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企業の成長を左右する人材マネジメント戦略

「人材こそが一番の財産」「人材がすべて」という言葉は、昔からよく聞かれます。決して耳新しい言い方ではなく、ごく当たり前の表現のように感じられます。一方で最近よく言われるのが「人的資本経営」という言葉。ここにはどんな違いがあるのでしょうか。

人材は、代えのきかない重要な資本

「人材」と「人的資本」。よく似た言葉ですが、実は本質的な意味は大きく違います。

「人材」の材は“材料”という意味をもつことから、時には人が代替可能な存在・資源としてとらえられてしまう言葉でもあります。これに対して「人的資本」とは、人を文字通り、事業を行う上でのかけがえのない“資本”ととらえる考え方です。

ときどき「人財」という言葉を見かけますが、人材を“財産”ととらえている点で「人的資源」に近いニュアンスのワードと言えるでしょう。

経営の神様と呼ばれる、かの松下幸之助が説いた「企業は人なり」という言葉は、多くの日本企業に共通の価値観となっています。働く側、雇用する側、どちらにも受け入れられる考え方でしょう。

言うまでもなく「資本」の価値は、状況に応じて変わっていきます。人材が成長すればその価値は高まり、反対に放置したままでは価値は下がります。資本である以上、企業はその価値を高めていかなくてはなりません。

無形資産としての人材が大きな価値を生む時代

昭和の時代から「企業は人なり」という価値観がしっかりと定着している日本で、令和の今、なぜ改めて「人的資本経営」が重要視されるようになったのでしょうか。

最も大きな理由が、企業活動において無形資産の重要性が高まってきたことです。

企業の資産といえば、金融資産や土地・建物、生産設備といった有形資産、つまり目に見える資産のことを指しました。

しかし現在では特許などの知的財産、ブランド、ソフトウェアなどの無形資産、つまり目に見えない資産が重要になってきています。GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)に代表されるビッグテックと呼ばれる企業を見れば、無形資産がいかに大きな価値を生み出しているかがおわかりでしょう。“人”は、巨大な価値を生み出す重要な無形財産なのです。

企業の価値を判断するとき、これまでは金融資産や不動産などの有形財産を積み上げた数字、つまり「財務情報」が重要視されてきました。しかし現在では、目に見えない無形財産の数字、すなわち「非財務情報」が重要視されています。

優秀な社員を確保するためにどんな努力を行っているか、育成のためにどれだけ投資しているか、労働生産性を上げるためにどのような施策を行っているか──。今や企業には“人”の価値を高めるために、どのような取り組みを行っているかが問われているのです。

これが「人的資本経営」が重要視される背景にあります。

終身雇用、年功序列といった日本型の雇用慣行は、日本の経済発展を支える強みとされてきました。しかし時代が大きく変わる中で、むしろそこから生じる閉塞感が、企業の成長を阻害する要因になりつつあります。

多くの企業が本腰を入れて「人的資本経営」に取り組んでいるのは、それが未来に向けた重要な成長戦略でもあるからです。

人材マネジメントが企業の競争力の源泉に

無形資産である“人”が重要な資本であることはどの企業も同じですが、ITや金融といった業界は特に“人”の生み出す価値が大きいと言えます。

例えば野村證券ではトップが個人投資家向け説明会で「人材が命。人がすべての会社です」と言い切るほど、人的資本を重要視しています。それは「人的資本がもたらす知的資本の差別化を図り、付加価値をさらに強化していく」という考え方にも現れています。ここで言う「知的資本」とは、組織力、ノウハウ、顧客とのネットワーク、ブランド等、競争力の源泉となるあらゆる無形資産を指しています。

「人的資本経営」が重要視される一因として、日本企業の活動がますますグローバル化していることが挙げられます。野村グループでも従業員の所有するパスポートは90ヵ国以上にのぼるとか。当然のことながらDEI(多様な人材の活躍)は必然の課題となり、国籍や性別といった属性にとらわれない多様な労働環境を実現しています。

多様性はキャリア採用が既に5割を超える点にも反映。Pay for performanceを徹底する、公平な処遇も実現しています。

もちろん同社では働きやすさの実現にも力を入れ、例えば男性の育休取得率は直近1年で3倍になりました。「女性が働きやすい環境を実現するために、男性にも積極的に休んでもらう」方針を大切にしています。

こうした取り組みには業界を問わずに多くの企業が力を入れており、「人的資本経営」のうねりはさらに広がっていくことでしょう。グループ全体で2万7000人を超える従業員が所属する野村證券グループの取り組みは、その広がりにさらなる弾みをもたらすはずです。

まとめ

人材の採用、育成は、企業にとって永遠のテーマです。人材の流動化が加速する中で、従業員と組織の一体化を図るエンゲージメントの向上も大きな課題となりました。

これらの取り組みに力を入れる企業が増えることは、これから社会に出ていく皆さんにとって、素晴らしいニュースです。ぜひ企業研究の際のポイントとして、しっかりと見ていきましょう。

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