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プロの視点

夏野 剛慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特別招聘教授

ニッポンのITビジネス牽引者に聞く
フィンテック(FinTech)のリアルとゆくえ

<第3回>2016.07.27
市場規模は今や年間4兆円。世界の一歩先をゆく
日本のフィンテック「電子マネー」

前回、日本国内におけるフィンテック(金融業界のIT化)はすでに早くから始まっており、これまでにさまざまなイノベーションが起こっていたこと。さらに、世界に先駆けている面もあるということをお伝えしました。今回はさらに、世界的にも一歩先をゆく国内のフィンテックの代表「電子マネー」をピックアップします。

日本における「電子マネー」ビジネスの歩み

現金の代わりにあらかじめチャージしたカード、もしくはクレジットカードでの自動引き落としを設定したカードやスマホなどで決済する電子マネー。今や私たちの暮らしにすっかり溶け込み、市場規模を見ても月間4,000億円、年間にして約4兆円という巨大マーケットになっているのは、世界でみても日本だけの特徴です。

日本で最初に登場した電子マネーは、2001年発行の「Edy(現:楽天Edy)」ですが、同じ年に「Suica」が登場したことで一気に利便性が高まり、その後も全国各地域で使える電子マネーがたくさん発行されていきました。

さらに「nanaco」「WAON」などが続々出現し、現在はまさに電子マネーの乱立状態です。テクノロジーでファイナンシャルイノベーションを起こすという意味では、まさにこの電子マネーもまた世界に先駆けた初期のフィンテックと言えるでしょう。

多彩な「電子マネー」。ビジネスモデルもさまざまな乱立時代

ひと言で電子マネーと言っても実に多彩ですが、大きく3つのカテゴリーに分けられ、それぞれに異なったビジネスモデルが存在します。

まず「Edy」は、もともとソニーが技術を証明する目的で出した、いわゆる独立専業系。さまざまな人に使ってもらえるために利便性を考えたこちらのビジネスモデルは実にシンプルで、手数料収入で利益を上げるというもの。最も純粋な電子マネーと言えるでしょう。

次にJR東日本の「Suica」というのは、鉄道のチケットの代替として誕生した鉄道事業者系の電子マネーです。「Suica」以降も関東エリアの私鉄の「PASMO」、JR西日本の「ICOCA」などがサービスを開始し、システムが同じなので今では全国の鉄道会社の電子マネーが相互に使えるようになっています。これは、チケットを電子化することで駅員などの人件費を節約するコスト削減システムに、プラスアルファ機能として電子マネーを搭載したもの。立ち上がりが非常に早く、駅中や駅近の店舗や自販機などでの消費活動を促すことで収益を上げています。

また、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」、イオンが提供する「WAON」などは、流通系の電子マネーです。こちらのビジネスモデルのメリットは、顧客の囲み込みにあります。「nanaco」の場合だとセブン-イレブンやイトーヨーカドーなどのセブン&アイグループ内でしか使えないものですが、手数料がかからない点、ポイントが付くといったさまざまな特典で消費者にメリットを感じてもらえるものです。

それぞれの事業の根幹は違うものの、消費者の暮らしに密接したサービスから生まれた電子マネーだからこそ、手軽さや利便性の高さが人気となり、急速に広まったと言えるでしょう。

日本で電子マネーが浸透してきた理由。市場規模は今や年間4兆円

このように豊富な種類の電子マネーが日本で普及した理由は、まず、海外に比べクレジットカードの加入率が低かったところにあります。加えて、クレジットカード業界が与信に関して保守的だったこと、さらに、1999年に登場したNTTドコモの「iモード」サービス開始と同時に、キャリア決済の源流である携帯課金サービスをスタートさせたことも大きく関係しています。

現在スマホ決済と呼ばれている決済手段が、電子マネーの浸透と同時に世の中に浸透していった点も、日本独自の非常に面白い現象だと考えられます。2004年7月に私自身が立ち上げたNTTドコモの「おサイフケータイ」の利用者のメリットは「Suica」や「Edy」などの複数の電子マネーをダウンロードし、携帯1台に集約できることでした。このように、携帯電話の通話料と一緒に決済できることで電子マネーの浸透が飛躍的に加速したことも特徴的です。いわゆる初期のフィンテックはすべて日本にあったと言っても過言ではないでしょう。

電子マネーの今後。イノベーションを発想するヒント

電子マネーとクレジットカードの違いは何かというと、最大のポイントは、電子マネーの場合、誰が何を買ったかわからない匿名性にあると言えます。セキュリティ面においても、これまでサービスの根幹を揺るがすような大きな事件が起きていません。電子マネーは、世界中でもっと使われてもいいのではないでしょうか。

ただ、電子マネーとつけ払いのクレジットカード、現金と預金、これらをどう組み合わせていくと、人々の暮らしがどのように良くなるかは、まだ試されていない領域だと思いますし、これからのフィンテックの面白いテーマになると考えます。また、送金サービスを例に挙げても、銀行で何百円も払って送金するということは、アナログ時代の遺物であり、ネットを利用した簡易な送金手段が出てくるのにつれて、今後縮小していくと考えています。

電子マネーの普及を進めた「おサイフケータイ」などのフィンテックの発想を私自身が得たのは、実は、小銭を持つのが日ごろわずらわしく、小銭のやりとりがなくなったら世の中の効率がもっと良くなると思っていたからでした。普段自分が「不便だ」と思うことの中にたくさんのヒントが隠れていて、それを改善しよう、より良くしようという強い気持ちがイノベーションを起こす最大のきっかけになるのではないでしょうか。

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Profile

夏野 剛
Takeshi Natsuno

1988年早稲田大学政治経済学部卒業後、東京ガスに入社。1995年ペンシルベニア大学経営大学院卒。ベンチャー企業を経て、NTTドコモへ。「iモード」「おサイフケータイ」などのサービスを立ち上げ、在職中にビジネスウィーク誌にて世界のeビジネスリーダー25人の一人に選出。2009年から2013年まではHTMLの標準化団体「World Wide Web Consortium」の顧問会議委員も務める。現在は慶應義塾大学の特別招聘教授のほか、グリーなどの取締役を兼任。著書「ケータイの未来」、「脱ガラパゴスの思考法」、「『当たり前』の戦略思考」など多数。
twitter:@tnatsu
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