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注目記事2021.09.01

サステナブルな社会実現のために金融業界ができること

サステナビリティ(Sustainability)という言葉は、もうすっかりおなじみのものとなりました。「持続可能性」という意味をもつこの言葉は、今や企業の経営戦略に直結するほど重要なキーワードとなっています。そしてその普及において金融業界は大きな役割を果たしています。

Z世代の採用戦略において重要な要素に

サステナビリティというキーワードが大きく注目されるようになった一つのきっかけが、2015年の国連サミットでした。ここで採択されたのが「SDGs」。「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の略称で、世界のリーダーによって決められた国際社会共通の目標です。

具体的には2030年までの長期的な開発の指針として17の目標が掲げられ、国際社会はその目標達成のために努力を続けると約束しました。ここで「Sustainable」という言葉が使われたことが、サステナビリティという考え方が一気に普及する契機となったのです。

投資家などから企業に寄せられる問い合わせにもサステナビリティに関連する内容が一気に増え、IR担当者などもその対応に力を入れるようになりました。

いわゆるZ世代が環境問題や人権問題に敏感であることから、企業の採用戦略においてもサステナビリティは重要な要素となっています。

もはや脱炭素への取り組みや貧困・飢餓・格差の解消、多様性の尊重といったことを抜きにして企業経営は語れません。企業にとって社会的責任が従来以上に強く問われる時代となったのです。

企業間の取引にも影響

もちろんこうした考え方は以前からありました。

欧米社会には古くから、身分の高いものにはそれに応じて果たすべき社会的責任と義務があるという「ノーブレスオブリージュ(noblesse oblige)」の考え方がありました。

日本では1980年代後半から90年代にかけてのバブル経済時代に、メセナがトレンドに。メセナとは芸術支援活動のことで、多くの企業が文化的な事業へのサポートに取り組みました。バブル終焉と共にそうした活動も消えていきましたが、代わって浮上してきたのが「CSR」という考え方です。

CSRとはCorporate Social Responsibilityの略で「企業の社会的責任」という意味をもっています。企業は自社の利益のみを追求するのではなく、消費者の健康や環境保護といった面への配慮にも取り組まなくてはならないという考え方で、インターネットの普及によって不祥事が一気に拡散して致命的な打撃になりかねないという時代背景も企業のCSRへの取り組みを強く促しました。

著名なマーケティング学者のフィリップ・コトラーも、事業の成功とCSRは不可分であるとしています。こういった大きな流れを経たのちに国連で「SDGs」が掲げられ、あらゆる企業活動には環境問題や人権問題等への配慮が必須となったのです。かつてのメセナやCSRは、財務的にも余裕のある大手企業が取り組むものというイメージがありました。

しかし現代社会では「あの企業は環境問題や人権問題に対して真剣ではない」というイメージをもたれたらBtoCビジネスで大きなダメージを受けるのはもちろんのこと、BtoBビジネスにおいても「サステナブルな取り組みをしていない企業との取引はしない」という傾向が強くなっています。サステナビリティは一部の大企業だけのテーマではなく、あらゆる企業にとって経営戦略上の重要な課題となってきたのです。

金融機関の果たす貢献

サステナビリティが重要な経営課題という認識はあるものの、具体的な取り組みとなると専門的な知見や投資が必要となります。そうした余力のある企業は多くありません。そこで必要となるのがサステナビリティへの取り組みを支援する外部パートナーです。

日頃から取引先の経営事情に精通している金融機関がその役目を求められるのも、必然でしょう。

実際にメガバンクをはじめ、地方銀行も含めて、企業のサステナブルな取り組みを支援する銀行は増えています。その具体的な内容は、サステナビリティを推進する専門チームを設置したり、脱炭素に取り組む企業には積極的に投融資を行ったり、地域への啓蒙活動に取り組んだりといったものが目立ちます。

環境保護や社会課題の解決に資する事業に特定したローンを開発するなど、銀行自身の新たなビジネスチャンスに結びつける動きも広がってきました。もちろん銀行自身のサステナビリティへの取り組みにも積極的で、多くの銀行がSDGs達成へ向けた具体的な取り組みを掲げています。

銀行の影響力の大きさを思えば、こうした取り組みがサステナブルな社会の実現に大きく寄与することになるのは間違いないでしょう。

まとめ

サステナブルであることは、21世紀の今、企業にとって当たり前のこととなりました。企業活動を下支えする金融機関にとっても同様です。ビジネスに取り組むことがそのまま持続可能な社会の実現につながっていく、そんなやりがいのある時代となりました。