししたリース・ビジネス
従来の伝統的な金融に代わる事業資金の調達手段としてリース・ビジネスが登場したのは、それほど昔ではありません。第2次大戦後の1952年にアメリカで世界初のリース会社が誕生し、長期資金を融通する代わりに企業が必要とする機械や設備を購入して賃貸するビジネスを開始したことが、リース産業の始まりとされています。その会社がセールス・スローガンとしていた「企業の利潤は機械や設備の所有によって生み出されるものではなく、それを使用することによってもたらされる」という発想は、そのままリース・ビジネスの発展につながったと言えます。そして、日本では11年後の1963年に最初のリース会社が誕生しました。東京オリンピックが開催された前年のことです。高度経済成長が続く中、従来の金融の仕組みでは企業の資金需要に追いつかない状況を背景に、国内のリース・ビジネスは拡大していきました。
リースは機械や設備を「長期間・継続的」に使用する場合に多く用いられ、機材などをユーザーが自由に選ぶことができ、導入の際に大きな資金を必要としない(一定のリース料を毎月支払う)ところなどに特徴があります。
リースをユーザー側から見ると「機材などを借りて使用料を支払う取引」となりますが、そうした単純な貸し借りだけでなく、機材などの所有や廃棄にともなう手間が省けるほか、機材が陳腐化してしまうリスクの解消や、機材の整備・保守の一切をリース会社に任せられるといったメリットもあります。
理解のツボ① リースの仕組み
リースの仕組みには、金融機能により近い「ファイナンス・リース」と、それ以外の「オペレーティング・リース」があります。前者は機材などの購入費用の全額が回収されるまで契約が続き、途中解約ができません。後者は中古市場が整備されている物件の場合、契約終了時の残存価値を購入価格から差し引くため、リース料が割引になります。リースの役割と仕組みについては、「就活前に学ぶ金融講座・第2章」の『 リースはなぜ金融ビジネスなのか? 』をご覧ください。
国内外のリース市場
職場にあるパソコンやコピー機などの大半がリースによって導入されたものであることは、皆さんも知っていると思います。そのほか工場や店舗の設備、社用車や産業用車両、土木作業機械、医療機器、発電設備、船舶、航空機に至るまで広く利用されています。
国内の民間設備投資におけるリースの割合は7.24%(2013年)で、その市場規模は5兆円を上まわります。市場はすでに成熟しているという見方がある一方で、欧米の各国ではリースの比率がアメリカとイギリスで20%以上、ドイツやフランスは10%以上となっていますので、今後まだまだ開拓する余地があるとも言えます。
加えて、グローバルベースでは太陽光など環境エネルギーの分野において新たな需要が見込まれるほか、航空機やジェットエンジンのリース市場拡大に注目が集まっています。また、経済成長が続く南アジアなどの地域では、建設機械や自動車の需要拡大が予想され、リースの導入が大きな役割を果たすと予想されています。
中でも、航空機のリースは今後20年で世界の空を飛ぶ旅客機の数が約2倍(3万7,000機)になり、2020年にはその半分がリース機になると予想されることから、各国の大手リース会社は拡大する需要を取り込む体制づくりを急いでいます。
理解のツボ② セール&リースバック
リースの活用はさまざまな形で広がっています。企業が所有している土地・建物や設備などをリース会社に売却し、それをリース物件として賃貸利用する「セール&リースバック 」もそのひとつです。リースバックを行った企業は新たな投資に向けた資金を得るだけでなく、所有にともなう管理事務がなくなり、使用コストの長期的な標準化を図ることができます。
「提携」で魅力を広げてきたカード
クレジットカードのビジネスも第2次大戦後にスタートしています。アメリカで誕生した世界初のクレジットカード会社の「カード」が、初めて使われたのは1950年2月の夜だったと伝えられています。その会社は1960年に日本に上陸し、それを機にクレジットカード・ビジネスの歴史が幕を開けました。
クレジットカード・ビジネスの基本は利用者が支払うべき代金の「立て替え」であり、立て替えられた費用は後日まとめて利用者の銀行口座から引き落とされます。クレジットカード会社の収益は、カードが利用されるたびに発生する加盟店手数料(代金の数%)と利用者が支払う年会費ですが、ビジネスの発展とともに分割払いやリボルビング払いの金利、キャッシングと呼ばれる小口融資の金利が加わるようになりました。それに併行して年会費無料のカードや年会費の高額なゴールド(プレミアム)カードなどが多数登場しています。
