薬学生のための職種を知ろう|MR職
業界・職種・企業研究公開日:2023.04.03
ここでは、医薬業界のさまざまな職種・仕事の中から、代表的な4つの職種を説明します。新薬の開発を担う「R&D」、医薬情報を医療従事者に提供する「MR」、調剤や服薬指導をする「薬剤師」、新薬の治験やモニタリングをする「臨床」と、それぞれの職種の仕事内容、やりがいについて、学んでいきましょう。
MR(Medical Representative:医薬情報担当者)は、医療用医薬品(※)の適正使用のため医療従事者(医師・歯科医師・薬剤師・看護師など)を訪問することにより、医薬品の品質、有効性、安全性などに関する情報の提供、収集、伝達をする仕事です。
医薬品は、使用方法を間違えると服用者に重大な障害をもたらしかねない危険性をはらんでいます。そのため、医師や歯科医師・薬剤師は、どんな病気に、どの薬を、どのくらいの量使うと最も効果的か、副作用や禁忌と呼ばれる適用できない症例は何か、といった情報を正しく把握しておく必要があります。そこで自社の医薬品の有効性(効き目や効果的な使い方)や安全性(副作用など)に関する情報を医療従事者に正確に伝えるとともに、医療現場からその医薬品を患者に使用した臨床情報を聞いて自社にフィードバック(伝達)する役目があります。MRには医薬品の専門知識が必要と言えます。
近年では、医療知識の向上と優秀なMRを育てることを目的とする「MR認定試験制度」が(財)医薬情報担当者教育センター(現・公益財団法人MR認定センター)の主催で1997年にスタートしました。この認定試験は、看護師や薬剤師のように国家試験ではないので、試験に合格しなくてもMRとして業務を行うことはできます。しかし、ほぼすべての製薬会社やCSO(Contract Sales Organization:医薬品販売業務受託機関)がMRに対してMR認定証取得を義務づけていると言ってよく、必須の資格と考えてもいいでしょう。第28回MR試験の平均合格率は78.2%程度で、決して狭き門ではありません。認定試験は毎年12月に行われ、通常は4月に入社して、企業で半年以上の研修を受けてから受験することになります。製薬会社などにMR職として入社できれば、学歴や年齢に関係なく、誰でも受験が可能です。なお、MR資格の有効期限は5年で、5年ごとに更新の手続きをすることが義務づけられています。
MRには、製薬会社に所属して働く形態のほかに、コントラクトMRといってCSO(Contract Sales Organization:医薬品販売業務受託機関)と呼ばれる会社に所属し、そこから製薬会社に派遣されて働くケースがあります。いずれの場合も、勤務は個人の自己管理に任されていることが多く、朝は担当する病院を直接訪問し、その後、病院や診療所を回って直帰する場合がほとんど。会社には移動中や帰宅後に携帯電話やパソコンで連絡することが多いようです。また、人事評価は、実力主義をとっているところが多く、実力が収入に直結することもMRの魅力の1つとなっています。また、コントラクトMRは、参加するプロジェクトに応じて、複数の製薬会社で働くことができます。MRとして担当する医薬品の分野を変えたい、あるいは、働く環境を変えたいという方にとっては、CSOは魅力的な環境でしょう。
現在、製薬業界で注目されているのが「専門MR」という存在です。これは抗がん剤などの特定領域に特化して、より高度な専門知識・情報を身につけたMRのことです。医学・薬学が急速に高度化しているなかで、専門MRのニーズは今後ますます高まってくるものと見られています。
※「医療用医薬品」とは、病院や診断所で医師の処方せんによって使用される医薬品のこと。これに対し、薬局などで処方せんなしに購入できる医薬品のことを「一般用医薬品」と言います。