2013年3月末時点の国内のクレジットカード発行枚数は2億6,000万枚。利用額は40兆6,000億円(2012年)にのぼります。わが国では銀行系のカード会社と信販会社が業界をけん引し、そこにハウスカードと呼ばれる百貨店や小売業、航空会社、石油販売業などが発行するカードが加わって、大きな市場へと発展しました。
ハウスカードは利用範囲が自社およびグループに限られていますから、多くのカードは「VISA」「Master Card」「JCB」といった国際ブランドと提携して、利用範囲を国内・海外に広げています。一方、カード専業会社は流通業などさまざまな業界と提携して新しいサービスを創造し、「カードの魅力」を高める取り組みを続けています。
理解のツボ③ 信販会社
信販会社とは、顧客の要請に応じて、購入代金などの「分割払い」を請け負う金融会社のことです。信販会社は顧客に代わって代金を全額売り主に支払い、その後、顧客から代金と金利を分割して回収します。こうした事業構造はクレジットカード・ビジネスに共通することから、信販会社の大手はカードの分野に参入しました。当初、カードによる月払いは信販系のカード会社にのみ認められていましたが、現在ではほとんどのカードで一括払い、分割払い、リボルビング払い、およびキャッシングを利用することができます。
多機能化が進むカード
わが国のクレジットカード・ビジネスは成人ひとりが2.6枚のカードを持つまでに普及したことから、カード各社は「使ってもらえるカード」になるための価値創造に力を入れています。
そうした取り組みの中心となるのは、他業界とのさまざまな形の提携や、利用に応じて付与されるポイントを利用したサービスの向上です。カードを利用すると代金が割引になり、さらにポイントが付与される優遇もめずらしくはありません。また、インターネット通販などでの利便性や優遇を高めたカードも登場しています。
そのほか、今後の課題として「スマホ決済」との連携強化や、スマホなど情報端末を活用した利用状況の通知、および顧客一人ひとりの嗜好に合った“お得情報”の配信などの充実があげられます。
加えて、外国で発行されたさまざまなクレジットカードが使える加盟店の拡大も、外国人観光客の増加とともに、業界の重要な課題となっています。大手のカード会社では顧客のパスポート情報を端末で読み取り、スピーディーに免税申請書が作成できるシステムの導入などを、オリンピックの開催を視野に入れて加盟店に働きかけています。
理解のツボ④ 安全対策
クレジットカードの利用が増えれば増えるほど、安全対策の強化が求められます。業界では偽造が難しいとされるICチップを搭載したカードの普及率を2020年までに100%にする方針を掲げています。同時に、カード番号保護などによりネットでのなりすましや不正利用を防止する取り組みに力を入れています。
新たな成長モデルの構築を急ぐ消費者金融
「銀行から借りるよりも手続きが簡単。担保や保証人が不要でスピーディーに融資が可能」をキャッチフレーズに成長した消費者金融ビジネスは、手軽で利用しやすいことから急成長を遂げ、ATMの導入など機械化を進めた“貸金業”の近代的ビジネスモデルとして海外で評価されました。しかし、その一方で、借り過ぎによる多重債務者の増加といった社会問題も引き起こしました。
消費者金融の多くは無担保融資に加え、比較的信用リスクの高い個人も含めた顧客を対象としていることから、貸出金利は銀行の個人向けローンより高めに設定されます。銀行や信用金庫など“預金取扱金融機関”以外の会社が行う“貸金”の金利を定めた法律は2つあり、片方の出資法の上限金利が2010年まで29.2%(現在は20%)であったことから、多くの消費者金融会社はもうひとつの利息制限法の上限(15~20%)を上まわる金利で貸出を行っていました。銀行預金の利率が1%を下回る時代に二十数%の金利は高いと言えますが、少額・短期間ならばそれほどの負担にならず、急な出費などへの対応に役立つという考え方もありました。
しかし、後に最高裁が「利息制限法を超える場合に必要な説明と承諾が適正に行われていなかった」という判断を示したことから、過払い利息の返還請求が相次ぎ、業界は苦境に立たされることになりました。
その後、業界最大手の会社の破綻や、銀行などによる支援や再編を経て、現在は「かつての利便性はそのままに、金利を低めに設定」した新しいビジネスモデルにより、順調に業績を回復しています。
理解のツボ⑤ 信用保証事業
大手消費者金融会社は「消費者金融事業」と「信用保証事業」を両輪としています。信用保証事業とは、銀行などが貸し出す個人向けローンなどの債務を保証する仕事です。